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2002年の記録
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このページの本たち
ノヴァ』サミュエル・R・ディレイニー
80年代SF傑作選』小川隆・山岸真/編
ホログラム街の女』ポール・ウィルスン
宇宙気流』アイザック・アシモフ
20世紀SF・5』1980年代SF傑作選
 
内海の漁師』アーシュラ・K・ル=グィン
パラダイス』マイク・レズニック
アインシュタイン交点』サミュエル・R・ディレイニー
20世紀SF・6』1990年代SF傑作選
セックス・スフィア』ルーディ・ラッカー

 
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2002年05月08日
サミュエル・R・ディレイニー(伊藤典夫/訳)
『ノヴァ』ハヤカワ文庫SF

 プレアデス連邦の一大勢力フォン・レイ家と、ソル(地球)を中心とするドレイコ領を牛耳るレッド家は対立していた。
 フォン・レイ家の跡継ぎロークは、仇敵プリンス・レッドとその一族を破滅に追いやるために、超エネルギー物質イリュリオンの採取にのりだす。イリュリオンは輸送コストを左右するのだが、どこにでもある物質ではない。
 ロークは、大爆発を起こした恒星の中心からイリュリオンをすくい取るため、貨物船の乗組員を募るが……。

 物語は、単純明快。
 ロークがプリンスと対立し、イリュリオンを取りに行く……ただそれだけ。しかししかし、ちりばめられたエッセンスの濃厚なことといったら!
 信念のある人間って、いい。


 
 
 
 
2002年05月09日
小川 隆・山岸真/編
(浅倉久志/内田昌之/山岸 真/大森 望/宮脇孝雄/中村 融/黒丸 尚/小川 隆/小尾芙佐/冬川 亘/中原尚哉/小野田和子/酒井昭伸/浅井 修/訳)
『80年代SF傑作選』
上下巻・ハヤカワ文庫SF

 上巻の収録作品は……

ウィリアム・ギブスン「ニュー・ローズ・ホテル」
ポール・ディ=フィリポ「スキンツイスター」
キム・スタンリー・ロビンスン「石の卵」
コニー・ウィリス「わが愛しき娘たちよ」
ジャック・ダン「ブラインド・シェミイ」
ロジャー・ゼラズニイ「北斎の富嶽二十四景」
ハワード・ウォルドロップ「みっともないニワトリ」
ルーシャス・シェパード「竜のグリオールに絵を描いた男」
アレン・M・スティール「マース・ホテルから生中継で」
ジョージ・アレック・エフィンジャー「シュレーディンガーの子猫」
エレン・ダトロウ「回想のサイバーパンク」

 下巻の収録作品は……

マイクル・ビショップ「胎動」
ジョアンナ・ラス「祈り」
ブルース・スターリング「間諜」
ルーディ・ラッカー&マーク・レイドロー
「確立パイプライン」
ジョイムズ・P・プレイロック「ペーパー・ドラゴン」
オクテイヴィア・バトラー「血をわけた子供」
ローレンス・ワット=エヴァンズ
「ぼくがハリーズ・バーガー・ショップをやめたいきさつ」
グレッグ・ベア「鏖戦」
イアン・マクドナルド
「帝国の夢 −地上管制室よりトム少佐へ−」
オースン・スコット・カード
「私的80年代SF論」(エッセイ)

 ワット=エヴァンズの作品が個人的に気に入ってます。
 町外れのハンバーガー・ショップでバイトを始めた一少年の物語。淡々とした語り口が、心地いい。

【追記】2008年に再読した『80年代SF傑作選』の記録に、各作品の内容紹介があります。


 
 
 
 
2002年05月18日
F・ポール・ウィルスン(浅倉久志/訳)
『ホログラム街の女』
ハヤカワ文庫SF

 ハードボイルドSF。
 人権のないクローン娼婦から仕事を依頼された、私立探偵のシグ・ドライアー。依頼とは、結婚を約束したまま失踪した恋人捜し。
 クローン嫌いのシグは断りかけるが、クローン美女に渡された金貨の威力は絶大だった。シグは早速調査を開始するが、失踪した男のマンションに行ってみると家捜しされたあと。しかも、柄の悪い男たちに追いかけられ、暗黒街の女親分のもとに連れ出されてしまった……。

 少々物足りない一冊。
 三つの中篇を長篇にくっつけたものなので、奥深さが薄まってしまったような……


 
 
 
 
2002年05月19日
アイザック・アシモフ(平井イサク/訳)
『宇宙気流』ハヤカワ文庫SF

 広い宇宙で唯一、高級繊維“カート”を産出する惑星フロリナは、サーク人たちに完全支配されていた。そのフロリナが消滅の危機にさらされていることを知った空間分析家は、警告のために惑星サークに降り立つ。
 しかし、何者かに妨害され、記憶を消されてしまった。白痴となった空間分析家はフロリナで解放され、ほぼ一年後に記憶のわずかな断片が甦る。
 空間分析家の予測は、ただの妄想なのか?
 彼の記憶を消した犯人はいったい誰なのか?

