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2011年の記録
目録
 
 
 
 
 
 6/現在地
 

 
このページの本たち
アゴールニンズ』ジョー・ウォルトン
リックの量子世界』デイヴィッド・アンブローズ
チャリオンの影』ロイス・マクマスター・ビジョルド
窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子
遙かなる地球の歌』アーサー・C・クラーク
 
地球の記憶』オースン・スコット・カード
イティハーサ』水樹和佳子
地球の呼び声』オースン・スコット・カード
消えた少年たち』オースン・スコット・カード
グランド・セントラル・アリーナ』ライク・E・スプアー

 
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2011年09月17日
ジョー・ウォルトン(和爾桃子/訳)
『アゴールニンズ』早川書房
(文庫化時のタイトル
『ドラゴンがいっぱい! アゴールニン家の遺産相続奮闘記』)

 よきドラゴン、ボン・アゴールニン啖爵(だんしゃく)が、ついに臨終のときを迎えようとしていた。
 ボンの子竜たちは五人。
 長女のベレンドはデヴラク士爵に嫁ぎ、安泰。長男のペンは地区牧師としての地位を得ている。次男のエイヴァンは都で職を得て、これから上昇していこうとしているところ。心配なのは歳若い乙女ヘイナーとセレンドラだが、デヴラク士爵とペンとかそれぞれ面倒をみる手はずが整っている。
 ボンは亡くなる直前、ペンに告解を求めた。教会にとって告解は、異端な人間どものやること。ペンはたじろぐが、ボンの語った懺悔に衝撃を受け、赦しを与えてしまう。
 ボンの財産は、若いものたちで分けられることになっていた。そのことは誰もが理解していたが、ボンが亡くなり、その遺骸を分けるときになって行き違いが生じてしまう。
 ドラゴンは遺骸を食らうことで、力と身体の大きさを受け継ぐことができる。若いドラゴンにとって父の遺骸はまたとない大チャンス。ところがデヴラク士爵は、遺骸と財産は別物として多くの部位を奪ってしまったのだ。
 ボンの懺悔した内容に照らせば、自身の身体も財産と考えていたのは明らか。しかし、ペンは禁じられた告解について黙秘し、うやむやに終わらせようとする。
 一方のエイヴァンは、デヴラク士爵を相手に裁判を起こすが……。

 世界幻想文学大賞受賞
 ドラゴンたちが、ときに人間くさく、ときにドラゴンらしく、活躍します。裁判沙汰はひとつの柱ですが、ヘイナーとセレンドラの恋愛模様やドラゴン社会の有り様に力が注がれているように感じられました。
 いろんなエピソードが結末でまとまって、すっきり気持ちよく読めます。が、啖爵だの甲爵だの、表記にこだわった一方でドラゴンを数えるときに“五人”としてしまうなど、あと一歩感も残りました。


 
 
 
 
2011年09月18日
デイヴィッド・アンブローズ (渡辺庸子/訳)
『リックの量子世界』創元SF文庫

 リチャード・ハミルトンは順風満帆な日々を送っていた。
 出版社の社長としてほどよい暮らしが保て、相性のいい妻とかわいい息子、それに大親友がいる。大親友のハロルドは、顧問弁護士としてリチャードを助けてもくれる。
 ある日リチャードは重要な商談の席で、不可思議な感覚に見舞われた。
 妻のアンに災難がふりかかろうとしているのが分かったのだ。
 リチャードにとってその日は、朝からついておらず、不安は増すばかり。居ても立ってもいられず、商談を抜け出してアンの無事を確認しようとする。
 ようやくアンを探し当てたリチャードだったが、時すでに遅く、アンは交通事故に巻き込まれて瀕死の重傷。リチャードの見守る目の前で息を引き取った。
 哀しみにくれるリチャードは、なにかがおかしいことに気がつく。
 どういうわけだか、事故に遭遇したのは自分で、現場にかけつけたのではなく、事故に巻き込まれたことになっていたのだ。
 間もなくリチャードは、自身が不動産開発会社の経営者であることを知る。アンとは結婚しているが、子どもはいない。ハロルドは弁護士だが、大親友というわけではないらしい。
 戸惑い、精神病と診断されてしまったリチャードは、なんとかして元の世界に帰ろうとするが……。

