短編集。
「天然色アリバイ」
隣家の県議会議員・大井忠正に弱味を握られてしまった、同僚議員・辻三六。夫婦で殺害計画をたて、着々とアリバイ工作を進めていくが……。
少々分かりにくいラストでした。よくよく読めば、分かるんですけどね。集中できていなかったのか……もったいないことをしました。
「密告者」
上流階級である長谷川家に、ご令嬢の婚約相手・笹村公一に関する密告電話があった。
そして、探偵社に調査依頼の手紙が舞いこむ。
しかし、探偵社職員が長谷川家に赴くと、依頼の事実はないという。とはいうものの、密告電話を気にかけていた長谷川家では改めて調査を依頼し、笹村公一の身辺が調べあげられていく……。
よくよく考えればオチは納得できるものなのですが、考えてなかっただけに、爽快な読後感でした。
軍法会議の弁護人を命じられたベッカーは、被告・ジェニングスの供述に基づき調査を開始した。その主張とは、ジェニングスの殺害相手が“異星人”であったとするもの。
まったく信じていないベッカーだったが、次第に危険な領域に立ち入ることに……。
紙面の大半を会話が占めているので、ちょこっと物足りない……。おもろいんですけどね、あと一歩。
内縁関係をつづける女性たちの集まり“IG”グループの一員が、事故から愛人を殺してしまった。会員の面々は、架空の犯人をでっちあげるが……
伏線バリバリの一冊。
ノンキに読んでいたためか、結末の急展開が少々分かりにくくって状況判断に手間取りました。
中・短編集。
「雲の中の証人」
3000万円を保管していた会社員が殺害され、大金が行方不明になった。容疑者は、当時、被害者の部屋に居候していた、倒産寸前の工場主の男。明らかに犯人であるこの男の無罪を証明するために、弁護士の手伝いをする「私」は奮闘する。
からくりが、おもしろい。
「あたしと真夏とスパイ」
大学教師に一目惚れしてしまった「あたし」が、自称・某国のスパイである教師に迫るはなし。「あたし」はいわゆるストーカーなのですが、それがまたユーモラス。
格別のおもしろさ。
人口1300の小さな村・外場では、奇妙な出来事がつづいていた。
村内に移築された場違いな洋館。
深夜、村にやってきてそのまま帰っていった引越トラック。
そして、山深い集落で発見された、三体の腐乱死体……。
村ではいったいなにが起ころうとしているのか?
おもしろいか、おもしろくないか、二者択一を迫られたらおもしろいに一票。でも、どことなく堂々巡りをしている思想といい、多視点に頼った構造といい、ひっかかってしまうところも少なくありませんでした。
第一巻の時点ではつづきが楽しみだったのですが、途中でファンタジーに逃げられてしまったような感じがしたり、同氏の別の作品とかぶってる気がしたり……。
盛り上がるにつれ少しずつ引いてしまうのは、個人的な問題でしょうか?
ロサンジェルスの一角につくられた独立区域・フリーゾーンでのてんやわんやもの。
SFのさまざまな要素が混ぜ込まれているのですが、それが煩くもなく見事にまとまってました。
巻頭の登場人物紹介は、最後に読むべし。
SF短編集。
半世紀近く昔のはなしなので、目新しさ満載……とはいかないものの、やはり奥がね、深いです。
「怪物」
独自の道徳観念が発達している知的生物のところに、別の知的生物たちがやってきて……という、よくある遭遇モノ。主役のコードヴァーはやってきた知的生物を「怪物」と呼称するのですけど、地球人類からすると、コードヴァーたちの方が「怪物」に近い。
そこが、ミソ。
「幸福の代償」
電気機器が発達し日常生活が豊かになった世界で、“漠とした形のない恐怖”を心の奥底に抱えた男の物語。
「専門家」
宇宙船の構成員たちが、欠けた人材を補うために、未知の惑星で乗組員候補と接触するはなし。出だしは正直つかみにくかったのですが、骨格が浮き出るにつれて、面白みが逆転しました。
もっとも印象深かった一遍です。
2002年05月04日
アーシュラ・K・ル=グィン(小尾芙佐/訳)
『ロカノンの世界』ハヤカワ文庫SF
高度な知能を有する生命体数種が生息する、フォーマルハウト第二惑星。
仲間たちと調査のために訪れたロカノンは、この惑星にやってきた反逆者たちに、仲間が乗った宇宙船を破壊されてしまう。母星との通信装置も失い、孤立したロカノン。使用可能なそれは、反逆者の手許にしかない。
ロカノンは現地の友と共に、未踏の大地へと反逆者たちを探しに旅立った。
《ハイニッシュ・ユニバース》もの。
プロローグの「セムリの首飾り」は、元は独立した物語。
これだけでも充分よませます。
名作。
SF短編集。
「やがて明ける夜」
惑星間天文学会議が地球で開催され、太陽系に散った同級生3人が10年ぶりに顔をそろえた。そして、3人の元に、病気のために地球に留まらざるをえなかった同級生・ヴァリアーズが現れる。
ヴァリアーズは質量転移法を発見していたのだが、同級生の3人にもほのめかすだけで論文を見せようともしない。同夜ヴァリアーズは殺され、嫌疑が同級生たちにかかる。犯人は誰なのか???
「停滞空間」
人工的に作り上げられた〈停滞空間〉に、4万年の昔からネアンデルタール人の子供が連れ込まれた。
〈停滞空間〉はエネルギーの過不足のない特殊な空間で、過去のモノを出現させることはできるが、その場から連れ出すことはできない。世話係となったフェローズは、当初抱いていた猿人に対する嫌悪感を深い愛情に変えていったが……
アシモフの他の作品集と読み比べて、傑作ぞろいかどうかといえば、少々懐疑的。でも「停滞空間」にはしんみりきました。そして、最後の「返送票」は、短編ではありませんが、とてもおもしろい作品です。
短編集。
「死神はコーナーに待つ」
恋人ルミと夜の公園におもむいた王次。
二人の関係が発展するかと思いきや、ルミは王次を罵り、王次はルミを絞め殺してしまう。王次は、唯一の目撃者である玉子につきまとい、彼女をも殺そうとするが……。
結末のどんでん返しであっと息をのみました。
「日曜日は殺しの日」
夫を、医師・村中の誤診で失ってしまった友季子は、せい子という女から交換殺人を持ちかけられ承諾する。せい子の妹は、宮崎という男に自殺に追い込まれたというのだ。
二人は共謀して、村中と宮崎を同時に殺すのだが……。
秀逸。