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2013年の記録
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このページの本たち
ルーグナ城の秘密』ピアズ・アンソニイ
電脳麻薬ハンター』ウィリアム・シャトナー
バウンダーズ』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
この人を見よ』マイクル・ムアコック
異次元の女王』C・L・ムーア
 
アンドロイドの夢の羊』ジョン・スコルジー
緊急の場合は』マイクル・クライトン
不死販売株式会社/フリージャック』ロバート・シェクリイ
カモメに飛ぶことを教えた猫』ルイス・セプルベダ
魔法の通廊』ピアズ・アンソニイ

 
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2013年02月16日
ピアズ・アンソニイ(山田順子/訳)
『ルーグナ城の秘密』ハヤカワ文庫FT

 《魔法の国ザンス》シリーズ第三巻。
 魔法の王国ザンスには、強力な魔法使いが王となる習わしがある。現在のトレント王の後継と目されているのは、ピングの息子であるドオアだった。
 ドオアの魔法は、生命のない物と話をする力。魔法は強力なものの、同じ年頃の子供たちと、うまく折り合うことができずにいる。
 あるときドオアは、冒険の旅に出ることになった。
 行き先は、ルーグナ王が活躍した800年前のザンス。ザンスに満ちている魔法は洗練されておらず、魔法の力を持たないマンダニア人による第四次移住が行われようとしているところ。
 ドオアの目的は、ただひとつ。ゾンビーの頭に会い、復活の霊薬をもらうこと。
 ドオアの乳母ミリーは、つい最近まで幽霊だった。一方で、ミリーが親しくしているジョナサンは、ゾンビーのまま。ドオアはミリーのため、ジョナサンを人間に戻す薬を求めることになったのだ。
 ドオアは、800年前に生きていたマンダニア人の中に入り込み、ゾンビーの頭を捜すが……。

 少年の成長物語。
 ドオアは、ルーグナ城の、800年前のタペストリーを利用して、過去へと旅をします。その際、偶然にも蜘蛛のジャスパーまで引きずり込んでしまいます。
 巨大蜘蛛となって現れたジャスパーは、ドオアと行動を共にし、やがて親友となっていきます。ふたりでルーグナ城を目指しますが、そのときルーグナ王は、国王としてふさわしいことを証明するための、魔法の戦いの真っ最中。ドオアも巻き込まれてしまいます。

 前作までに登場していた人物やエピソードが、今作できれいにまとめられてます。読んでいて興味が持てますし、スッキリしました。
 ただ、800年前を旅するドオアが、外見は屈強なマンダニア人だけど中味は12歳、というギャップを抱えていることが、どうも生かしきれてないような……。それを思い出させる出来事はあります。でも、身長も体格もまるで違うのだから、もうちょっとなにかあってもよかったかも。そこが残念でした。


 
 
 
 
2013年03月23日
ウィリアム・シャトナー(斎藤伯好/訳)
『電脳麻薬ハンター』ハヤカワ文庫SF912

 ジェイク・カーディガンは、かつて警官だった。
 現在は、冷凍冬眠15年の刑に処せられた囚人だ。何者かに陥れられ、無実を証明することのできないままに、収監されてしまったのだ。容疑はテクの密売。
 テクとは、脳に究極の快楽をもたらす装置のこと。グレート・ロサンゼルスは、テクに汚染されている。実はジェイクも、密売には加担していないものの、テク中毒だった。
 ジェイクが人工冬眠に入って4年。
 特別仮釈放の措置がくだされた。ジェイクを信じ仮釈放に尽力してくれたのは、警官仲間だったシド・ゴメスだった。
 警官を辞めたゴメスの再就職先は、コスモス探偵社。探偵社を経営するウォルト・バスコムにはカネもコネもあり、ジェイクが役に立つと売り込んだのだ。
 ジェイクに持ち込まれた仕事は、行方不明となっているレオン・キドリッジ博士とその娘ベスを捜し出すこと。
 彼らは、スカイクルーザーでメキシコを旅行中、墜落したらしい。墜落したのは、メキシコの大森林地帯。反乱軍が制圧している地域で、調査員は誰ひとりとして帰ってきていない。
 ジェイクはメキシコへと向かうが……。

 作者のシャトナーは、テレビ・ドラマ〈宇宙大作戦〉でカーク艦長を演じていた人。それでそういう書き方になってしまうのか、章の終わり方がテレビ的なのが気になってしまいました。
 絶体絶命の大ピンチ、続きは次週で!
 みたいな感じで。ただ、すぐとなりのページで、いささか拍子抜けな結果を知ることになるので、どうなのかな、と。そういうノリで読みたい人にはうってつけですが。
 おそらく、肩に力の入らないエンターテイメントとして楽しむべきなのでしょうね。


