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2008年の記録
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このページの本たち
冒険の惑星1』ジャック・ヴァンス
冒険の惑星2』ジャック・ヴァンス
冒険の惑星3』ジャック・ヴァンス
冒険の惑星4』ジャック・ヴァンス
キルン・ピープル』デイヴィッド・ブリン
 
ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン
ゴールデン・エイジ1 幻覚のラビリンス』ジョン・C・ライト
ゴールデン・エイジ2 フェニックスの飛翔』ジョン・C・ライト
ゴールデン・エイジ3 マスカレードの終焉』ジョン・C・ライト
アイ・アム・レジェンド』リチャード・マシスン

 
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2008年01月02日
ジャック・ヴァンス(中村能三/訳)
『冒険の惑星1』
改題『偵察艇不時着!』
創元推理文庫(後に創元SF文庫)

アダム・リース》シリーズ第一巻。
 宇宙で捉えられた謎の電波信号は、前ぶれなく途切れてしまった。発信元の調査に向かったのは、エクスプロレイター4号。探し当てた惑星は雲におおわれ、様子を伺い知ることはできない。
 偵察艇で探ることが決定され、アダム・リースとポール・ウォンダーがその任務に就いた。ところが発進直後、母船が地表からの攻撃によって破壊されてしまう。衝撃波は偵察艇をも襲い、やむなく不時着することに……。
 アダム・リームが驚いたことに、この惑星には人類が居住していた。ポール・ウォンダーは彼らに殺されてしまう。偵察艇もまた、謎の種族に持ち去られてしまった。すべてを目撃したアダム・リースは、重傷を負いながらも生き延びる。
 リースを助けたのは、紋章遊牧民の首長トラズ・オンメールだった。リースはトラズから、言葉や、この惑星がチャイと呼ばれていること、さまざまな種族が危うい均衡のもとにそれぞれの地盤を築いていることを教えられる。どうやら偵察艇を持ち去ったのは、ブルー・チャッシュ族であるらしい。
 リースはトラズと共に、ブルー・チャッシュの町ダディッシュへと向かう。
 偵察艇を取り戻すことはできるのか?

 シリーズ第一巻ゆえ、世界観などよく分からないところもありました。とにかくいろんな文化が入り乱れ。本書でメインとなる異星種族のチャッシュでさえ3種族でてきます。その他、まだ詳しくは語られていない種族が多数……。
 矢継ぎ早に展開する未知の世界での大冒険にクラクラしながら読んでました。古いタイプのSFなんですけどね、おもしろいです。


 
 
 
 
2008年01月03日
ジャック・ヴァンス(中村能三/訳)
『冒険の惑星2』
改題『キャス王の陰謀』
創元推理文庫(後に創元SF文庫)

アダム・リース》シリーズ第二巻。
 惑星チャイは、フング族、プニューム族の星だった。そこへやってきたのは、宇宙航行種族のディルディル族とチャッシュ族、そしてワンフ族。彼らは未開の惑星から人類という奴隷を連れて来ていた。年月を経るにつれ人類は、それぞれの種族に似た形で進化を遂げていく。また、変異などせずに独自の文化を形作った人類もいた。
 アダム・リースは地球人。惑星チャイの歴史など知る由もなかった。惑星チャイにやってきたのは、謎の電波信号の調査のため。ところが宇宙船が破壊されてしまい、惑星チャイでただ一人の地球人となった。
 アダム・リースは、女人秘教の尼僧に囚われていたキャスの姫君を救出した。〈キャスの花〉ことイリン・イランの話によると、謎の電波信号を送り出したのはキャスの人々らしい。
 彼らなら宇宙船を造れるのでは?
 リースは淡い期待を抱いてキャスへと向かう。ところがキャスへの船旅で、イリン・イランが自殺を遂げてしまった。当初は帰郷を心待ちにしていたのだが、キャスの複雑な社会にいよいよ戻る日が近づき、心中の葛藤に屈してしまったのだ。
 多額の報酬を約束したイリン・イランの死に、唖然とするアダム・リース。到着したキャスでは歓迎されず、しかも命を狙われるはめに陥ってしまう。
 宇宙船を手に入れることはできるのか?

