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2010年の記録
目録
 
 
 
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このページの本たち
死の蔵書』ジョン・ダニング
復讐への航路』エリザベス・ムーン
明日への誓い』エリザベス・ムーン
アルテミス・ファウル −妖精の身代金−』オーエン・コルファー
猫たちの聖夜』アキフ・ピリンチ
 
時の娘』ロマンティック時間SF傑作選
バーティミアス −プトレマイオスの門−』ジョナサン・ストラウド
恋人たち』フィリップ・ホセ・ファーマー
半熟マルカ魔剣修行!』ディリア・マーシャル・ターナー
わたしが幽霊だった時』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

 
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2010年03月02日
ジョン・ダニング(宮脇孝雄/訳)
『死の蔵書』ハヤカワ・ミステリ文庫

 十セントの古本の山から、数百ドルの値打ちの本を探しだす?そんな腕利きの“古本掘出し屋”が何者かに殺された。捜査に当たった刑事のクリフは、被害者の蔵書に莫大な価値があることを知る。貧乏だったはずなのに、いったいどこから。さらに、その男が掘出し屋を廃業すると宣言していた事実も判明し…古書に関して博覧強記を誇る刑事が、稀覯本取引に絡む殺人を追う。すべての本好きに捧げるネロ・ウルフ賞受賞作。
(引用:「BOOK」データベース)

 デンヴァー警察の殺人課巡査部長クリフォード・ジェーンウェイが今回の主役。とはいえ、刑事なのは途中まで。
 クリフには、実業家ジャッキー・ニュートンという宿敵がいます。実は管内では、浮浪者の無差別連続殺人事件が進行中。2年前から捜査に当たっているクリフは、ニュートンの仕業だと確信していますが、証拠がつかめません。
 今回の事件も、当初は、ニュートンが疑われます。ただ、殺されたロバート・B・ウェストフォールは浮浪者ではなく、手口も異なっています。念のためにニュートン邸を訪れたクリフは、ニュートンが連れ回していた女性を保護します。それがクリフの人生を大きく狂わせていくことに……。

 とにかくニュートンが嫌なやつ。嫌だけど、スパイスのように効いてます。ウェストフォール殺しとは関係がないのですが、物語の展開に深く関わってきます。
 出だしが、刑事物のハードボイルドだったので、そういうつもりで読んでいたのですが、半ばで大転換がありました。本書が、本好きに気に入られている、というのも納得。
 なお、ネロ・ウルフ賞は、フェアな謎解きをしている作品に与えられる賞だそうです。


 
 
 
 
2010年03月08日
エリザベス・ムーン(斉藤伯好/訳)
『復讐への航路』ハヤカワ文庫SF1537

《若き女船長カイの挑戦》第二巻。(第一巻『栄光への飛翔』)
 ヴァッタ一族惨殺さる! 惑星スロッター・キーのヴァッタ航宙本社ほか関連施設が襲撃を受け、カイの両親ほか、一族のほとんどの人間が殺害された。また同時に、銀河系各地で一族が船長を務める会社の宇宙船が次々にテロにあう。ある船は停泊中に爆破され、またある船は航宙中に行方を絶ったのだ。いったい誰が? その目的は何か? 謎の暗殺者の襲撃を受けたものの、なんとか切り抜けたカイは、真相の究明と復讐を誓う。
(引用:「BOOK」データベース)

 カイカーラ・ヴァッタの奮闘を書くシリーズ第二弾。
 真相の究明と復讐を誓うのは、カイだけでなく、他のヴァッタ家の生き残りたちも同じ。今回新たに、諜報活動に従事していたカイの従姉妹ステラが登場します。
 ステラは惑星アルレイで、元恋人のラフェと再会。このラフェの正体、実は……という隠し球つき。
 女の子言葉の独白で綴られていくので、ときどき読んでいてつらくなるのですが、登場人物が増えて、やや緩和されました。


 
 
 
 
