書的独話

 
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2025年03月10日
失われた都市
 

 19世紀。
 西洋人は冒険物語に飢えていた。
 そんなこともあり、フランスの探検家アンリ・ムーオが主張した「失われた都市」を発見したという物語は歓迎され、旅行記が人気となった。
 なんでも、絵に描いたような不思議な世界で、何世紀もの間誰も見たことがなかったという。その遺跡は、古代エジプトにも匹敵するとか。

 ムーオが「失われた都市」と呼んだのは、古都アンコール。
 失われていたなどという主張は、捏造だった。

 というわけで、こんな本を読んでみました。

アナリー・ニューイッツ
『人類史にかがやく古代都市はなぜ消滅したのか チャタルヒュユク、ポンペイ、アンコール、カホキア』

 滅び去った四つの都市が教えてくれる、1000年後のわたしたち いまから1万年近く前に築かれた人類史上最初期の都市、火砕流の犠牲になったローマの華やかな都市、運河や灌漑設備によって繁栄しジャングルに消えた王国の首都、11世紀には当時のパリよりも多くの人口を擁した北米の大都市。いまはなき四つの都市に焦点をあてて、都市から人類の歴史を見つめなおす。考古学の最新の成果から繁栄と消滅を繰りかえす都市の謎をときあかし、これまであまり触れられてこなかった奴隷、労働者、女性、移民といった要素にもふれながら描き出される、あたらしい人類史。
(Amazonより)

 著者のニューイッツは、科学ジャーナリスト。
 とりあげたのは、地域も時代もバラバラな4つの都市、チャタルヒュユク、ポンペイ、アンコール、カホキア。

〈チャタルヒュユク〉
 紀元前7000年(新石器時代)ごろ、トルコ。
 人類は、遊牧民としての暮らしから農耕生活に移行しつつあります。集落はありました。とはいえ、その規模が200人をうわまわることはなく……。
 そんな地域に誕生したのが、相互につながった広大な住居群チャタルヒュユク。道路がない都市でした。
 世界人口が1000万人という時代にあって、5000人〜2万人の間を1000年単位で推移していたと考えられています。

〈ポンペイ〉
 紀元1世紀(ローマ時代)、イタリア南海岸。
 火山灰の下に埋もれていたのは、よく知られてますよね。その前にも大地震に見舞われて復興していたんだそうです。火山性の地震でしょうか。
 ヴェスヴィオ山の噴火は、79年。
 埋もれておしまいではなく、崩壊後には、古代史上最大の救援活動が行われていたとか。残念ながら修復不可能で、諦めざるをえなかったようですが。
 逃げのびた人々が別の町で生活再建したことも知ることができました。

〈アンコール〉
 9〜13世紀(クメール王国時代)、カンボジア。
 最盛期には100万人近い人口を擁していたという巨大都市。放棄はされていたのですが忘れられていたわけではなく、アンリ・ムーオが見つけたときにも、僧侶が暮らしていたんだとか。
 放棄にいたった理由は、1世紀にわたる気候危機もさることながら、おおぜいの労働者を指揮することができなくなったため。都市の生命線が運河なのに維持管理できなくなってしまったんです。
 それにしても、渇水対策として川からより多くの水を引き込もうとしたところに今度は大洪水とは。不運すぎます。

〈カホキア〉
 11世紀〜14世紀(ミシシッピ文化期)、アメリカ。
 ミシシッピ川沿いイーストセントルイスにあった、アメリカ先住民の大都市。1050年のピーク時には人口3万人を擁し、当時の北米最大だったとか。
 実は、分かっていることは多くなく、当時の名前も伝わってません。この地域に住んでいたカホキア族にちなんで、とりあえず「カホキア」と呼んでいたのが定着しているだけ。
 4都市の中ではもっとも新しいのに。文字がなかったためのようです。

 本書『人類史にかがやく古代都市はなぜ消滅したのか』では、これらの4都市を順にめぐって、なぜ消滅したのかさぐっていきます。
 専門家たちは「崩壊」という言い方はしません。都市は、数世紀にわたっていくつかの段階をダイナミックに行き来するもの。ただ「変遷」していくものだと考えられてます。
 そこに暮らしていた人たちが、移住先で文化を伝え、受け継がれていくのだから。

 ちょっと残念だったのは、視覚に訴えるものがないんです。
 まったくひとつも。

 こういう本って「図解とか、地図とか、現在の写真がちりばめられている」そういうイメージがありました。
 本書は文字のみです。めずらしいなって思っていたら、どうも原書はそうではないようです。
 謝辞で「随所に見られる豪華な地図」 を作成してくれたことへのお礼が記されてました。参照したかったな、豪華な地図。権利関係が別になってて取れなかったとか?
 想像しながらの読書になりました。それでも充分、楽しめましたが。

 ところで、ニューイッツは小説も書いてます。
 翻訳で、時間旅行ものを読むことができます。

アナリー・ニューイッツ
タイムラインの殺人者

 数億年前から存在する5基の〈マシン〉により、時間旅行が可能になっている世界。2022年の時間旅行者テスは、歴史の修正を試みる任務のため訪れた30年前のコンサート会場で、〈マシン〉閉鎖をもくろむ男たちを発見する。一方、1992年の女子高校生ベスは、同じコンサートからの帰り道に殺人の共犯者となってしまうことに。ふたりの人生が交差していくなか、タイムライン編集戦争が勃発するが――新世代タイムトラベルSF
(Amazonより)

 『人類史にかがやく古代都市はなぜ消滅したのか』を読んで、それでああいう話になったのか、となんだか妙に納得。 


 

 
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