 キャスの文化や政治は複雑ですが、邦題の『キャス王の陰謀』は、ちょっと的外れ。(元々のタイトルは“Servants of the Wankh”)
 アダム・リースには信頼できる仲間がいますが、そのうちの一人、ディルディル人のアナコには健忘症と思われています。アナコは物知りで、皮肉たっぷりにさまざまなことを教えてくれます。でも、設定を説明してますって雰囲気はなく、実に自然な感じ。
 登場人物たちが自然に動いている作品って、安心して読めます。


 
 
 
 
2008年2008年01月04日
ジャック・ヴァンス(中村能三/訳)
『冒険の惑星3』
改題『ガラスの箱を打ち砕け!』
創元推理文庫(後に創元SF文庫)

アダム・リース》シリーズ第三巻。
 アダム・リースは、未知の惑星チャイで立往生していた。チャイにはさまざまな種族がひきめきあっているが、人類発祥の地である地球のことは知られていない。これまでアダム・リースは、地球への帰還を熱望し、宇宙船を手に入れる努力を重ねて来た。
 相次ぐ失敗にアダム・リースは、シヴィシで宇宙船を手に入れることを考え始める。シヴィシは宇宙港のある町。資金さえあれば、宇宙船を手に入れることも可能らしい。しかし、遭難者であるリースには財産がない。
 仲間のディルディル人アナコは、キャラバスへ行くことを提案した。そこには黄金鉱脈があるのだ。一攫千金を夢見る者たちが集まってくる地。問題なのは、ディルディルの禁猟区のただ中であること。ディルディル族たちは狩猟隊を組み、キャラバスに侵入してくる者たちを片端から狩っていく。
 アダム・リースは、妙案を思いつくが……。

 邦題になった『ガラスの箱を打ち砕け!』は、終盤の冒険に関わる出来事。全体的には、ディルディル族の生態にスポット・ライトが当てられた巻でした。
 今まで逃亡ディルディル人という説明しかなかったアナコの、さまざまな側面が語られます。逃亡の理由や、その前の社会的地位など。なお、ディルディル人は、ディルディル族に近しい存在へと進化した人類の末裔のことで、ディルディル族とは別の種族です。
 冒険に次ぐ冒険でおもしろいんですけど、前々から気になっていた翻訳の「?」が、顕著にでているのがちと残念。まぁ、細かいことは気にせずに……。


 
 
 
 
2008年01月05日
ジャック・ヴァンス(中村能三/訳)
『冒険の惑星4』
改題『プニュームの地下迷宮』
創元推理文庫(後に創元SF文庫)

アダム・リース》シリーズ最終巻。
 アダム・リースは未知の惑星チャイに不時着し、地球帰還の努力を続けてきた。チャイにはさまざまな種族がいるが、だれも地球のことを知らない。
 宇宙船が完成に近づく中、アダム・リースは何者かに誘拐されてしまう。袋詰めにされ、ついた先はプニュームの地下都市だった。
 プニューム族はチャイを発祥とする種族で、今では地下に基盤を築いている。プニュームたちはアダム・リースを、非常に珍しい種族として〈フォーレバネス〉にコレクションするつもり。リースは隙を見て逃げ出した。
 アダム・リースは、大地図を手に入れることに成功。それは、秘密社会を築き上げているプニュームの、第20等級の地図。秘密の通路まですべて書き込まれてある。ところが、リースには地図の見方が分からない。
 アダム・リースは、プニュームと共に暮らすプニュームキンに変装するが、ひとりの女性に正体を見破られてしまった。アダム・リースは捕らえたザップ210を脅迫し、地図を読むことを強要する。
 ザップ210の身分はわずか第4等級。第20等級の秘密を見てしまったために、処罰を恐れおののく。リースと一緒に逃亡することになるが……。

 プニュームキンは人目を嫌い、かなり控えめ。ザップ210も同様でしたが、プニュームに与えられたものを食べなくなり、肉体的にも精神的にも変化が訪れます。そうやって人類の末裔プニュームキンは飼いならされていったのか〜。
 アダム・リースは、地上への脱出を計り、宇宙船のあるシヴィシへと向かいます。
 宇宙船は無事なのか?
 仲間たちはリースの帰還を待っているのか?
 惑星チャイでの大冒険の結末は?


 
 
 
 