2010年03月09日
エリザベス・ムーン(斉藤伯好/月岡小穂/訳)
『明日への誓い』ハヤカワ文庫SF1591

《若き女船長カイの挑戦》第三巻。(第一巻『栄光への飛翔』第二巻『復讐への航路』)
 ヴァッタ一族のはみだし者オスマンを激戦のすえ斃し、彼の船“フェア・カリーン”を手に入れたカイ。自分の貨物船“ゲイリー・トバイ”に比べて、遙かに新しく大型で、武装も充実していた。従姉のステラを“トバイ”の船長に任命し、とりあえず二隻で交易の仕事を続けるが、このままでは状況はますます宙賊の有利に傾いてゆくと確信する。そこで宙族(※)に対抗するため、各星系政府の私掠船に武装船団設立を呼びかけるが…。
(引用:「BOOK」データベース/※の箇所の「宙族」は「宙賊」の誤植ではないかと思います)

 カイカーラ・ヴァッタの奮闘を書くシリーズ第三弾。
 今回のカイは、交易はほとんどしません。そればかりか問題をふりまいて、別行動をとっているステラが尻拭いをして回るような展開。
 いろいろな事件の真相が明らかになったり、カイが偽者と疑われて裁判になったり、武装船団の戦いがあったり、盛りだくさんなのですが、どうも消化不良気味。シリーズものゆえ、本作で完結していないからでしょう。
 ところで、この本が刊行される2ヶ月前、翻訳家の斉藤伯好が亡くなりました。前作とちがって訳者が連名になっているのは、途中でひきついだためなのか……。
 このシリーズ、どうも全五巻らしいのですが、翻訳されたのはここまで。今回翻訳に関わった月岡小穂には残りを訳すつもりがないのか、はたまた版権がとれていないのか。まだまだ先がありそうな終わり方をしているので、少々気になってます。


 
 
 
 
2010年03月10日
オーエン・コルファー(大久保 寛/訳)
『アルテミス・ファウル −妖精の身代金−』
角川書店

 アルテミス・ファウルは、伝説的な犯罪一家に育った12歳の天才少年。コンピューターを駆使して「妖精の書」を解読したアルテミスは、妖精の黄金を手に入れようともくろむ。だが本物の妖精たちは、物語に登場するような可愛らしい連中ではなく、ハイテクで武装した危険な集団だった! アルテミスと妖精たちの激しい戦いが始まる−。
(引用:「BOOK」データベース)

 《アルテミス・ファウル》シリーズ
 この物語のきっかけとなったのは、ファウル家の没落。
 父のアルテミス・シニアが、莫大な財産をつぎ込んだ事業に失敗し、行方知れずとなってしまいます。そのため母アンジェリーンは頭がおかしくなり、今では寝たきりの生活。ファウル家も、億万長者から転落してしまいます。
 ファウル家の召使いとして出てくるのは、ボディガードのバトラーと、その妹ジュリエットのみ。それだけで一家の窮状が知れるというもの。アルテミスは失われた地位を回復しようと、妖精をつかまえ、身代金として純金1000キロを要求します。(ちなみに、2010年3月の金相場で換算すると、32〜34億円相当)
 アルテミスに捕らえられた妖精は、LEP(地底警察)の偵察隊女性隊員ホリー・ショート。ホリーは忙しさのあまり〈魔法の儀式〉を行っておらず、魔法力が低下中。儀式をするために地上に出てきたところでした。

 本作は、児童文学です。
 子供向きゆえ、あまいところはあります。
 登場人物たちが生き生きとしているのは印象的でした。アルテミスの、強がりだけどさびしがりやな一面。ホリーの上司、ルート司令官のひねくれた愛情。それらに、妖精とハイテクの、絶妙な組み合わせが重なります。
 大人向けに書かれていれば……と、思わずにはいられませんでした。


 
 
 
 
2010年03月11日
アキフ・ピリンチ(池田香代子/訳)
『猫たちの聖夜』早川書房

 りこうで生意気で、すこしワルの雄猫フランシスは、頼りにならない飼い主のグスタフとともに古ぼけたアパートに引っ越してきた。ところが、新居の探索にでたフランシスを待ち受けていたのは、無残に殺された仲間の死体。こんなむごいことをしたのは人間か、それとも…。しかも近所を縄張りとする猫の「青髭」の話では、猫殺しはこれで四件目だという。コンピュータを自在に操る長老猫パスカルの協力で調査を開始したフランシスは、やがて、猫たちにおそるべき実験を繰り返していた科学者の手記を発見する。サイコ・サスペンスのスリルと知的興奮、そして感動のラスト。世界中で絶賛され、ベストセラーを記録した、猫による猫のミステリ。ドイツ・ミステリ大賞受賞作。
(引用:「BOOK」データベース)

