
《黒き流れ》シリーズ三部作。
冒険SF。
巨大な川は、世界を東西に分断していた。住民たちにとって、川は唯一の長距離輸送手段。しかし、船に乗れるのは女だけ。男たちは、生涯にただ一度しか川と関われない。二度目の接触は狂い死にだ。川の中央には“黒き流れ”が横たわっている。それが男たちを、また対岸への渡航をも拒んでいた。
ヤリーンは川の東岸で生まれた。
17歳になり川ギルドに入ると、船での生活を満喫する。
ヤリーンの双子の弟カプシは、知ることに憧れていた。男であるばかりに遠くの町まで歩き通し、観測者ギルドに入った。
ヤリーンはカプシの願いで、彼を対岸へと渡らせる手伝いをする。通常なら婚礼で使われる生涯ただ一度の旅を、カプシは、潜水服に身をつつみ“黒き流れ”の下を歩くことで横断に成功した。
しかし、カプシは西岸の住人たちに発見され、殺されてしまう。衝撃をうけるヤリーン。そんなヤリーンの元に、大晦日の聖なる儀式に志願しないかと誘いがかかるが……。
延々と続く独白。
ヤリーンが主体の物語なので“黒き流れ”のことが間接的にしか分からず、やや物足りない印象でした。設定はおもしろいんですけど。
《黒き流れ》シリーズ三部作。
冒険SF。
世界を東西に分断する川のただ中に横たわる“黒き流れ”。それが引いたために起こった西岸と東岸の戦争だったが、その終結に川ギルドの女・ヤリーンは深くかかわっていた。
ヤリーンは川ギルドに促され、自らの体験記『川の書』の執筆にとりかかる。気がかりなのは、西岸の宿敵・エドリック博士の死亡が確認されていないこと。
心配は現実となり、ヤリーンはエドリック博士に殺されてしまった。
死んだヤリーンの魂に“黒き流れ”が接触してくる。“黒き流れ”は、魂綱を通じて人間の使者をエーデンに送る計画をたてていたのだ。己以外の神存在について知るために。
こうして、エーデンで蘇ったヤリーン。超存在・ゴッドマインドのおそるべき計画を知り、なんとか阻止しようとするが……。
一気に世界が広がった一冊。
エーデンで星の童子としてふるまい、しかし正体が隠しきれないヤリーンが、ヤリーンらしい……。アイデアはおもしろいんですが、ちょっと、全体が捕らえにくかったです。急いで読みすぎたか。
《黒き流れ》シリーズ三部作。
冒険SF。
全能の超存在・ゴッドマインドに宇宙が焼きつくされるまであと2年。“黒き流れ”が横たわる川の東岸に再度生まれたヤリーンだけが、その計画を知っていた。しかし、正体を明かしたがために“黒き流れ”の神殿の巫女として担ぎだされてしまったヤリーンは身動きがとれない。
監視される中ヤリーンは、新たな体験記『星の書』の執筆にとりかかる。川ギルドに見せるものと、なんとかして世間に広めたい真実のものと。
ヤリーンは、親友たちと秘密の計画をたてるが……。
結末が謎でした。
最後の章は“特別”ですよ〜と知ってはいたのですが、戸惑いました。メタフィクションと呼ぶ構造になっているんだそうで。
何度か読めば、理解できるようになるんでしょうね、きっと。
《恐竜惑星》シリーズ第一作。
冒険SF。
知的惑星連合は、惑星アイリータに調査隊を派遣した。その指揮官となったのが、カイとヴェアリアンの二人。
地質学者でもあるカイは、鉱物資源があるべきところにないことに頭を悩ます。本来は豊かな資源を持つ惑星であるはずなのに。
異星生物学者でもあるヴェアリアンは、傷ついた草食獣を捕らえた。赤い血を流す獣にはおかしな点がある。そして、この獣を襲ったものはいったい?
