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2024年04月10日
鼻行類
 

 鼻行類とはなにかというと、鼻が極度に奇妙な構造をしている哺乳類の総称です。
 鼻行類の鼻は1個のこともあり、多数存在することもあります。たいていの場合、鼻が「移動のための器官」となってます。そうでないのは、ムカシハナアルキ属だけ。
 なんと思わせぶりな属名!

 発見者は、スウェーデン人のエイナール・ペテルスン=シュムトクヴィスト。
 1941年、南海にあった日本軍の捕虜収容所から脱走したエイナールは、ハイアイアイ群島の中のハイダダイフィ島に漂着しました。そこで鼻行類を発見したのです。

 ただし、それ以前にも知っている人はいたようで……。
 発見の50年ほど前、クリスティアン・モルゲンシュテルンが発表した詩作(※)に、今となっては「鼻行類のことでは?」というものがありました。
 いったいどうやって知ったのでしょうね?

 なお、秘密裏の核実験により、ハイアイアイ諸島は消滅してます。鼻行類も研究者も諸共に。

 という、架空の生態系を論文としてまとめたものが

ハラルド・シュテュンプケ
『鼻行類 新しく発見された哺乳類の構造と生活』

 1941年に発見されたハイアイアイ群島。そこでは鼻で歩く一群の哺乳類=鼻行類が独自の進化を遂げていた。多くの動物学者に衝撃を与えた驚くべき鼻行類の観察記録。
(「MARC」データベースより)

 訳者あとがきにいたるまで、

 これがフィクションとは!

 という完成度。とにかく真面目。どこまでも真面目。
 読んで楽しくなることは目指しておらず、図版つきの論文として、鼻行類の生態が書き連ねられてます。専門家による想像は、こんな生物がいてもおかしくない、というレベル。
 理論物理学として抜群と誉め称えられていのも分かります。
 一応、明らかにおかしな記述もあります。そういうところで読者は立ち止まって、現実なのか空想なのか、考えるのでしょうね。

 原書が西ドイツで出版されたところ、東ドイツ側は信じたそうです。ハイアイアイ諸島が核実験で消滅したことに反応したんだとか。

 そんな裏話や、鼻行類がまとめられたいきさつは、

カール・D.S.ゲースケ
『シュテュンプケ氏の鼻行類』

 で、知ることができます。
 こちらも、大真面目。
 考察と資料から構成されてます。
 シュテュンプケ氏へのインタビュー、どういういきさつで誕生したのか、そして、それを発表して、世間はどう反応したのか、云々。
 これは合本にしてもいいくらい、必読。併せて読むべき。

 生物の世界って、奥深い……。

 


 クリスティアン・モルゲンシュテルンの詩作は、実際のものです。
 モルゲンシュテルンの、鼻で歩行する奇妙な生物を書いた「ナゾベーム」が、鼻行類が誕生するきっかけでした。


 

 
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