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01月01日 展望、2026年
01月23日 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
02月03日 『白鯨』とその時代
02月22日 2025年、ベスト
03月15日 勘違いの出会い
06月30日 中間報告、2026年(準備中)
12月31日 総括、2026年(準備中)

ようやく読めました。
アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を。
2021年に単行本が出版されたとき考えたんです。場所的に買って置いておけるのは文庫だから、読むのも文庫がでてからにしよう、と。
あのころは、すぐに文庫化されると思ってました。映画が公開されるとなれば、出版社としてもそのタイミングを逃さないでしょうし。
ところが!
予定されていた映画の完成が延びに延びてしまって。
どうにかこうにか2026年の春に公開が決まり、2026年1月22日、ようやく文庫版の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が発売されました。
発売日に手に入れてすぐに読みはじめましたとも。
これまで、まっさらな状況で読みたいと情報をまったく入れてませんでした。それが可能だったのも、読んだ人の意見が一致していたから。
この本は、事前情報なしに読むべき!
単行本や電子版で読んだ方々が内容の発信を控えてくれたからこそ、まっさらでいられたのだと思います。
感謝、感謝、です。
さすがに映画が公開されてしまうと、今まで通りとはいかないでしょうね。ちょこちょこ情報がでてくると思います。
今さら沈黙しても、と思わなくもないですが、航本日誌では書きすぎないようにしました。
代わりにこの場を借りて、ほんのちょっぴり書き足しておきます。
■航本日誌で書いたこと(再掲)
ライランド・グレースは、単調な女性の声に気がついた。意識が戻っても、なにも思いだせない。ろれつが回らず、目を開けるのも苦労する。
楕円形のベッドに寝かされていた。酸素マスクをつけられ、数え切れないほどの管につながれている。身体中、電極だらけだ。
天井には、LED照明といくつものカメラ。それに無骨なアームが2本、ぶらさがっている。女性の声はコンピュータのものだった。
自分の名前すら覚えていなかったグレースは、ふとしたきっかけに一通のメールを思いだす。
ロシアのイリーナ・ペトロヴァ博士が、天文学愛好家のグループに意見を募った。
ペトロヴァ博士は、天体観測中に奇妙なものを見つけていた。かすかな赤外線を放射しているラインが、どういうわけだか太陽の北極から立ちあがり、弧をえがいて金星に向かっていたのだ。
グレースは記憶を少しずつ取り戻して行く。
その後、太陽観測衛星によって太陽の出力が落ちていることが突きとめられた。太陽が本来の明るさより0.01パーセント暗くなっている。指数関数的減少のごくごく初期の状態だった。
ペトロヴァ・ラインが、太陽のエネルギーを盗んでいる。このままでは地球は氷河期になり、人類は絶滅する。
グレースが目覚めたのは、地球ではなかった。
グレースは、なんのために自分がここにいるのか思いだすが……。
■100ページまでにグレースが思いだすことについて
(全体の文量は、上下巻がそれぞれに450ページ前後あります)
主人公の名前は、ライランド・グレース。
分子生物学の博士号をもってます。
生物が進化するのに液体の水はかならずしも必要ではないという立場。生命は液体の水を必要とするという仮説と何年間もやりあった挙げ句、研究の一線から退き、中学教師に転身しています。
ペトロヴァ・ライン対策には、エヴァ・ストラットが全権限を得て動いています。まずは、探査機〈アークライト〉が送られます。ペトロヴァ・ラインを構成しているのは生命体だと考えられているけれど、調べてみないと分かりません。
ストラットは、研究者としてグレースを指名します。
グレースの論文「水基盤仮説の分析と進化モデル期待論の再検討」を読み、思弁地球外生物学の研究者たちの意見も聞いて、分析するのにグレースが最適と考えたんです。
太陽の出力エネルギー(すっごく高温!)を食べる生命体が水基盤とは考え難いですから。
グレースは、スカウトというより拉致に近い状況で専用ラボに籠もり、調べはじめます。その結果、ペトロヴァ・ラインを構成しているのが生命体であることがはっきりと確認され、グレースによって〈アストロファージ〉と名づけられます。
こういったことを思いだす一方、現状では、宇宙船〈ヘイル・メアリー〉に乗っていることが分かります。
■グレースの任務について
〈ヘイル・メアリー〉の目的地は、タウ・セチ星系。
太陽以外にもペトロヴァ・ラインのある恒星が見つかるなか、タウ・セチだけが明るさを保っていたんです。ペトロヴァ・ラインは確認できるものの、致命傷にはなってない。
それはなぜか?
その理由を調べるのが〈ヘイル・メアリー〉計画の目的です。グレースがタウ・セチに到達するまで地球時間で13年の年月が流れてます。〈アストロファージ〉に対抗するなにかを突きとめ、ただちに地球へと送り返さねばなりません。
送り返す……。
そうなんです。そこに人間は含まれません。
実は、グレース以外にもふたりの研究者が乗船していました。最初に目覚めた部屋で、グレースと同じようなベッドに横たわっていた仲間は、ミイラ状態になってました。
ご愁傷様です。
■映画のキャッチ・コピー
文庫を買ったとき、全面タイプの帯がかかってました。
まったく見ずに外して正解。
ネタバレしてました。
では、引用します。
上巻につけたられた、キャッチ・コピー。
迫る太陽消滅の危機。全人類の未来は
ひとりの中学校の科学教師に託されたーー。
下巻につけられた、キャッチ・コピー。
故郷から遠く離れた宇宙の彼方
孤独な任務に挑んでいたのは、彼だけではなかったーー。
■226ページで判明すること
タウ・セチ星系には、異星人の船があった!
かれらも主星のエネルギー減少に困って、派遣してたんですね。で、ファースト・コンタクトすることになる。
かれらにはかれらの考え方があり、得意分野がある。
協力しながら〈アストロファージ〉の生体をさぐっていきます。
本書の醍醐味は、ひとつ、ひとつ、少しずつ手探りで発見していく喜びにあります。
異星人が登場する驚きはなくなっても、楽しみはまだまだあります。最後の最後まで、トライ・アンド・エラーは続きます。
■おわりに
人類絶滅の危機をまえに、国際社会はほぼ一致団結します。
アメリカも、ロシアも、中国も。
ストラットに与えられた権力は絶大で、人員も物資も徴用しまくります。
ふりかえって、現実はどうでしょう?
陰謀論に固執する人、いるでしょうね。国内も国際社会もかえって分断がひどくなりそう。
一致団結しそうにない……と暗澹たる心持ちです。
グレースの一人称で『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は語られます。そのため、本人不在の出来事は分かりません。
グレースが目覚めたとき、はるか遠くの地球はどうなっていたのか。
分かりません。
太陽光減少を少しでも遅らせるべく、みんなで協力しあいながら研究を進めているのか。富める国だけが、地底開発したりドームにこもったりして生きのびようとしているのか。
地球は〈ヘイル・メイリー〉からの成果を、どういう状況で待っているのか。
まったく分かりません。
分からないけど、グレースは人類を信じて〈アストロファージ〉に対抗するなにかを探究します。
結末はどうなるのか。
ぜひ読んでみてください。