書的独話

 
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2017年07月12日
後出しの幸い
 

 第一作を読んだのは、昨年の7月のこと。
 でも、この第一作、実は2冊目なんです。

 この第一作とは、リリアン・J・ブラウンの『猫は手がかりを読む』。
 《シャム猫ココ》シリーズ第一作。
 ただし、日本での翻訳順は2冊目。最初に翻訳されたのは、第四作の『猫は殺しをかぎつける』でした。

 ひげがトレードマークのジム・クィラランの家族は、シャム猫のココとヤムヤム。今度クィラランが〈デイリー・フラクション〉で担当するのは、グルメ記事。
 クィラランがグルメクラブのディナー会に行ってみると、昔の恋人ジョイがいた。ジョイの結婚生活はうまくいっていないらしい。なんとかして助けようとするクィラランだったが、ジョイは失踪してしまった。
 クィラランは、ジョイが事件に巻き込まれたのでは、と心配するが……。

 クィラランはココから、メッセージを受け取ります。
 ココのメッセージというものが、実に猫なんです。猫の本能を逸脱してない。ココが賢いためにそうなった、とも言えるし、単純に本能に従っただけで偶然そうなった、とも言える。
 それが、《シャム猫ココ》シリーズの特徴なのです。(まだ6冊しか読んでませんが)

 本国で、最初の3冊が出版されたのが、1966年〜1968年。当時は猫に人気がなくて売れなかったのか、第四作はお蔵入り。猫のことが分かってないと、ココとヤムヤムの魅力には気がつきにくいのかもしれませんねぇ。

 その後、1986年になってから、ようやく第四作『猫は殺しをかぎつける』が出版されたら好評で、最初の3冊が再販されて、続編も書かれた、と。

 その流れのためか、日本では1988年に『猫は殺しをかぎつける』が最初に翻訳されて、以降、第一作から順繰りに翻訳されていきました。
 ところが!
 どういうわけだか、第五作、第六作は飛ばされて、5冊目に翻訳されたのは、第七作の『猫はシェイクスピアを知っている』だったのです。

 第五作『猫はブラームスを演奏する』と第六作『猫は郵便配達をする』は、元々〈デイリー・フラクション〉の記者だったクィラランが、北の田舎町で大富豪の唯一の相続人となった経緯が書かれた物語。
 第四作と第五作の間で執筆時期が20年近く空いているためか、趣向の変化が感じられる巻だったのですが……。

 翻訳されるそばから読んでいたファンは、突然大金持ちになっているクィラランに驚いたでしょうね。
 全29巻が翻訳され終わって、そのうえ10年もたってようやく読み始めると、行きつ戻りつしていた翻訳順を無視して、きちんと順番どおりに読める、この後出し感。
 待った甲斐があったというものです。


 

 
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