2008年01月10日
デイヴィッド・ブリン(酒井昭伸/訳)
『キルン・ピープル』上下巻
ハヤカワ文庫SF1628〜1629

 人類の営みに大革命をもたらしたのは、〈ユニバーサル・キルン〉が開発したキルン技術だった。以来人々は、さまざまな用途に応じて造られたゴーレムに自身を転写し、働かせるようになった。人々が吹き込むのは記憶だけではない。ゴーレムには魂も吹き込まれているのだ。
 ゴーレムの寿命は24時間。寿命が近づくと、記憶を本人に還す欲求がおこる。造り主は、記憶を回収してもいいし、また回収しないで終わらすこともできる。
 アルバート・モリスは、私立探偵。
 ある日モリスは、〈ユニバーサル・キルン〉の創立者、イーニアス・カオリンの接触を受けた。カオリンの親友にして複製テクノロジーの基礎を築いたヨシル・マハラル博士が行方不明になっているというのだ。犯罪が行われた明白な証拠がないため、警察は動いてくれない。
 調査を約束するモリスだったが、〈ユニバーサル・キルン〉にマハラル博士の複製が現れた。原型は無事だと言うが、ついに現れた博士は自動車事故で命を落としてしまう。博士の娘リツは他殺を主張し、改めてモリスに調査を依頼する。
 一方、モリスの元には、ジニーン・ワムメーカーからの依頼も入ってきていた。ワムメーカーは〈スタジオ・ネオ〉に君臨しており、依頼を断るのは得策ではない。
 モリスは複製を3体造り出し、それぞれを仕事につかせる。ところが、3体共が連絡を絶ってしまった。

 ほんのちょっとした情報が伏線に使われていて、よく練られた構成は、さすがブリン。原型も含めて4パターンのモリスの視点で展開していきます。
 それぞれ、他のバージョンのモリスがなにをしているのかは、知りません。同じことを考えていたり、ちょっとズレていたり。かなりおそろしい事件が背景にあるのですが、明るく読めました。


 
 
 
 
2008年01月12日
ダン・ブラウン(越前敏弥/訳)
『ダ・ヴィンチ・コード』全三巻
角川文庫

 ルーブル美術館の館長ジャック・ソニエールが殺害された。ソニエールは、自身の肉体をも使って奇々怪々なダイイング・メッセージを遺す。
 夜半、宗教象徴学教授ロバート・ラングドンが呼び出された。名目は、ソニエールの遺した暗号解読の手伝いのため。実は、フランス司法警察中央局警部のベズ・ファーシュは、ラングドンが犯人ではないかと疑っていた。ラングドンはその部分を見せられていないが、ダイイング・メッセージの最後にラングドンの名前が入っていたのだ。
 知らぬ間に容疑者にされていたラングドン。そのことを告げ逃走を助けたのは、司法警察暗号解読課のソフィー・ヌヴー捜査官だった。
 ソフィーは、完全な状態のメッセージを見た瞬間、自分に宛てたものであることを見て取っていた。ソフィーにとってソニエールは、祖父にして育ての親。ここ10年ほど連絡をとっていなかったことが悔やまれる。
 ラングドンとソフィーはファーシュの裏をかき、包囲されたルーブル美術館から脱出。ソニエールの遺したメッセージに従って行動するが……。
 殺人事件の黒幕とは?
 ソニエールが伝えようとしたものとは?

 キリストの聖杯にまつわるミステリ。レオナルド・ダ・ヴィンチが残した絵画のミステリ。それらは小説でなくても充分に興味深いエピソード。素材を殺さず、うまくまとめたなぁと感心してしまいます。
 ラングドンとソフィーはその時々に過去を回想し、それが暗号解読の鍵となって次のステップへ。徐々に展開が拡大していくものの、やや一本調子。
 取り上げられた題材そのものに深さがあるので、現代の展開はそのくらいで逆によかったのかも。


 
 
 
 
2008年01月19日
ジョン・C・ライト(日暮雅通/訳)
『ゴールデン・エイジ1 幻覚のラビリンス』
ハヤカワ文庫SF1585

 人類は、本体と寸分違わぬコピーを無数に創りだし、電子的な不死を実現した。さらに、光電子工学的自己認識体〈ソフォテク〉たちの協力を得、太陽系の隅々まで植民。文明は絶頂を極め、争いのない世界が実現していた。
 ファエトンはラダマンテュス家の御曹司。大規模プロジェクトを率いたこともあるエンジニアだ。
 人類は新たな千年紀を迎え、ファエトンも仮面舞踏会に参加していた。喜びもつかの間、ファエトンは自身の記憶に穴があることに気がついてしまう。どうやら過去の自分は、大罪を犯したために裁かれ、それに関わる記憶の消去に同意したらしい。
 記憶の損失はファエトンだけではなかった。他の多くの人々も、忌まわしい記憶を消し去っていたのだ。
 ファエトンの妻ダフネは、記憶を取り戻そうとするファエトンをいさめる。大金持ちだったファエトンは、今では一文無し。そのうえ記憶をとりもどせば、追放処分にされてしまうという。
 ファエトンはいったいどんな罪を犯したのか?