 空間分析家をめぐるサスペンス、と思いきや、実は政治小説。富を搾取しているサーク人貴族と、故郷をどうにかしようとあがくフロリナ人と、フロリナを支配下に置こうと暗躍するトランター帝国と、純粋に人々を救いたい科学者が入り乱れて、複雑に物語を織り込んでいきます。
 複雑だったものが見事に解きほぐされていくのは読んでて気持ちいいものの、ちょっとすんなりいきすぎの感も否めない……


 
 
 
 
2002年05月20日
1980年代SF傑作選
(中村 融、山岸真/編)
ウィリアム・ギブスン/ブルース・スターリング/ルーディ・ラッカー/オースン・スコット・カード/グレッグ・ベア/スタン・ドライヤー/ポール・ディ・フィリポ/マーク・スティーグラー/コニー・ウィリス/ガードナー・ドゾワ/イアン・ワトスン/ジェフ・ライマン
(浅倉久志/小川 隆/大森 望/山岸 真/中原尚哉/中村 融/安野 玲/内田昌之/小野田和子/訳)
『20世紀SF・5』
河出文庫

 第5巻は、1980年代の作品を集めてあります。

ウィリアム・ギブスン「冬のマーケット」
ブルース・スターリング「美と崇高」
ルーディ・ラッカー「宇宙の恍惚」
オースン・スコット・カード「肥満園」
グレッグ・ベア「姉妹たち」
スタン・ドライヤー「ほうれん草の最期」
ポール・ディ・フィリポ「系統発生」
マーク・スティーグラー「やさしき誘惑」
コニー・ウィリス「リアルト・ホテルで」
ガードナー・ドゾワ「調停者」
イアン・ワトスン「世界の広さ」
ジェフ・ライマン「征たれざる国」

 ハヤカワの『80年代SF傑作選』より自分にはあっていたようです。共通の選者(山岸真)が絡んでいるのに、不思議なはなし。中でも、もっとも短いドライヤーの「ほうれん草の最期」が印象的でした。会話だけで成り立った物語で、パスワードの重要性が身にしみます。


 
 
 
 
2002年05月21日
アーシュラ・K・ル=グィン(小尾芙佐/佐藤高子/訳)
『内海の漁師』
ハヤカワ文庫SF

 ル・グィンの“発明”によるアンシブルを扱った連作を含んだ、短編集。

 《ハイニッシュ・ユニバース》もの。
 ル・グィンの作品はどれもこれも美しく、たまに、美しいが故にすべってしまうことがあります。それは単なる感性の違いなんですけど、読んだタイミングが合わなかったというだけで理解できないことがあるのは、とても哀しいことです。
 いずれまた、その美しさに酔う日がくるでしょう。


 
 
 
 
2002年05月24日
マイク・レズニック(内田昌之/訳)
『パラダイス −楽園と呼ばれた星−』ハヤカワ文庫SF

 ブリーンは卒論のために、かつて惑星ペポニのハンターだったハードウィクに取材する。そして、ハードウィクにひかれて伝記を書き、作家となった。
 ブリーンの取材過程をとおして、惑星ペポニの年代記があぶりだされていくのが本作品。

 淡々と進みます。
 でも、淡白ではない……。


 
 
 
 
2002年05月25日
サミュエル・R・ディレイニー(伊藤典夫/訳)
『アインシュタイン交点』
ハヤカワ文庫SF

 音楽を奏でることのできる山刀を持つロービーは、恋人フライザを失い、旅にでた。
“違っている”青年・ロービーの、探究物語。

 作中にも登場するオルフェウスの神話がベースになっているようで、実はそれだけではない複雑さ。(オルフェウスの神話とは、死者となった妻を冥界まで迎えにいき、しかし果たせなかったもの)
 当然のごとく、一気読みしてはいけない作品でした。
 簡単に言ってしまえば、難解。


 
 
 
 
2002年06月02日
1990年代SF傑作選
(中村 融、山岸真/編)
スティーヴン・バクスター/ロバート・J・ソウヤー/アレン・スティール/ナンシー・クレス/ジェフリー・A・ランディス/
グレッグ・イーガン/ウィリアム・ブラウニング・スペンサー/テリー・ビッスン/ダン・シモンズ/イアン・マクドナルド/ポール・J・マコーリイ
(中村 融/内田昌之/山岸 真/佐田千織/公手成幸/酒井昭伸/訳)
『20世紀SF・6』
河出文庫

 当シリーズの最終巻となる第6巻は、1990年代の作品を集めてあります。

スティーヴン・バクスター「軍用機」
ロバート・J・ソウヤー「爬虫類のごとく……」
アレン・スティール「マジンラ世紀末最終大決戦」
ナンシー・クレス「進化」
ジェフリー・A・ランディス「日の下を歩いて」
グレッグ・イーガン「しあわせの理由」
ウィリアム・ブラウニング・スペンサー「真夜中をダウンロード」
テリー・ビッスン「平ら山を越えて」
ダン・シモンズ「ケンタウルスの死」
イアン・マクドナルド「キリマンジャロへ」
ポール・J・マコーリイ「遺伝子戦争」

 やはり、個人的に好きな作家、ソウヤーの作品が記憶に残ります。
 過去に存在した生命に、人間の精神を重ねる時間転移が可能となった未来。ティラノサウルス・レックスに例えられた殺人犯が、死を控えたティラノサウルスに転移させられたが……。

 アンソロジーを読むと、苦手だった作家はやはりとっきにくく、好きな作家の作品は楽しく感じられます。


 
 
 
 
2002年06月04日
ルーディ・ラッカー(大森 望/訳)
『セックス・スフィア』
ハヤカワ文庫SF

 物理学者アルウィン・ビターは、ローマを旅行中、テロリスト集団に誘拐され、核爆弾をつくることを強要される。そんなアルウィンが監禁中に手に入れたのは、不思議な球体。それは、狂気に陥った物理学者が研究所から盗み出したハイパーマター(超物質)だった。

 ラッカーにしては読みやすい一冊。
 数学論理を専門とするセンセイでもあるラッカーらしく(?) 、科学的にはリアルかつ大局でぶっとんでますが、ポルノではありません。念のため。

 
 

 
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