《指輪物語》三部作の、第三部です。
ついに終わってしまって、感無量。
おもしろくないところ、つまらないところ、物足りないところ、いろいろありましたがそれにも増して、夢中になったところが方々に……。
今はただ、壮大な物語に黙するばかりです。
あまりいい評判のない吉田辰造が、財産と我が身を完璧に守らせるために造った倉からでてこない。やがて、警官たちの手によって倉はこじあけられ、辰造は死体となって発見された……。
映画化もされた『大誘拐』で有名な、天藤真の処女長篇です。よくある密室もの。
読みどころはトリックではなく、あくまで人間関係。容疑者たちが陽気になってしまうのもうなづけます。
鉄を食べる人間の物語。
SFなのか、シミュレーションなのか……。
正義(?)のために弱い立場の人間を犠牲にする大酋長に対して、主人公は、独白の中でそういう指摘をしつつなんら行動を起こさない……。これが書かれた社会背景によるものか、長さ制限があったのか。
いずれにしても、少々物足りない作品でした。
いろんな人が訳した短編集。
いろんな人が訳してるのにどれも暖かく感じられるのは、いずれの訳者もすばらしいからか、アシモフの書いたものがすばらしいからか……。
「投票資格」
選挙結果を予測する機械が発達した世界の物語。
たった一人の投票者から結果が決まってしまうのだけど、そのたった一人は機械によって選ばれる……。フィリップ・K・ディックの『偶然世界』を彷佛とさせられました。
「死せる過去」
“過去”を覗くことができる機械をめぐる研究者の物語。
1950年代に書かれただけあって、機械がちょこっと、古めかしい。でも、陳腐さもなくおもしろいのは、アシモフたるゆえんか???
万年最下位のプロ野球球団をリーグ優勝に導いた監督が失踪した。折しも日本シリーズ開幕直前。監督の片腕だったコーチが、友人の新聞記者に協力を依頼し、新聞記者は捜索に乗り出す……。
短いながらもきちんと練られた展開で、安心して楽しめます。阪神ファンとしては放っておけない一冊です。
短編集。
「親友記」
田舎からでてきた同級生が、電車の中で偶然再会して、親友付き合いが始まって……という小話。ホロリときましたよ。親友ってこういうものかもねぇ。
「犯罪講師」
犯罪師Xなる人物が自分の行った誘拐事件を題材に、犯罪者たちに講議する小話。わずか22ページの作品ですが、面白みがあり、なおかつ引き締まった逸品でした。
「誓いの週末」
中学生向け雑誌に連載されたジュブナイルです。ジュブナイルって、読みやすい反面ついていきにくい面も……。鈍いワタクシには、犯人の目星が全然つかなかったんですけどね。
超能力者もの。
ソ連首相暗殺計画の阻止を命じられたヨシオだったが、思いもかけない攻撃を受けることに……。
週間漫画サンデーに連載されていた作品で、細切れなので、ちょっと物足りない。そして、小松左京としては毎度のこととはいえ、いまいち納得できないラスト。
2002年03月14日
アイザック・アシモフ(岡部宏之/訳)
『ファウンデーションの彼方へ』上下巻
ハヤカワ文庫SF
《銀河帝国興亡史》第四巻
第ニ銀河帝国への道を確実に進む第一ファウンデーションだったが、議員トレヴィスは、打ち負かしたはずの第二ファウンデーションの影を感じていた。第一ファウンデーション市長は、トレヴィスを追放するという形で人類発祥の星らしい“地球”をさがしている考古学者ペロラットと共に外宇宙へと送りだす。
それは第ニファウンデーションを捜すためだったが、次第に別の勢力の存在が浮き彫りになっていく……。
少々肩透かし。
進化した人類は、多くの超感覚者(エスパー)を生み出した。超感覚者たちが人々の心を自在に透視するため、犯罪を計画することさえ、もはや不可能!
しかし、一大産業王国の樹立を目論むベン・ライクは、宿命のライバル、ド・コートニー・カルテルの社長殺害を企て、実行する。
かくして、警察本部の第一級超感覚者、リンカン・パウエルとライクの戦いが始まった。
切れ味のある語り口が、とにかく粋。
ベスターの著作物は、別の訳者のものも読んだことがありますが、やはりこれは原作のもつ力でしょう。その魅力を損なわせなかった訳者も、見事と思います。
しばし放心。
「禁止された本を焼き捨てる役場」に務めるモンターグの物語。
本には無意味なことしか書かれていないのか?
静かで、力強い。
とても易しいのに、難しい。
名作と呼ばれる由縁が垣間見られた気がしました。