 三部作の第一部。
 記憶喪失のファエトンと共に、はるかな未来世界をお勉強しながら大冒険……と思っていたのですが、そうはならず。ここがどういう世界なのか、理解できないまま最後まで行ってしまいました。
 おもしろいところは随所にあるんですけどねぇ。
 世界が分からないものですからファエトンのことも親身に感じられなくって、ファエトンの主張が嘘っぱちに思えてしまう。もしかして、それが狙いなんだろうか……。


 
 
 
 
2008年02月03日
ジョン・C・ライト(日暮雅通/訳)
『ゴールデン・エイジ2 フェニックスの飛翔』
ハヤカワ文庫SF1612

幻覚のラビリンス』の続巻。
 禁じられた記憶を取り戻したファエトンは、勧告者共同体の裁きにより、〈黄金の普遍〉を追放されてしまった。その処分は、ファエトンに接触した人にも適用される厳しいもの。全財産をかけて造船した宇宙船〈喜びのフェニックス号〉も他人の手に渡り、手元に残されたのは防護服だけ。
 あらゆる人たちから無視されるようになったファエトン。声をかけてくれた〈ソフォテク〉ハリアーの助言に従い、地球上の都市タライマナーを目指し旅立った。
 タライマナーを統治するオールド・ウーマン・オブ・ザ・シーは、勧告者よりも古い時代から存在する〈ソフォテク〉だ。必要不可欠な存在ゆえ、勧告者の裁きなど気にかけることもない。タライマナーは、追放者たちが行き着くところとなっていた。
 タライマナーで住むところを得たファエトンは、世間に見捨てられた貧しい人々を使って、〈喜びのフェニックス号〉を取り戻すことを画策するが……。

 三部作の第二部。
 特徴は、前作に引き続き議論の堂々巡り。
 ついにファエトンは〈黄金の普遍〉の敵対勢力が〈沈黙の普遍〉であると気がつきます。気がつくんですが、分からず屋のファエトンの考えていることが正しいのかどうか、判断しかねる状況。
 実はファエトン、「現代でその発言をしたら間違いなくセクハラ」ということを考えてます。それで、色眼鏡で見てしまっているのかも。もしかして、そう見せることが狙いなんだろうか……。


 
 
 
 
2008年ジョン・C・ライト(日暮雅通/訳)
『ゴールデン・エイジ3 マスカレードの終焉』
ハヤカワ文庫SF1638

幻覚のラビリンス』と『フェニックスの飛翔』の続巻。シリーズ最終巻。
 〈黄金の普遍〉を追放されたファエトンだったが、ついに〈喜びのフェニックス号〉を取り戻した。しかし、正当な所有者は海王星人ネオプトレマイオス。ファエトンはパイロットにすぎない。
 ネオプトレマイオスは、ディオメデスとクセノフォンの結合存在。ファエトンは友人ディオメデスの安否を心配する。クセノフォンはどうやら、敵対勢力〈沈黙の普遍〉の手先らしいのだ。
 果たして、ネオプトレマイオスは大勢の乗組員をつれて乗船してきた。〈喜びのフェニックス号〉は攻撃を受けてしまう。ファエトンも防御を固めるが……。
 一方〈黄金の普遍〉では、着々と〈超越〉の準備が進んでいた。〈超越〉こそ、〈沈黙の普遍〉のナッシング・ソフォテクが狙いを定めている時。
 ファエトンは、勝利を収めることができるのか?

 いろいろ不満のあったこのシリーズですが、ここまでくるとさすがにおもしろいです。ただ、とにかく長くて、それが必要な長さかというと、少々疑問。
 世界を書きたかったのか、哲学を書きたかったのか、物語を書きたかったのか。ファエトンのように、なにかを捨て去る決意があってもよかったんじゃないかなぁ……と。


 
 
 
 
2008年02月11日
リチャード・マシスン(尾之上浩司/訳)
『アイ・アム・レジェンド』ハヤカワ文庫NV
(『地球最後の男』より改題)

 未知の疫病が発生し、人類社会は崩壊した。
 病に倒れた人々は吸血鬼として蘇り、生者の血を求める。そしてまた感染者を増やしていった。たまたま免疫を持っていたロバート・ネヴィルは、ついにただ一人の生き残りとなってしまう。
 吸血鬼たちは、日の光を嫌った。そのためネヴィルは昼間は活動することができたが、日が沈めばそれまで。厳重な防備を施した自宅に閉じこもり、ネヴィルを狙う吸血鬼たちの罵声や騒音を我慢する日々。
 行動範囲は、車で往復できるところまで。ネヴィルは孤独を耐え忍び、疫病の原因を探る。
 病の正体とは?
 ネヴィルは本当に地球最後の男なのか?

 ネヴィルの、発狂しそうなほどの孤独感。正体を探ろうとする執念。吸血鬼退治という名の殺人への嫌悪。それらが淡々と綴られていきます。
 そして訪れる結末。
 名作です。

 
 

 
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