 とっかかりは、平行宇宙。
 リチャードは精神のみ世界を飛び越えましたが、飛んだ先の、不動産開発会社のリチャードは健在で、出版会社のリチャードが頭の中に巣くう形になってます。ひとつの身体にふたつの精神、というわけです。
 リチャードが光明を見いだしたのが、精神科医エマ・トッドによる催眠療法。一度は入院させられたリチャードですが、周囲を丸め込んで退院すると、自分の世界に帰るためにエマ・トッドに協力を求めます。

 元々リチャードがいた世界は、ケネディ大統領が暗殺されていない世界。リチャードは、富豪ではないものの、かなり理想的な生活をしていました。帰りたくなるのは分かりますが、あまりに理想的すぎて夢の中にいるようでした。
 一応は平行宇宙ものなのですが、少し違う方向に展開していきます。歴史の分岐点だの、ふたりのリチャードの差異の原因だの、そちら方面に気が行ってしまうと、物足りないかもしれないです。


 
 
 
 
2011年10月09日
ロイス・マクマスター・ビジョルド(鍛冶靖子/訳)
『チャリオンの影』上下巻/創元推理文庫

 チャリオンは国主オリコが治める五神教の国。
 ルーペ・ディ・カザリルは、かつてチャリオンの荘侯だった。敵国ロクナルの戦争捕虜となったのが3年前のこと。ガレー船の奴隷として売られ、運良く解放されたものの重傷を負い、何もかも失ってしまった。
 無一文のカザリルが頼ったのは、ヴァレンダに暮らすバオシア藩太后だった。藩侯の小姓としてかわいがられた時期があり、故郷のように思われたのだ。
 そのころヴァレンダには、バオシア藩太后の娘イスタ国太后と、ふたりの孫たち、イセーレとテイデスが滞在していた。
 カザリルは、国姫イセーレの教育係兼家令を頼まれる。イセーレは利発なものの活発すぎて、女教師たちはお手上げ状態だったのだ。
 間もなくイセーレとテイデスに、カルデゴスの宮廷に出仕する命が下された。ふたりの異母兄オリコ国主は、ついに世継ぎを諦めたらしい。
 カザリルはイセーレに付き従ってカルデゴスへと向かうが、宮廷で権力を握っているのはジロナル宰相とその弟ドンド。ドンドこそ、カザリルが奴隷として売られるに至った元凶だった。
 イセーレもドンドの素地を見抜くが、国主オリコは、イセーレとドンドの婚約を決めてしまう。式は三日後。イセーレの嘆き悲しむさまにカザリルは、ドンド殺害を決意するが……。

 《五神教》シリーズ三部作の一作目(二作目は『影の棲む城』)。
 ロクナルの黄金将軍との激戦があったのは、先々代のフォンサ国主のころ。フォンサ国主は己の命とひきかえに黄金将軍を葬り去りますが、子孫たちに呪詛を残す結果となってしまいます。
 呪詛はチャリオン王家に暗い影を落としており、カザリルも関わるようになっていきます。
 物語の中では1年ちょっとの時間しか流れていないのですが、分厚い過去がある分、それ以上の月日を感じさせました。人々の生活と密接につながっている信仰や、近隣諸国との関係などなど、とにかく濃厚です。


 
 
 
 
2011年10月14日
黒柳徹子
『窓ぎわのトットちゃん』講談社

 トットちゃんは、小学一年生で学校を退学になってしまった。好奇心旺盛で、あまりに自由奔放すぎたために。
 トットちゃんのママは代わりの小学校を捜し、たどりついたのが自由が丘の「トモエ学園」だった。
 トモエ学園は、全校生徒50人ほどの小さい学校。退学の事実を知らないトットちゃんは、電車でできている校舎に大興奮。校長先生のことが大好きになり、個性豊かなクラスメイトと共にのびのびとした日々を送るが……。

 女優でユニセフ親善大使、黒柳徹子の自伝。
 小学一年生で転入し、楽しい日々を送るトットちゃん。戦争がせまり、暗い影を落とします。
 基本的にノンフィクションですが、後から聞いた話や、大人になってから考察したのだろう、ということも織り込まれてます。そういう意味では、脚色された部分もある、と思います。
 時代の流れは別として、全体としての定まったものはなく、短いエピソードを積み重ねることで、本としてまとまってます。なぜこのネタを入れたのか、不思議に思う章もあるのですが……。
 子どもときちんと向き合う校長先生の存在とか、背景に戦争が入ってくるなど、いろんな読み方ができると思います。著者自身はなにかを主張したり提案したりしているわけではなく、読者がそれぞれに考える本なのだと思いました。
 だからこそ、戦後最大のベストセラーであり続けているのでしょうね。


