

2024年は、毎月、児童文学を読んでいました。
児童文学ばかりにならないよう、セープしてたくらい。なんといっても読みやすいですから。
そんなわけで、ベスト本にもばっちり入ってきてます。
子ども向けだなんて言って、あなどってはいけませんね。
そんなこんなの2024年のイチオシは、こちら。
アンソニー・ドーア
『すべての見えない光』
1944年8月。ドイツに占領されたフランスの城壁町サン・マロに連合軍の爆撃機が迫る。16歳のマリー=ロールは目が見えないために、退避をよびかけるビラを手にしながら読むことができない。一方、要塞として接収されたホテルでは、18歳のドイツ人技術兵ヴェルナーが避難した地下室に閉じ込められてしまう。
少年少女と、至宝〈炎の海〉をめぐる物語。
昨年のローラン・ビネ『HHhH プラハ、1942年』に続き、今年も第二次世界大戦が舞台のものになりました。実は、断章を積みあげていくスタイルも同じ。
かなり迷いました。2年連続で似た感じのものでいいのかって。
物語としてはまったく違う。それに、これを差し置いて他をイチオシできるかと問われれば、それはできない。
それならばと、イチオシにした次第です。
物語がはじまるのは、1944年。サン・マロに暮らしている盲目のマリー=ロール・ルブランは、たったひとり。アメリカ軍爆撃機の攻撃がはじまります。
マリー=ロールと同じように、読者も状況が分からない。
その日から1934年に遡り、物語は、パリに暮らし光を失いつつあるマリー=ロールに移ります。母は亡く、父は博物館つとめ。〈炎の海〉と呼ばれる宝石の逸話を耳にします。
それって、サン・マロでマリー=ロールが手にしたやつ?
はっきり分かりやすく書かれたりはしません。そうかもしれないし、似た別のものかもしれない。
その不確かさが、いい。
サン・マロで18歳のドイツ人二等兵だったヴェルナー・ペニヒの物語もはじまります。
サン・マロでふたりは出会うんだろうな、と思うけれど、まだ分かりません。もしかすると、すれ違ったまま終わるかもしれない。そんな宙ぶらりんの状態も、いい。
断章で、少しずつ語られていきます。ふたりの物語と、ときどき〈炎の海〉の行方を追うドイツ人の逸話も挟まります。
少しずつなので切り替えていかなきゃならなくて、読むのが嫌になるかもしれません。やきもきしっぱなしで、合わない人もいるかもしれません。
誰かのイチオシって、そういうものですよね。
アンソニー・ドーア以外のベストは、こちら。
読了順です。
アーサー・コナン・ドイル
『失われた世界』
動物学者のチャレンジャー教授は、世間から嘲笑を浴びている。だが、チャレンジャー教授から直接説明を受けたマローンは、その話を信じた。南米アマゾンの奥地、断崖絶壁に隔たれた台地で恐竜が生き延びているというのだ。
チャレンジャー教授の主張を検証するため、比較解剖学のサマリー氏が現地に赴くことになり、マローンも同行するが……。
発表されたのは、1912年。
恐竜絶滅の理由に隕石衝突説がでてくるよりも以前の作なので、そこは考慮しなきゃなりません。だとしても、100年以上前に書かれたというのが、かえって新鮮でした。現代人が同じ時代を書いても、こうはならないだろうな、というところが。
すっきりまとまった結末が好みでした。
ドナ・バーバ・ヒグエラ
『最後の語り部』
2016年。地球に彗星が衝突することが確実となり、選ばれた人々は宇宙へと逃れていった。380年の旅の間、人々は長い長い眠りにつく。
ペトラは、新しい世界で語り部になろうと決心する。ところがペトラが目覚めると、単一社会を理想とするコレクティブが宇宙船を支配していた。同時に目覚めた子どもたちは洗脳され、記憶がない。
ペトラは、コレクティブのために働くふりをしながら、子どもたちに物語を聞かせるが……。
児童文学です。
それゆえか設定がちょっと甘めになっているところがあります。でも、展開は甘くないです。過酷。
安直に、物語を聞けば救われますよ、なんてしなかったのがポイント。物語を聞いたからって現状がよくなったりはしない。ただ、物語によって人間性が救われて、救われた人が動いて、それでいい結果につながっていくことはある。
そういう物語でした。
マルク・ロジェ
『グレゴワールと老書店主』
落ちこぼれのグレゴワールが母のコネで就職できたのは、老人介護施設だった。厨房で働いて1か月。グレゴワールは、ムッシュ・ピキエと出会う。
パーキンソン病と緑内障を患うムッシュ・ピキエは、読書の喜びを語り、たくさんの本に囲まれて生活するも本を読むことができない。
グレゴワールに読書の習慣はなかったが、熱い厨房の仕事を減らしたい思惑から、ムッシュ・ピキエに一日1時間の朗読を提案する。
グレゴワールの朗読は、ムッシュ・ピキエの手ほどきで評判になるが……。
軸になっているのは朗読です。
朗読って、ただ読めばいいってもんじゃないんだ、とムッシュ・ピキエに教えてもらいました。
ちなみに、ロジェはプロの朗読家だそうです。
老人介護のこととか、同性愛への偏見とか、いろいろ織り込まれてました。フランスの作家なので、それらはフランスの問題ですが、日本だって人ごとじゃないです。
笑ったり泣いたり、本っていいなと再確認。
ルイス・サッカー
『穴 HOLES』
スタンリー・イェルナッツのひいひいじいさんは、子々孫々にいたるまで呪いをかけられたんだそうな。そんなの誰も信じちゃいない。でも、イェルナッツ家の者は、まずい時にまずいところに居合わせてしまうのはたしか。
泥棒とまちがえられたスタンリーは、グリーン・レイク少年矯正キャンプ行くハメになってしまった。暑い最中、ひたすら穴掘りをさせられる少年たち。
スタンリーは、穴堀りに人格形成ではない目的があることに気がつくが……。
これまた児童文学。
とにかく軽快。リズミカル。泥棒とまちがえられるなんて悲惨な状況だし、悲壮感はあるけれど、地文の明るい調子に助けられました。
いろんなエピソードがでてきます。
呪いをかけられた、スタンリーのひいひいじいさんのこと。スタンリーのひいじいさんの乗った駅馬車を襲い、全財産をうばった無法者〈あなたにキッスのケイト・バーロウ〉のこと。
合間、合間で挿入されたエピソードの数々は、いろんなところでつながってます。わざわざつながりに言及しないのもいいです。読者を信頼してくれている気がします。
楽しい読書体験でした。
ベッキー・チェンバーズ
『銀河核へ』
さまざまな種族の乗る〈ウェイフェアラー〉は、銀河共同体の宙航路をつくるトンネル建造船。新たに銀河核を囲む領域を支配している一族が共同体の加盟を認められたため、トンネル貫通が必要になった。〈ウェイフェアラー〉が仕事を請け負うが……。
いろんな種族がいて、みんな仲良しというわけではなく、文句をいいながらも認めるところは認めて、なんとか折り合いつけながら仕事をする。
昔なつかしスペース・オペラを彷彿とさせながら今風という、それだけでうれしくなってしまいます。ちょっととっちらかってるところはあるにしても。
また読みたいと思わせられました。