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2002年の記録
目録
 
 
 3/現在地
 
 
 
 
 
 
このページの本たち
星を拾う男たち』天藤 真
第二の接触』マイク・レズニック
死の内幕』天藤 真
雲の中の証人』天藤 真
屍鬼』小野不由美
 
フリーゾーン大混戦』チャールズ・プラット
人間の手がまだ触れない』ロバート・シェクリイ
ロカノンの世界』アーシュラ・K・ル=グィン
停滞空間』アイザック・アシモフ
背が高くて東大出』天藤 真

 
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2002年03月25日
天藤 真
『星を拾う男たち』
創元推理文庫

 短編集。

「天然色アリバイ」
 隣家の県議会議員・大井忠正に弱味を握られてしまった、同僚議員・辻三六。夫婦で殺害計画をたて、着々とアリバイ工作を進めていくが……。
 少々分かりにくいラストでした。よくよく読めば、分かるんですけどね。集中できていなかったのか……もったいないことをしました。

「密告者」
 上流階級である長谷川家に、ご令嬢の婚約相手・笹村公一に関する密告電話があった。
 そして、探偵社に調査依頼の手紙が舞いこむ。
 しかし、探偵社職員が長谷川家に赴くと、依頼の事実はないという。とはいうものの、密告電話を気にかけていた長谷川家では改めて調査を依頼し、笹村公一の身辺が調べあげられていく……。
 よくよく考えればオチは納得できるものなのですが、考えてなかっただけに、爽快な読後感でした。


 
 
 
 
2002年03月26日
マイク・レズニック(内田昌之/訳)
『第二の接触』ハヤカワ文庫SF

 軍法会議の弁護人を命じられたベッカーは、被告・ジェニングスの供述に基づき調査を開始した。その主張とは、ジェニングスの殺害相手が“異星人”であったとするもの。
 まったく信じていないベッカーだったが、次第に危険な領域に立ち入ることに……。

 紙面の大半を会話が占めているので、ちょこっと物足りない……。おもろいんですけどね、あと一歩。


 
 
 
 
2002年03月31日
天藤 真
『死の内幕』
創元推理文庫

 内縁関係をつづける女性たちの集まり“IG”グループの一員が、事故から愛人を殺してしまった。会員の面々は、架空の犯人をでっちあげるが……

 伏線バリバリの一冊。
 ノンキに読んでいたためか、結末の急展開が少々分かりにくくって状況判断に手間取りました。


 
 
 
 
2002年04月03日
天藤 真
『雲の中の証人』
創元推理文庫

 中・短編集。

「雲の中の証人」
 3000万円を保管していた会社員が殺害され、大金が行方不明になった。容疑者は、当時、被害者の部屋に居候していた、倒産寸前の工場主の男。明らかに犯人であるこの男の無罪を証明するために、弁護士の手伝いをする「私」は奮闘する。
 からくりが、おもしろい。

「あたしと真夏とスパイ」
 大学教師に一目惚れしてしまった「あたし」が、自称・某国のスパイである教師に迫るはなし。「あたし」はいわゆるストーカーなのですが、それがまたユーモラス。
 格別のおもしろさ。


 
 
 
 
2002年04月19日
小野不由美
『屍鬼』
全五巻・新潮文庫

 人口1300の小さな村・外場では、奇妙な出来事がつづいていた。
 村内に移築された場違いな洋館。
 深夜、村にやってきてそのまま帰っていった引越トラック。
 そして、山深い集落で発見された、三体の腐乱死体……。
 村ではいったいなにが起ころうとしているのか?

 おもしろいか、おもしろくないか、二者択一を迫られたらおもしろいに一票。でも、どことなく堂々巡りをしている思想といい、多視点に頼った構造といい、ひっかかってしまうところも少なくありませんでした。
 第一巻の時点ではつづきが楽しみだったのですが、途中でファンタジーに逃げられてしまったような感じがしたり、同氏の別の作品とかぶってる気がしたり……。
 盛り上がるにつれ少しずつ引いてしまうのは、個人的な問題でしょうか?


