

デイヴィッド・グランのノンフィクション『ロスト・シティZ』を読んでリストに加えたとき、著作者が『絶海』と同じ人だと気がつきました。
『ロスト・シティZ』は、南米〈アマゾン〉に古代都市があると信じていた探検家の軌跡。7月の「失われた都市・Z」でどうぞ。
『絶海』では、嵐のために難破した英国海軍艦の乗組員たちが生還するドラマ。2月の「事実は小説よりも奇なり」でどうぞ。
どちらも、よく取材されてまとめられたいい本だと思ったので、それなら、他にもいい本を書いているのでは、と欲を出したら、ありました。
デイヴィッド・グラン
『花殺し月の殺人
インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』
1920年代、禁酒法時代のアメリカ南部オクラホマ州。先住民オセージ族が「花殺し月の頃」と呼ぶ五月に立て続けに起きた二件の殺人。それは、オセージ族と関係者二十数人が相次いで不審死を遂げる連続怪死事件の幕開けに過ぎなかった――。
私立探偵や地元当局が決定的な容疑者を絞れず手をこまねくなか、のちのFBI長官J・エドガー・フーヴァーは、特別捜査官トム・ホワイトに命じて大がかりな捜査を始めるが、解明は困難を極める。 部族の土地から出る石油の受益権のおかげで巨額の富を保有するようになったオセージ族を取り巻く、石油利権と人種差別が絡みあった巨大な陰謀の真相とは? 米国史の最暗部に迫り、ニューヨーク・タイムズ他主要メディアで絶賛された犯罪ノンフィクション。『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』として刊行された作品を文庫化・改題。
(文庫版「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン オセージ族連続怪死事件とFBIの誕生」解説文)
オセージ族の先祖伝来の土地は数百万エーカーありました。ところが白人たちに手放すよう強いられて、カンザス州南東部の約80〜200キロメートルの区域に追いやられてしまいます。
政府からは領有権を保障されていました。とはいうものの反古にされる可能性が高く、開拓者たちが迫ってきます。踏みとどまろうものなら命を取られてしまうような勢いでした。
1870年代初頭。
オセージ族は、1エーカー当たり70セントでチェロキー族の土地150万エーカーを購入します。耕作には不向きな痩せこけた土地でした。でも、それならぱ開拓者たちが押し寄せることもない、と思われました。
オセージ族は集団で移住をはじめます。このときオセージ族は、3000名にまで減っていました。
1904年。
土地割当の条件をめぐってオセージ族は政府役人と交渉します。説得に成功し、土地は部族員だけで分割することになりました。白人にも売却は可能ですが、保留地への入植者の侵入は防げました。
このときの最大の成果は、地下に埋蔵されているものはオセージ族が権利を有する、と決められたこと。
実は、地下に石油があったんです。
土地の地表面は、オセージ族でなくても買えます。ですが、鉱物資源の信託は部族で管理し、均等受益権が受け継がれるのは相続によってのみ。
オセージ族は、とても裕福な部族となりました。
その結果、どうなったか?
本書は三部構成。
第一部、1921年〜1925年
第二部、1925年〜1971年
第三部、2012年
主に3つの時代に分けて語られます。
殺人事件(第一部)があり、犯人は逮捕されました。ですが利権と癒着にがんじがらめ。証言できそうな人は死んだり、口をつぐんだりしてしまいます。
担当となったFBI捜査員が悪戦苦闘します(第二部)。
第二部終了までに、事件にはケリがつけられます。
そうして迎える第三部。
この事件には、さらにもうひとつの裏があったのだ。さらに巧妙で邪悪なだけでなく、もっとおぞましい陰謀が。FBIもこれまでまったく気づいていなかった陰謀が――。
デイヴィッド・グランは何を知ったのか。
ところで、FBIで思いだしたのですが、黎明期のFBIを扱った本をもう1冊読んでます。
デイヴィッド・ハワード 『詐欺師をはめろ 世界一チャーミングな犯罪者 vs.FBI』
こちらは侵入捜査について。
そういった容疑者を騙す手法についてノウハウのなかった時代。手探りで捜査していきます。
語られるのは、1976年7月〜1978年2月の出来事。『花殺し月の殺人』第二部のわずか5年後からはじまりますが、繋がりはないです。雰囲気もまるで違います。
2023年の「FBIの捜査官みたいに見える」でどうぞ。