

いろは歌のなかになく、五十音の一覧では枠外に記されている文字、それが
「ん」
存在としてはありきたり。でも、決して文頭に来ることのない言葉、それが
「ん」
そこに謎があったとは。
疑問に思うこともなく、当たり前に使ってました。謎だったと気づかされたのは、はっきり謎だと指摘する本に出会ったから。
山口謠司
『ん 日本語最後の謎に挑む』
日本語には大きな謎がある。母音でも子音でもなく、清音でも濁音でもない、単語としての意味を持たず、決して語頭には現れず、かつては存在しなかったという日本語「ん」。
「ん」とは一体何なのか?
「ん」はいつ誕生し、どんな影響を日本語に与えてきたのか?
空海、明覚、本居宣長、幸田露伴など碩学の研究と日本語の歴史から「ん」誕生のミステリーを解き明かす。
(見返し紹介文より/適宜改行)
山口氏によると、フランス人は返事で「んー」と返されるのが嫌いなんだそうで。イエスかノーかハッキリしてほしいし、考え中ならそういえばいいじゃん、と。生返事するときの、喉の奥の方から鼻に抜けるような「んー」という声を聞くと、不安になってしまうんだとか。
この「ん」って、そもそも何?
江戸時代の国学者、本居宣長は「ん」はなかったと主張する立場。上代の日本に濁音はなかったし「ん」もなかったって。
どうやら、あったようです。
文字としての「ん」はなかったけど、発音としてはあった。あったものの、どう表記すればいいのか検討もつかない状態。
なんとか苦心して「ん」を書き表そうとしていた努力の跡が、いろいろあるそうです。
そういったことを本書で知りました。
宗教絡みで、正確な言葉を発音する必要がでてきて。研究して考えて、少しずつ形になっていく。ふだん何気なく使っている「ん」には、深い深い歴史があったんですね。
ところで、日本語の謎に関して、もう一冊、気になっていた本がありました。
窪薗晴夫/編
『オノマトペの謎』
2017年に開催されたNINJALフォーラム「オノマトペの魅力と不思議」との連動企画としてまとめられたもの。
一般向けシンポジウムの発表に基づくもの5項目、オノマトペを別の観点から考察した3項目から構成されてます。
言語学、心理学、認知科学など、さまざまな観点からオノマトペの魅力と謎に迫る……とはいえ一般人向けなので、とっつきやすさがありました。
内容は、こんな感じ。
1、浜野祥子
「スクスク」と「クスクス」はどうして意味が違うの?
2、小野正弘
オノマトペの意味は変化するの?
3、竹田晃子
オノマトペにも方言があるの?
4、秋田喜美
外国語にもオノマトペはあるの?
5、岩崎典子
外国人は日本語のオノマトペを使えるの?
6、今井むつみ
オノマトペはことばの発達に役にたつの?
7、窪薗晴夫
どうして赤ちゃん言葉とオノマトペは似ているの?
8、坂本真樹
「モフモフ」はどうやって生まれたの?
国語学者の金田一晴彦氏によると、オノマトペは5種類
・擬音語…自然界の音(ざあざあ、ぱちぱち、等)
・擬声語…人間や動物の声(わんわん、げらげら、等)
・擬態語…無生物の状態(きらきら、さらっと、等)
・擬容語…生物の状態・様態(のろのろ、ふらりと、等)
・擬情語…人間の心理や感覚(いらいら、わくわく、等)
オノマトペって、そんなにいろいろあったんだ、と驚きました。こちらも、あまり意識したことはありませんでした。
一般向けというのがよかったです。背伸びして難しい本を読むにもためになりますが、一般人ですから、平易に書かれているのがありがたいです。
ところで『ん』にもオノマトペのことがサラッとでてきます。つっこんで語られたわけではなかったので、先に『オノマトペの謎』を読んでいて正解。言いたいことが響きました。