母船と連絡がとれず、隊員の中には、探検評価隊ではなく植民させられたのではないかとの憶測が乱れとぶ。その最中、力に勝る高重力世界人たちが、弱肉強食の過酷な世界を目の当たりにして、先祖帰りの状態になってしまった。
対称的なものを組み合わせる手並みがあざやか。男と女。地上育ちと船育ち。地質学者と生物学者。
徐々に深まる疑惑と、惑星アイリータの謎。当書一冊では答えは出ず、続刊『アイリータの生存者』に持ち越されてます。続きが楽しみなおもしろさでした。
《恐竜惑星》シリーズ第二作。
冒険SF。
惑星アイリータで、調査隊一行は危機に陥った。高重力世界人たちの反乱が起こってしまったのだ。
共同指揮官の一人・カイは、セク族に救助を求める。非常にゆっくりと生きるセク族は当てにはできないが、友人トールならば動いてくれる望みがあった。
洞窟の中に隠れ、一行は冷凍睡眠に入る。次に目覚めるのは一週間後か、一ヶ月後か?
そして、セク族のトールによってカイが目覚めさせられたとき、実に43年の年月が流れていた。
惑星アイリータでは、高重力世界人の子孫たちが生き延びていた。共同指揮官の一人・ヴェアリアンは、知的惑星連合の巡洋艦ZD−43の大尉として、生存者たちと会合する。しかし、セク族トールの要請で、本物の巡洋艦ZD-43がやってきて……。
前作『惑星アイリータ調査隊』で提示された謎の解決編みたいな内容。
途中から登場する巡洋艦は、まるで“ドラえもん”のポケットのように、調査隊一行の要求する物をなんでもかんでも出してくれます。冒険ものは困難に立ち向かうからこそ、おもしろいと思うんですけどねぇ。
作家・田中啓文は「蹴りたい田中」で第130回茶川賞を受賞した。しかし、その直後に失踪してしまう。そして10年後。葛飾区の路上で、透明カプセルに収められた新作が発見された。
本書は、幼少時から10年ぶりの新作までおさめた遺稿集。単行本未収録作8篇と、ゆかりの人々の寄稿文、茶川賞受賞インタビューなどを収録。
だまされた人、いるんでしょうねぇ。
短編集ですが、一つ一つの短編がどうのこうのという本ではなく、全体で評価すべき作品だと思います。こういう本作りのできる作家は貴重です。
まじめな内容ではありませんので、念のため。
SF短編集。
「夜来たる」
「緑の斑点」
「ホステス」
「人間培養中」
「C−シュート」
以上、5作品を収録。
表題作の「夜来たる」は……
エイトンは天文学者。夜というものを知らずに繁栄していたこの国に、2000年に一度の夜がやってくることを予測し、人々に警告した。
セリモンは新聞記者。エイトンの警告に対し、新聞で大キャンペーンをはり嘲笑した。
そしてエイトンが予言した運命の日。セリモンはエイトンのいる天文台を尋ね、共にその瞬間を過ごす提案をする。つっぱねるエイトンだったが……。
表題作はその後、前と後ろをくっつけて長編にされました。先に『夜来たる[長編版]』を読んでいたので、ちょっと魅力減。設定を理解済みなだけに、読みやすくはあるのですが。余計な(書かれてない)ことまで考えてしまいました。
【追記】「緑の斑点」は……
人類の開拓団が降り立った惑星は、植物が繁殖し、草食動物のみが生息する、理想的な星。ひとつだけ異様だったのは、目を持つ生物が皆無なこと。かれらは目のかわりに、柔毛の斑点を持っていた。動物にとどまらず、植物までもが……。
開拓団の一員セイブルック氏は、雌の白ネズミがことごとく妊娠していることに気がつく。開拓団は雄を連れてきてはいないのに。やがてセイブルック氏は、恐ろしい事実に直面する。唯一の対抗策は、乗員もろとも宇宙船を爆破することだった。
ヴァイス博士は、セイブルック氏が最後に送信したレポートを読んだひとり。危険をおかし、問題の惑星を調査する。汚染対策は、厳重かつ徹底的に。
しかし、事故はおこった。船のバリアーが消えてしまったのだ。時間にしてわずか2分。なにごともなかったかに思われたが……。