 
 
 
 

2011年10月15日
アーサー・C・クラーク (山高 昭/訳)
『遙かなる地球の歌』ハヤカワ文庫SF1135

 21世紀初頭、人類は太陽系に終りが近づいていることを知った。
 とはいえ、太陽が爆発するまで、まだ1000年以上の時間が残されている。はじめは悠長にかまえていた人類だったが、次第に当事者として自覚し、播種宇宙船を宇宙へと送り出し始めた。
 惑星サラッサは、こうして誕生した人類の末裔たちの星。惑星表面のほとんどを水に覆われているサラッサでは、厳格な人口規制が敷かれ、人々は新たな社会制度を築き上げている。
 サラッサの入植がはじまって700年。
 人々は自らの出自を忘れることはなかったが、壊れた宇宙アンテナを修理することもなく、日々を満喫していた。
 そんなサラッサに、予期せぬ客が訪れる。
 地球人類はついに人工冬眠船を開発し、恒星船マゼラン号は太陽が爆発する寸前に地球を旅立ったのだ。
 マゼラン号の目的地は、サラッサよりさらに75光年先にある惑星セーガンII。彼らがサラッサに立ちよったのは、宇宙船の防御壁とする氷を求めてのこと。
 マゼラン号のサーダー・ベイ船長はサラッサの大統領に、協力を依頼する。期間はおよそ2年。双方の交流が始まるが……。

 短編「遙かなる地球の歌」(『天の向こう側』収録)のアイデアを踏襲した、まったく別の作品。
 中心人物となるのは、副機関長のローレン・ローレンスンと、改革運動の指導者だったモーセ・カルドア、サラッサ人で記録保管所を担当する家系のミリッサと、その弟クマール。
 クラークらしく、地味に、あっさりと、ときに美しく、淡々と物語は展開していきます。地に足がついた科学技術とか、神という概念がきれいに消去されているサラッサ社会とか、いろいろと興味深くはあるのですが、あっさりしすぎな気がして、少し物足りなかったです。あっさりしたところが、クラークのいいところなのですけどね。
 読むべき時期になったら、読み返したいです。


 
 
 
 
2011年10月16日
オースン・スコット・カード(友枝康子/訳)
『地球の記憶』ハヤカワ文庫SF1061

 《帰郷を待つ星》第一巻
 人類が惑星ハーモニーに入植して4000万年。
 軌道上にはマスター・コンピュータ〈オーヴァーソウル〉が鎮座し、人々が地球での失敗を繰り返すことのないように目を光らせていた。ところが、その機能が低下し、〈オーヴァーソウル〉はひとつの決断を下す。人間に助力を求めたのだ。
 古代都市バシリカは、女性が支配する国。〈オーヴァーソウル〉を崇め、得られるヴィジョンを重く受け止めてきた。
 バシリカの有力市民ラーズィヤーは、ウェトチック家のヴォーリャマークと婚姻関係にある。ふたりの子どもであるニャーファイは14歳になり、バシリカ近くの父の家で暮らすようになっていた。
 ある日ニャーファイは父ヴォーリャマークから、ヴィジョンの話を聞く。父が見たというヴィジョンを、ニャーファイは受け入れることができない。一方、バシリカで唯一の幻視者リューエットは、ヴィジョンが真性のものであると断言する。
 この時期バシリカは、〈男性の党〉のギャーバールーフィクスと、〈女性の党〉のロープティアートとの対立が激化していた。〈都市党〉のヴォーリャマークは、ギャーバールーフィクスから仲裁を頼まれる。
 そんな最中ニャーファイは、〈オーヴァーソウル〉から夢のお告げを受け取った。そのおかげで父ヴォーリャマークはギャーバールーフィクスの罠を回避し、一家は砂漠へと逃走するが……。