 フランシスが、あたりまえですが実に猫らしいです。
 引っ越しを嫌がっていたり、新居でまず自分の臭いをつけたり、事件のことはきれいに忘れて発情した雌を追いかけていったり。グスタフをののしりながらも、愛情を感じている様子もうかがえて、微笑ましく読みました。
 それだけに、人間の文字を読んだり、コンピュータを使いこなす姿には、少々違和感がありました。擬人化するのはやむを得ないことでしょうが、猫ならではの展開で事件を解決してもらいたかったです。せっかく猫が主役なんですから。


 
 
 
 
2010年03月13日
ロマンティック時間SF傑作選(中村 融/編)
ウィリアム・M・リー/デーモン・ナイト/ジャック・フィニイ/ウィルマー・H・シラス/バート・K・ファイラー/ロバート・F・ヤング/チャールズ・L・ハーネス/C・L・ムーア/ロバート・M・グリーン・ジュニア
(安野玲/浅倉久志/中村融/井上知/市田泉/訳)
『時の娘』創元SF文庫

 時という、越えることのできない絶対的な壁。これに挑むことを夢見てタイム・トラヴェルというアイデアが現れて一世紀以上が過ぎた。時間SFはことのほかロマンスと相性がよく傑作秀作が数多く生まれている。本集にはこのジャンルの定番作家といえるフィニイ、ヤングらの心温まる恋の物語から作品の仕掛けに技巧を凝らした傑作まで名手たちの9編を収録。本邦初訳作3編を含む。
(引用:「BOOK」データベース)
 
ウィリアム・M・リー(安野玲/訳)
「チャリティのことづて」
 1700年の夏、11歳のチャリティ・ペインはコレラに倒れた。高熱に苦しんだチャリティは、奇妙な夢を見る。不思議な話し方をする人や、馬のない馬車の夢を。一方、1965年に生きる16歳のピーター・ウッドは、チフス菌に侵され、高熱に苦しみ、過去の世界を夢に見ていた。どうやら、ふたりは心がつながってしまったようなのだが……。
 なんで起こったのかはさておき、なにが起こったか分かった後の、チャリティとピーターの交流がメイン。無理のない展開で、ラストが効いてました。
 
デーモン・ナイト(浅倉久志/訳)
「むかしをいまに」
 サリヴァンは生まれたとき、苦しみの中にあった。すぐそばには、身動きもせず横たわる、エミリーの姿。やかで、さまざまなことがわかっていくが……。
 まるで、フィリップ・K・ディックの『逆まわりの世界』のよう。ただし発表年を見てみると、ディックは1967年、こちらは1956年。とても短い間に長い時をかけぬけて、詩的な雰囲気のある作品でした。
 
ジャック・フィニイ(中村融/訳)
「台詞指導」
 1920年代を舞台にした映画の撮影隊は、ニューヨークが寝静まるのを待って、当時走っていたバスの試乗をした。ちょっとしたお遊びで、バスには20年代の扮装をしたキャストたちが乗り込むが……。
 台詞指導係のジェイクが目撃した、駆け出し女優ジェシカの変化の物語。時の流れは実に残酷。
 
ウィルマー・H・シラス(中村融/井上知/訳)
「かえりみれば」
 ミセス・トッキンは、30歳のとき、不思議な体験をした。教授に「過去に戻ってもう一度人生をやり直せたら」と愚痴ったところ、教授がその願いを叶えてくれたのだ。かくしてトッキンが気がつけば、15歳の娘になって、懐かしい祖母の家にいたのだが……。
 過去をやり直すことの、ひとつの可能性を示した作品。
 
バート・K・ファイラー(中村融/訳)
「時のいたみ」
 フレッチャーが気がついたとき、時をさかのぼっていた。10年程老けたフレッチャーは、見るからに逞しくなっていたが、わざわざ時をさかのぼった目的は分からない。時をさかのぼる人は数多いが、その試みがうまくいくことは、めったにない。10年後のフレッチャーの目的とは?
 タイム・パラドックスを避けるため、というわけで、過去にさかのぼったフレッチャーには、未来の記憶はありません。
 とてもおもしろい着眼点だな、と。