2分の時間を得て“かれ”は、宇宙船に入り込んだ。かれらは、惑星全体でひとつの意識を共有する生命体。それがいまはひとりきり。仲間たちと精神的にも切り離され、孤独感に苛まされる。生命断片でいる人類たちに同情し、同化してあげようとするが……。
異質生命体の視点からはじまり、徐々に全体が見えてくるおもしろさ。とても短い話なのですが、あっけにとられるオチがお気に入りです。
アシモフの代表作のひとつに《銀河帝国興亡史》シリーズがありますが、第4巻『ファウンデーションの彼方へ』第5巻『ファウンデーションと地球』に同じ設定がでてきます。統一意識体というやつ。それらと正反対の結末なのが、当作品をより印象深いものにしているようです。
※この書込みは、かつて愛読書コーナーに掲載されていましたが、コーナー閉鎖のため、こちらに追記しました
アラブ系ハードボイルドSF。
『重力が衰えるとき』続編。
マリード・オードラーンは、アラブの暗黒街・ブーダイーンの一匹狼……だったのは、ついこの間まで。顔役の“パパ”ことフリートレンダー・ベイの“好意”で雇われ警察官になってしまい、昔なじみの仲間からも、警官からも阻害される日々。
日曜の朝、マリードが目覚めると、ベッドそばに見知らぬ黒人が立っていた。奴隷のクムーズだ。パパの贈りものをマリードは“ありがたく”いただくことになる。
さらに、パパから新たな仕事を申しつけられるマリード。フリートレンダー・ベイの娘だと主張する女が、息子をつれて押しかけてきたのだ。なんとか追い出すにとどめたいマリードだったが……。
幼児売買に謎の殺人。
それらの背後にいるのは?
イスラム教的“正しい作法”で進む会話が、前作にひきつづきとても楽しい一冊。マリード自身は熱心なイスラム教徒ではないのですが、信心深いパパにうまくあわせてます。奴隷というより見張り役のクムーズは、キリスト教徒。どちらにも奉仕の精神があるのですね。
アラブ系ハードボイルドSF。
『重力が衰えるとき』『太陽の炎』続編。
マリード・オードラーンは元はといえば、アラブの暗黒街・ブーダイーンの一匹狼。それが今では、権力者“パパ”ことフリートレンダー・ベイの後継者候補。しかし、望んで手に入れた地位ではない。
ある日マリードは、総督の祝賀会に招待された。パパの一声で結婚させれられてしまったのだが、それを祝ってくれるというのだ。マリードはパパと共に総督邸を訪れる。そして帰宅途中、誘拐されてしまった。
身に覚えのない容疑で裁かれ、ただちに判決を受ける二人。放たれた先は、アラビア砂漠の南東部、ルブー・アルハーリー。サハラ砂漠よりも厳しく荒れ果てた〈空白の区域〉だった。
全体の半分ほどを占める砂漠での出来事が評価の高い一冊。
ふたたびブーダイーンに戻ったマリードに、強烈な変化を感じました。もう、チンピラの頃の彼じゃないのね。
時間テーマSF。
恒星間宇宙船〈ニュー・メイフラワー〉は、地球から20光年はなれた植民惑星ニューマンホームを目指していた。
ヴィクター・ソリケインは航宙士の息子。冷凍睡眠から目覚めたが、到着したためではなかった。予期されていなかった〈閃光星〉の出現に、光子帆が影響を受けてしまったのだ。船のコースは大きく変えられてしまい、航宙士たちは再計算にとりかかる。
ワン・ツは、G3型恒星の内部に住むプラズマ生物。恒星や銀河で“遊ぶ”のは日常茶飯事。戯れに自分の分身をつくり、しかし彼らを信用できないでいる。というのも、自分を殺そうとしている分身がいることを知っているから。
ワン・ツは分身たちを始末しようと画策する。そのためにニューマンホームは深刻なダメージを受けてしまい……。
ワン・ツが哀しい。
何度か冷凍睡眠を体験し、その都度世界が一変しているヴィクターも悲劇的に哀しいんでしょうが、どうもうまく受け止められませんでした。