 モルモン教の聖典が下敷きになってます。
 父の得たヴィジョンに懐疑的だったニャーファイですが、さまざまな試みを経て、〈オーヴァーソウル〉と深くつながっていきます。そんなニャーファイを快く思っていないのが、長兄のエルイェマークです。
 ニャーファイとエルイェマークは異母兄弟の間柄。そして、ギャーバールーフィクスはエルイェマークの異父兄に当たります。
 バシリカの婚姻制度のおかげで、人間関係がこんがらがってます。とにかくそれを把握するのが一苦労。まさしく聖書な雰囲気といい、読む人を選びそうです。


 
 
 
 
2011年10月23日
水樹和佳子
『イティハーサ』全7巻/ハヤカワ文庫

 かつて〈目に見えぬ神々〉は、人々に知恵や御神宝を授けた。それも昔。
 〈目に見えぬ神々〉への信仰あつい部族の少年・鷹野(タカヤ)は、川で自ら拾い、妹として育てたトオコと共に幸せな日々を送っていた。ところが、平和だった村が何者かに滅ぼされてしまう。難を逃れたのは、たまたま村を離れていた鷹野とトオコ、そして、鷹野らが兄と慕う青比古だけだった。
 村を襲ったのは、銀角神・鬼幽の一派。外國(とっくに)で繰り広げられていた〈目に見える神々〉の戦いが、ついに、この島国にもやってきたのだ。
 鷹野、トオコ、青比古の3人は、正法神・律尊と行動を共にするようになる。律尊も〈目に見える神々〉のひとりだが、鬼幽とはちがい、善と平和を望んでいた。戎士をひきつれ、鬼幽らと対立しつつ旅をしているところだ。。
 あるとき一行は、〈目に見えぬ神々〉の古い知恵を受け継ぐ隠者の訪問を受けた。隠者は、トオコのしている紅玉に強い念を感じ、過去視を申し出る。
 トオコは赤子のときに川に流されたため、己の素性を知らずにいた。過去視によると、トオコは巫女の血をひいているらしい。そして双子の姉妹がおり、その片割れは、鬼幽の元にいるという。
 鷹野は、トオコの双子の片割れを助けようとするが……。

 探求の物語。
 漫画で、恐ろしい場面も随所にありますが、美しい日本語が拝めます。
 何柱か登場する〈目に見える神々〉は、神力を持ち、さまざまなことを生まれながらに知っています。ところが、自身がなんのために存在しているのか、誰も知りません。
 律尊は〈目に見えぬ神々〉が答えを知っていると考えています。実は鬼幽も、〈目に見えぬ神々〉の謎を追い求めています。そして、自らの存在意義を考え実現させているのが、普善神・天音(あまね)
 天音は、不二と呼ばれる威容の霊山のたもとに桃源郷を建設しています。神々も人々も、引き寄せられていきますが……。
 ××とはなにか?
 という謎がぎっしり詰まってます。途中で連載打ち切られた(単行本で完結した)のが悔やまれます。

 ※トオコは本来漢字です。コを「示占」と一文字で表記して「透示占」なのですが、扱えない文字だったため、泣く泣くカタカナにて代用しました。


 
 
 
 
2011年10月29日
オースン・スコット・カード(友枝康子/訳)
『地球の呼び声』ハヤカワ文庫SF1130

 《帰郷を待つ星》第二巻(第一巻は『地球の記憶』)
 人類が惑星ハーモニーに入植して4000万年。
 軌道上にあって人々を導いていたマスター・コンピュータ〈オーヴァーソウル〉は、機能の低下を感じていた。何をすべきなのか分からず、ただただ、〈地球の管理者〉の助けを必要としていた。
 自身が地球に戻るため、〈オーヴァーソウル〉はコンタクト可能な人々を動かしていく……。
 ヴォズムザールノイ・ヴォズモズノ(ムウズー)は、ゴライーニ族の将軍。
 ムウズー自身はゴライーニ族ではなく、ゴライーニに滅ぼされたソチシヤ族だった。ムウズーは皇帝に忠誠を誓い、皇帝のために働きつづける。だが、心の中では反抗していた。
 ゴライーニの皇帝は、現身の神である。そして神は、ムウズーの心を操ろうとしている。ムウズーは神に反発し、神が行かせまいとする古代都市バシリカへと向かうが……。
 そのころ、砂漠に逃走していたヴォーリャマークの子どもたちは、〈オーヴァーソウル〉のヴィジョンを受け取っていた。子どもたちは、花嫁を得るためにバシリカを訪れねばならないらしい。
 ニャーファイはバシリカでお尋ね者となっており、兄弟は密かにバシリカに潜入するが……。