ロバート・F・ヤング(市田泉/訳)
「時が新しかったころ」
 カーペンターは古生物学協会にやとわれた調査員。時代錯誤な化石が発見されたため、それがなんなのか調べるため、白亜紀後期へとやってきた。カーペンターが発見したのは、ふたりの子供だった。彼らは火星人で、誘拐されて地球へと連れられてきたらしい。カーペンターは彼らをかくまうが……。
 さすが、ヤング。泣けました。
 カーペンターが、トリケラトプスを模した機械をあやつって大活躍。子供たちを助けますが、その代償ときたら……。 
 
チャールズ・L・ハーネス(浅倉久志/訳)
「時の娘」
 父を知らずに育った「わたし」は、母を憎みながら育つが……。
 母と娘の奇妙な関係の物語。

C・L・ムーア(安野玲/訳)
「出会いのとき巡りきて」
 エリックは、タイムトラベルの実験台に志願した。時を駆け巡ったエリックは、ひとりの女と巡り会う。女は、神秘に煙るスモークブルーの目をしていた。エリックは行く先々であの眼差しに出会うが……。
 ファンタジックな作品。
 
ロバート・M・グリーン・ジュニア(中村融/訳)
「インキーに詫びる」
 1965年のウォルトンは、1931年の春、そして1944年の冬を白昼夢に見ることがあった。それらの時代で共通しているのは、友人で恋人だったモイラの存在。ウォルトンは、モイラに再会しようと旅立つが……。 
 時が行き来する、凝った構成の話。じっくり読むべき作品。


 
 
 
 
2010年03月15日
ジョナサン・ストラウド(金原瑞人/松山美保/訳)
『バーティミアス プトレマイオスの門』理論社

 《バーティミアス》三部作の完結編(第一部『サマルカンドの秘宝』第二部『ゴーレムの眼』)
 史上最強ファンタジー3部作完結編! ゴーレム事件から三年──、ナサニエルは17歳で帝国政府のトップ7の仲間入りをしていた。だが国の情勢は不安定だ。長びくアメリカ侵攻に出口が見いだせない政府に、一般人たちがついに大規模な抗議運動を起こそうとしていた…。
(引用:「BOOK」データベース)

 名魔術師ジョン・マンドレイクことナサニエルは、今や情報大臣。難しい術も片手間にこなす実力者だが、内面は孤独なひねくれ者のまま。
 大英帝国はアメリカ侵攻にてこづり、国内も内乱状態に入りつつあった。ところが首相ルパート・デバルーは、〈グラッドストーンの杖〉や〈サマルカンドの秘宝〉のような強力な魔術品をしまい込んでしまう。ナサニエルは閣議でそれらの使用を進言するが、首相の不興をかってしまった。
 悲観的になったナサニエルは、劇作家クェンティン・メイクピースの実験に立ち会うことに。メイクピースは実験で、あの〈レジスタンス団〉の生き残りニコラル・ドゥルーを使い、人間の身体の内部に悪魔を召喚する。
 あまりの恐ろしさに愕然とするナサニエルだったが、死んだと思っていたキティ・ジョーンズが生きていると知り、いてもたってもいられない。早速、捜しに行くが……。
 そのころキティは偽名を使い、魔術師ハロルド・バトンの手伝いをしていた。その傍ら魔術書を読み、密かに妖霊召喚を試みる。狙うは、妖霊バーティミアス。まんまと成功するが……。

 三部作の締めだけあって、前二作からの伏線がきちんと生かされた作品になってました。本作ではさらに、バーティミアスと、バーティミアスがよく姿を借りる少年プトレマイオスとのエピソードが語られます。
 ナサニエルは、地文でもマンドレイクと書き表されているように、どっぷり役人になっているのですが、あるときからナサニエルに戻ります。そういった心境の変化は圧巻。
 ただ、帯にあった「衝撃の結末」は、伏線と同じなので、もうひとひねり欲しかったような……。それだけが残念です。


 
 
 
 
