テリー・ブルックスって、今まで気にはなってたけど読んだことのなかった作家さん。今年になってようやく、《ランドオーヴァー》シリーズを読みました。たまたま、まとまって手に入る機会があったので、
このさい読んでみるか
と、思って。
それが、今年に入ってまもないころのこと。
今度見つけたのは、同氏の『フック』。
そのときに考えたのは、
昔、そういうタイトルの映画があったな……
という程度。スティーヴン・スピルバーグが監督で、ロビン・ウィリアムズ(ピーター・パン)とダスティン・ホフマン(フック船長)が対決する、あれ。けっきょく観てないんですけど。
本には映画のことは一言も書いてないので、関連書なのかどうかは判断つかず。とりあえず手に入れることにしました。ブルックスだし。
そうしたら、なんと、同じ日に、もう一冊見つけてしまったのです。同じタイトルの本を。映画のワンシーンらしい写真が使われているので、おそらくノベライズもの。
そちらの作者はギアリー・グラヴェルで、ジュニア・ノベルと銘打たれた『フック』でした。
同じタイトルの本を読み比べるのって、すごくそそられます。ジュニア・ノベルですけど、こちらも手に入れることにしました。
もちろん、読み始めるのはグラヴェルの方から。ノベライズで、しかも子供向け。子供(グラヴェル)から大人(ブルックス)へ、というわけで。
どういうお話かというと……
大人になって、自分がピーター・パンだということを忘れてしまったバニング氏は、ウェンディの孫娘と結婚しています。ふたりの子供に恵まれましたが、仕事に夢中で、ついつい家族の時間を疎かにしてしまう日々。そんなとき、子供たちがフック船長にさらわれてしまいます。
フック船長の目的は、自分の片手を奪ったピーター・パンに復讐すること。子供を使ってピーター・パンをネバーランドにおびき寄せる作戦です。ところが、目の前に現れたピーター・パンは、空を飛ぶこともできず、小切手を切ろうとする始末。フック船長はすっかり意気消沈してしまいます。
そんなフック船長に、バニング氏をネバーランドに連れてきた妖精ティンカー・ベルは約束します。3日で、バニング氏をピーター・パンに戻してみせる、と。
かくして、バニング氏のトレーニングが始まりますが……。
読んでいて、ノベライズであることを痛感しました。どことなく、読者は映画を観ているはずだから、描写は省略しますって雰囲気。観てないので、勘違いかもしれませんけど。
では、お次ぎは、本命のブルックス作品を。
と読み始めたら、冒頭のシーンが同じでした。ブルックスもノベライズだったのです。クレジットをよくよく見たら、入ってましたわ、Screenって。
ふたりの作家が同じ映画をノベライズするのって、あんまり聞いたことがなかったのですが、そういうこと、あるんですねぇ。
さて、共通の出だしは、ウェンディの曾孫(ピーター・パンの娘)マギーが、学芸会でウェンディ役を披露するシーンから。劇中、ピーター・パンと出会ったウェンディは名乗ります。
そこでちょっと気になることが!
グラヴェル版では
ウェンディ・モイラ・アンジェラ・ダーリング、ですが
ブルックス版では
ウェンディ・アンジェラ・モイラ・ダーリング、なのです。
どっちが正しいんだろう?
バリーの原作では、Wendy Moiragh Angela Darlingらしいですが、映画では?
というわけで、日本で公開されてから20年、ついに観てしまいましたよ。
いやぁ、ロビン・ウィリアムズが持ってる携帯電話が、でかい! 昔は、あんなに大きかったんだぁ。
で、肝心の名前ですが、字幕は、ウェンディ・モイラ・ダーリング。スペースの都合でしょうね、省略されてました。役者さんは、どうやら
ウェンディ・モイラ・アンジェラ・ダーリング
と言っているようです。
軍配は、グラヴェルに上がりました!
でも、内容は、ブルックスに軍配を上げたいです。ノベライズ臭さがなかったですし、ブルックスを読んだ後で映画を観ると、
随分、カットされちゃったんだなぁ……
って、地上波で観ている気分になります。脚本の上でだけ存在しているシーンがふんだんにあったのか、はたまた、ブルックスが大幅に書き足したのか。残念ながら真相は存じませんが、さすがです、ブルックス。