 
 
 
 
2002年04月20日
チャールズ・プラット(大森 望/訳)
『フリーゾーン大混戦』
ハヤカワ文庫SF

 ロサンジェルスの一角につくられた独立区域・フリーゾーンでのてんやわんやもの。
 SFのさまざまな要素が混ぜ込まれているのですが、それが煩くもなく見事にまとまってました。
 巻頭の登場人物紹介は、最後に読むべし。


 
 
 
 
2002年04月30日
ロバート・シェクリイ
(稲葉明雄/宇野輝雄/小尾芙佐/風見 潤/福島正実/峯岸 久/小笠原豊樹/訳)
『人間の手がまだ触れない』
ハヤカワ文庫SF

 SF短編集。
 半世紀近く昔のはなしなので、目新しさ満載……とはいかないものの、やはり奥がね、深いです。

「怪物」
 独自の道徳観念が発達している知的生物のところに、別の知的生物たちがやってきて……という、よくある遭遇モノ。主役のコードヴァーはやってきた知的生物を「怪物」と呼称するのですけど、地球人類からすると、コードヴァーたちの方が「怪物」に近い。
 そこが、ミソ。

「幸福の代償」
 電気機器が発達し日常生活が豊かになった世界で、“漠とした形のない恐怖”を心の奥底に抱えた男の物語。

「専門家」
 宇宙船の構成員たちが、欠けた人材を補うために、未知の惑星で乗組員候補と接触するはなし。出だしは正直つかみにくかったのですが、骨格が浮き出るにつれて、面白みが逆転しました。
 もっとも印象深かった一遍です。


 
 
 
 

2002年05月04日
アーシュラ・K・ル=グィン(小尾芙佐/訳)
『ロカノンの世界』
ハヤカワ文庫SF

 高度な知能を有する生命体数種が生息する、フォーマルハウト第二惑星。
 仲間たちと調査のために訪れたロカノンは、この惑星にやってきた反逆者たちに、仲間が乗った宇宙船を破壊されてしまう。母星との通信装置も失い、孤立したロカノン。使用可能なそれは、反逆者の手許にしかない。
 ロカノンは現地の友と共に、未踏の大地へと反逆者たちを探しに旅立った。

 《ハイニッシュ・ユニバース》もの。
 プロローグの「セムリの首飾り」は、元は独立した物語。
 これだけでも充分よませます。
 名作。


 
 
 
 
2002年05月06日
アイザック・アシモフ
(伊藤典夫/風見 潤/福島正実/冬川 亘/訳)
『停滞空間』ハヤカワ文庫SF

 SF短編集。

「やがて明ける夜」
 惑星間天文学会議が地球で開催され、太陽系に散った同級生3人が10年ぶりに顔をそろえた。そして、3人の元に、病気のために地球に留まらざるをえなかった同級生・ヴァリアーズが現れる。
 ヴァリアーズは質量転移法を発見していたのだが、同級生の3人にもほのめかすだけで論文を見せようともしない。同夜ヴァリアーズは殺され、嫌疑が同級生たちにかかる。犯人は誰なのか???

「停滞空間」
 人工的に作り上げられた〈停滞空間〉に、4万年の昔からネアンデルタール人の子供が連れ込まれた。
〈停滞空間〉はエネルギーの過不足のない特殊な空間で、過去のモノを出現させることはできるが、その場から連れ出すことはできない。世話係となったフェローズは、当初抱いていた猿人に対する嫌悪感を深い愛情に変えていったが……

 アシモフの他の作品集と読み比べて、傑作ぞろいかどうかといえば、少々懐疑的。でも「停滞空間」にはしんみりきました。そして、最後の「返送票」は、短編ではありませんが、とてもおもしろい作品です。


 
 
 
 
2002年05月07日
天藤 真
『背が高くて東大出』
創元推理文庫

 短編集。

「死神はコーナーに待つ」
 恋人ルミと夜の公園におもむいた王次。
 二人の関係が発展するかと思いきや、ルミは王次を罵り、王次はルミを絞め殺してしまう。王次は、唯一の目撃者である玉子につきまとい、彼女をも殺そうとするが……。
 結末のどんでん返しであっと息をのみました。

「日曜日は殺しの日」
 夫を、医師・村中の誤診で失ってしまった友季子は、せい子という女から交換殺人を持ちかけられ承諾する。せい子の妹は、宮崎という男に自殺に追い込まれたというのだ。
 二人は共謀して、村中と宮崎を同時に殺すのだが……。
 秀逸。

 
 

 
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