2010年03月25日
フィリップ・ホセ・ファーマー(伊藤典夫/訳)
『恋人たち』ハヤカワ文庫SF378

 大きな茶色の瞳、口紅を塗ったように赤くふくよかな唇、そして低く魅力的な声……地球から40光年余りも離れた惑星オザゲンの調査におもむいたハル・ヤロウは、そこで地球人そっくりの美しい娘ジャネットと恋におちた。だが、前回の調査ではこの惑星にはバッタから進化した昆虫生物ウォグしかいないはずだった……彼女はいったい何者なのか? すでに絶滅したはずのヒューマノイド型生物の最後の生き残り? それとも……? 厳格で禁欲的な社会に育った一青年と美しい異星人との恋を通じ、それまでタブーとされていた“性”をテーマにとりあげ、一大旋風を引き起こした傑作。
(以上、内容紹介文より転載)

 ハル・ヤロウが地球で置かれていた環境は、人口過多で、がんじがらめの規則に縛られた生活。人々は〈前駆者〉を信仰し、それはハルも同じこと。ただ、熱心とはいえないために道徳評定がすこぶる悪く、失職寸前。
 そんなときにオザゲンの任務を与えられて、意気揚々と旅立つのですが……。
 まるで、フィリップ・K・ディックの書くような世界でした。


 
 
 
 
2010年03月27日
ディリア・マーシャル・ターナー(井辻朱美/訳)
『半熟マルカ魔剣修行!』ハヤカワ文庫FT

 強くなって、ご主人を倒すんだ! 意地悪な魔法使いの主人から逃げだしたマルカは、ただいま剣術修行中。ところが、ふとしたことから剣術学校を追い出され、ハンサムなアンドロイド、ロダーが率いる魔力ドライブ宇宙船に飛びこむはめに。ロダーは魔力者矯正機関監視局との戦いの真っ最中で、マルカも否応なく動乱の渦中に巻きこまれていくが…。科学のかわりに魔法が発達した世界を舞台に、小さな剣士マルカが大冒険。
(引用:「BOOK」データベース)

 この紹介文は、誇張と言うべきか、嘘と言うべきか。
 マルカの独白で展開していきます。マルカが人間ではないことや、身体は少女ながら、見かけの何倍も生きていることは、早々に分かります。
 マルカは成長しすぎていて、継ぎ目がゆるんで危険な状況。思考回路は後ろ向きで、冒険など望んではいません。
 ロダー・マッシムは、監視局(警察機構)が暴走しないよう、それをモニターするためにつくられたアンドロイド。任務のためには魔力者が必要不可欠なのですが、たいていの魔力者は科学技術学校で条件づけされているため、モニターの仕事はこなせません。
 ロダーが求めているのは、ウェブ外の条件づけされていない魔力者。てんてばらばらな彼らをまとめるため、ロダーには人を惹き付ける能力が付加されています。でも、人間ではないマルカには通用しません。
 マルカはひとりになりたがりますが、乗船中に事件が勃発。メンネンカルト星が〈管理法〉による二級犯罪の咎で、物理的掃滅の処罰を受けてしまいます。ロダーの処罰停止の申請は完全に無視。ロダーの宇宙船も攻撃を受けてしまいますが……。

 ファンタジーとして書かれているのですが、どちらかというとSF風。
 ウェブだのネヴァマインドだの、さしたる説明もないままに出てくる用語も少なくなく、世界が見えにくかったです。まるで、わざと見せないようにしているような、ちぐはぐした印象。
 それにしても、タイトルが謎。


 
 
 
 
2010年04月03日
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(浅羽莢子/訳)
『わたしが幽霊だった時』創元推理文庫

 歩いててふと気がついたら、あたし、幽霊になってた! 頭がぼやけてて何も思い出せないし、下を見たら自分の体がないじゃないの。生垣やドアをすり抜けて家のなかに入ると、だいっ嫌いな姉さんや妹たちが相変わらずのケンカ。誰もあたしのこと気づきゃしない。でも、どうして幽霊になっちゃったんだろう……現代英国を代表する女流作家の、おかしくもほろ苦い時空を超えた物語。
(引用:「BOOK」データベース)

 幽霊ものというより、タイムトラベルもの。
 男子寄宿学校を経営する夫妻と、4人の娘たちからなるメルフォード家。「わたし」は、次女のサリーであるようなのですが、どうもはっきりしません。というのも、記憶をなくしてしまっているから。
 なにもないところから徐々に真相が明らかになっていきます。その流れはさすがだな、と思うのですが、とにかく姉妹たちがやかましいです。その個性が好きになれればいいのですが、いらいらしながら読んでしまいました。

 
 

 
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