書的独話

 
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02月01日 この猫を見よ
03月25日 猫のいる世界
04月07日 宇宙への切符
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2009年03月25日
猫のいる世界
 
 今回は、猫の出てくる物語の話。
 飼猫の行動を見ていて思うのは、猫って、すごくSF的。魅惑的な不思議がいっぱいなのです。
 
 たとえば、唐突に動きを止めて、なにもないところを凝視してみたり。
 これは、壁の中に潜むネズミなどを耳やひげを使って感じ取っているところなんだそう。我家にネズミはいないと思うのですけど、なにか、人間には聞こえないほどの小さな物音がしているのでしょうね。
 まるで、目には見えない何者かを追いかけているようです。
 
 もひとつたとえば、攻撃体勢に入ったときに振られるお尻。
 猫って攻撃に入るとき、身構えて、お尻を振って、両前足を浮かせて、えいやッと飛び出します。実際のところは、後ろ足を踏み替える動作がお尻を振っているように見える、ということのようです。
 まるで、今にも宇宙に飛び立たんスターバグ(宇宙小型艇@宇宙船レッド・ドワーフ号)のよう。
 
 と、まぁ、どんなにSF的でも、今日に見られるような猫が主役級に活躍するSFって、その実あんまり多くないような気がします。一方で、猫型異星人とか、猫のような姿形をした動物とか、猫を祖先として進化してきた種族など、猫を連想させるものたちは意外と見かけます。
 
 読み足りてないだけ?
 
 神林長平の《敵は海賊》シリーズ(第一巻『敵は海賊・海賊版』)で大活躍するのは、猫型異星人アプロ。
 広域宇宙警察の1級刑事で、刑事であるからには敵を尋問することも……。おしゃべりできるのです。それだけでなく、食い意地がはってて、脳天気。常識が通用しません。自分勝手なところは猫そっくり。異星人ですけどね。
 
 アンドレ・ノートン『ゼロ・ストーン』に出てくる謎の知的生命体イートが出生したのは猫から。
 あるとき不思議な石を飲んだ猫が生んだのが、イートでした。親は猫ですけれど、あくまで異星人。テレパシーを使って、あれやこれやと主人公に命令したりします。
 自分本位なところは、猫そのまま。見た目は猫でも、中味は猫じゃないんですけどね。
 ちなみに、アンドレ・ノートンの作品には猫が出てくることが多く、たくさんの猫を飼っているそう。
 
 デイヴィッド・ウェーバーの《紅の勇者オナー・ハリントン》シリーズ(第一巻『新艦長着任!』)で、主人公の相棒を務めるニミッツはモリネコ。六本足で、雑食で、公感能力に優れてます。セロリが大好物。
 さすがにしゃべりませんけど、以心伝心なときもあり、こちらの言い分をマジメに聞いてくれない猫とはちがいます。作者の願望が入っているのでしょうね。
 
 
 コードウェイナー・スミス『ノーストリリア』に出てくる猫娘ク・メルは、猫から作られた下級民。地球にやってきたノーストリリア人の主人公を助けてくれる、もてなし嬢です。人ではあるのですけど、猫の血が入ってます。
 すばやい身のこなしと、隙のなさと、しなやかさ。猫が人間になったら、こんな感じ?
 
 さて、コードウェイナー・スミスは猫好きで知られてまして、ク・メルは彼の飼猫の名前。また、猫をそのままの姿で題材にした作品もあります。
 『鼠と竜のゲーム』とか。

 平面航法が開発され、人類の宇宙進出は大きく前進した。ところが、平面航法はあらたな恐怖をももたらした。宇宙空間には、得体の知れない邪悪な生物が棲んでいたのだ。
 竜のように見えるそいつは、超高速で襲ってくる。当初はテレパシー能力を持つピンライターたちで対処していたが、それも限界。そうしてピンライターは、猫とパートナーを組むようになった。
 テレパス猫にとって、そいつは巨大な鼠。今日もふたりで宇宙船を守るべく戦うが……。

 
 では最後に〈猫SF〉というキーワードで必ず名前があがる、この作品。こちらの猫が、もっとも現代の猫に近いかもしれません。
 
ロバート・A・ハインライン
夏への扉
 ダニエルの相棒は、雄猫のピート。ピートは、家の中のどこかに夏への扉があると信じて疑わず、冬になると、すべての扉を確認させようとする。
 失意のどん底にいるダニエルもまた“夏への扉”を捜していたのだが……。

 

 
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