2009年05月14日
クローンたち
クローンたちがウヨウヨしている世界。
右を向いても、左を向いても、同じ姿形の人たちがいる世界。
そんな世界が舞台になっているのが、こちらの作品。
デイヴィッド・ブリン
『
グローリー・シーズン』
クローニングによる家母長制社会が築き上げられている惑星ストラトス。男女間にできた変異子として蔑まされている少女マイアは、氏族から追い出され、成功を夢見て旅立つが……。
人工的に作り上げられた、惑星ストラトスのクローン社会。優秀な遺伝子を残せるクローンは、一方で、環境変化や新種の病気には弱いもの。そんなわけで、クローンではない人たちのいる余地も残されました。
それが、変異子という存在。
自然なことが、変異だなんてね。
クローンではないのですが、同じ容姿の人たちが大量にでてくる世界もあります。そこでもやはり、似ていない人というのは浮いた存在。
ジョン・ヴァーリイ
「バービーはなぜ殺される」
(収録『
バービーはなぜ殺される』)
殺人事件が発生した。犯行はテレビカメラにとられていたが、そこは規格統一教徒の区域。バービーと呼ばれる彼らは全員が同じ外見をしており、見分けることは不可能。バッハ警部補は捜査に着手するが……。
クローンの方が変異、という世界もありますよ。もちろんのこと。
ジョーン・D・ヴィンジ
『
雪の女王』
惑星ティアマットでは〈夏〉と〈冬〉を単位に、民族が大移動を行い、治世も入れ替えられる。ところが、冬の女王アリエンロードは、科学技術を重視しない〈夏〉の人々に惑星を明け渡すことをよしとしなかった。秘密裏に、自身のクローンを用意するが……。
惑星ティアマットは、長寿の薬の原産地。そのおかげで150年たってもアリエンロードは若々しい姿。最近になって産まれたクローンのムーンとそっくり。ふたりを見比べた人々は一様にびっくりします。
いくら〈冬〉の人々が科学技術を信奉しているからといって、クローンは一般的に知られていなかったのです。実際のところアリエンロードも、ムーン以外にもクローンを用意していましたが、多くが失敗。無事に成長したのはムーンだけでした。
やはり自然の法則に反することは……というところでしょうか。
最後に、少々とぼけた自称クローン氏をご紹介。うまい話はなかなか転がってないようで。
コニー・ウィリス
「通販クローン」
(『
わが愛しき娘たちよ』収録)
雑誌で見た、クローンの通販広告。送料込みで12ドル95セントのクローンを申し込んでみたものの……。
なお、クローン関しては過去の書的独話でもチラリととりあげてあります。
2005年09月07日「
記録による不死世界」