 前巻『地球の記憶』のラストでニャーファイが引き起こした事件の直後から、物語は始まります。
 一応、主役はニャーファイなのでしょうが、ムウズー将軍の存在感がとても大きいです。そして、これまで名前だけの存在だった、ニャーファイの異父姉妹セヴェットとキョーコールも登場します。
 この物語、五部作なのですが、翻訳されているのはこの巻まで。
それが少し残念です。


 
 
 
 

2011年11月05日
オースン・スコット・カード(小尾芙佐/訳)
『消えた少年たち』上下巻
ハヤカワ文庫SF1453〜1454

 ステップ・フレッチャーには、アタリ用ゲームソフト〈ハッカー・スナック〉を大ヒットさせた実績があった。そのおかげで羽振りはよかったが、それも昔のこと。アタリの衰退と不景気に見舞われてしまったのだ。
 ステップは、身重の妻と3人の子供たちを養うため、家族をひきつれてノースカロライナのストゥベンに移住した。
 ステップの就職先は、エイト・ビッツ社。仕事は、プログラミングではなく、マニュアルの作成。ステップは副社長のディッキー・ノーサンジャーと対立するが……。
 一方、ステップの長男スティーヴンは、ウエスタン・アレマニア小学校に転入したものの、友だちができずにいた。南部訛が理解できなかったため初日でつまづき、担任のミセス・ジョーンズにも疎外されてしまう日々。スティーヴンは空想の友だちと遊ぶようになってしまう。
 スティーヴンの窮状を知ったステップは、担任に直談判におよぶ。それによって問題は解決されたかに思えたが、空想の友だちが消えることはなかった。ステップは、精神科医に診せるべきだと主張する妻に渋々同意するが……。

 タイトルとなった〈消えた少年たち〉とは、ストゥベンで起こっている少年たちの連続失踪事件のこと。合間にちょこっと事件のことが話題にのぼるものの、ほとんど忘れられたまま物語は展開していきます。ところが終盤になって、それまでのいろいろな出来事が〈消えた少年たち〉と関係があったことが判明します。
 関係ない出来事も多いのですが……。
 再読ゆえ、読み進めながら、事件との関連性をあれこれ考えてしまいました。〈消えた少年たち〉を主軸にするなら、コレは必要なかったんじゃないか、とか。
 そういったことも含めて、ひとつの家族の物語なのだな、とは思います。


 
 
 
 
2011年11月06日
ライク・E・スプアー(金子 浩/訳)
『グランド・セントラル・アリーナ』
上下巻/ハヤカワ文庫SF1818〜1819

 アリアン・オースティンは、無制限宇宙障害物レースの腕利きパイロット。人類初の超光速宇宙船のパイロットに抜擢された。
 超光速航行はこれまで、無人調査船による実験を繰り返してきた。ところが、無人調査船が持ち帰るデータは不可解な点ばかり。ついに危険を覚悟の上で、生身の人間が観察するべく有人宇宙船が建造されたのだ。
 アリアンやサイモンら7名の各分野のエキスパートたちは、宇宙船〈聖杯(ホーリー・グレイル)〉に乗り込み、光速を越えた。その瞬間、予期せぬトラブルに見舞われてしまう。
 コンピュータはすべてシャットダウン。巨大な壁に激突しそうになった〈ホーリー・グレイル〉を救ったのは、アリアンのレースで鍛えあげられた腕前だった。
 〈ホーリー・グレイル〉が迷い込んだのは、太陽系のミニチュアの中。発電機が動かないため帰ることができなくなった一行は、謎の宇宙ドックへと向かう。充電できるなにかがあれば、と期待したのだが、扉の先に広がっていたのは、無数の異星種族が共存している〈アリーナ〉と呼ばれる大世界だった。
 クルーたちは、世界のルールを学んでいくが……。

 とてつもない巨大世界で、いろんな異星種族や信仰が登場します。ルールやガジェットもいろいろ。いろいろ詰め込んだためか、物語の方向がときどき変化するため、制御しきれなくなった感もありました。
 もしかすると……30分の連続アニメを、複数の監督さんが順繰りにこしらえていったらこんな感じになるのかもしれません。(最近のアニメ事情は存じませんが)

 
 

 
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