 
 
 
 

2013年04月06日
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(和泉裕子/訳)
『バウンダーズ この世で最も邪悪なゲーム』
PHP研究所

 ジェイミー・ハミルトンは、12歳。
 イギリスの、汚らしくてごみごみした大きな街に住んでいた。弟のロブは、両親が営む食料品店の手伝いが大好き。でも、ジェイミーも妹のエルシーも、サッカーの方がもっと好き。
 ある日、街を探検していたジェイミーは、〈古い要塞(オールド・フォート)〉と記された城を発見した。
 城のことが気にかかって仕方ないジェイミーは、屋内を覗き見てしまう。そこでは、灰色っぽいマントらしきものをまとった男たちが、怪しげなゲームに興じていた。つい侵入したジェイミーは捕らえられてしまう。
 ジェイミーは一方的に、〈ランダム要素〉としてディスカード宣告を受けた。
 彼らは世界を舞台に、人々を駒にして、ゲームをしていたのだ。
 彼らが告げるには、ディスカードは〈境界〉を好きなように歩き回れるが、プレイに加わることはできない。このルールを徹底するため、所在するフィールドで1ターンが完了すると、別のフィールドに移される。ただし、〈故郷〉に帰ることができれば、プレイに復帰できる。
 こうしてジェイミーは、〈故郷に向かう者(バウンダーズ)〉となった。
 ジェイミーは、さまざまな世界をさまよううち、同じ境遇の人たちがいることを知る。やがて、故郷を失った異質な生命体ヘレン、悪魔ハンターの弟子ヨリスと出会い、反撃を決意するが……。

 一応、児童書。ですが、子供向けというより、本を読み慣れていない若年層向け、といった感じ。子供には難解だろうけど、子供向けゆえの物足りなさもある。
 時間的には、わずか1年。その間にジェイミーはさまざまなことを経験して成長していきます。その一方で、子供っぽいところも残っていて、そのことが原因でトラブルに巻き込まれてしまいます。

 とても重たい物語でした。


 
 
 
 
2013年04月14日
マイクル・ムアコック(峯岸 久/訳)
『この人を見よ』ハヤカワ文庫SF444

 カール・グロガウアーの乗ったタイムマシンは、着陸すると同時にひびが入り、保護液をこぼしながら荒野を転がった。
 グロガウアーが目指していたのは、紀元29年の、ベツレヘム近く。イエス・キリストのはりつけを見物するつもりだった。ところがグロガウアーを助けてくれた人々は、誰ひとりとしてキリストを知らないという。
 グロガウアーが到着した荒野に暮らしていたのは、エッセネ派の人々だった。彼らは洗礼者ヨハネのもと、禁欲や節食を実行している。
 このヨハネこそ、キリストを洗礼したとされる人物。このときヨハネは、ローマ占領軍に対する反乱を企てていた。求心力を高めるため、神秘的な現れ方をしたグロガウアーを利用しようとするが……。

 グロガウアーが病的なためか、読みにくかったり、まどろっこしいところはあります。最初に、グロガウアーがすなわち救世主イエスであると知らされているので、どんでん返しのようなこともありません。
 グロガウアーの生い立ちを織り交ぜつつ、古代で、いかにして救世主イエスが誕生し、はりつけにされたのか。ひとりの現代人が歴史に取り込まれていく過程を堪能しました。


 
 
 
 
2013年04月20日
C・L・ムーア(仁賀克雄/訳)
『異次元の女王』ハヤカワ文庫SF62

 《ノースウェスト・スミス》の連作短編集第二弾。(第一巻
大宇宙の魔女』C・L・ムーア)
 ノースウェスト・スミスは、熱線銃一丁をたよりに星から星へ渡り歩く無宿者。さまざまな犯罪に手を染め、未開の星の酒場や辺境では有名で、尊敬すらされている。

「異次元の女王」
 ノースウェスト・スミスが気がついたとき、どことも知れない暗闇の中にいた。どうやら酒場で一服もられたらしい。スミスは、アプリと名乗る娘と出会い、ここがヴォンの廃墟で、女王ジュリが支配していることを聞く。ヴォンは、二つの次元に同時に存在しているらしいが……。

「冷たい灰色の神」
 ノースウェスト・スミスは、火星の都市リグァにいた。リグァは無法者の都市。そんなところでスミスに声をかけたのは、一目見て裕福と分かる美女だった。その正体は、絶頂期に姿を消した、歌姫ジュダイ。スミスはジュダイに、あるものを手に入れて欲しいと頼まれるが……。

「炎の美女」
 ノースウェスト・スミスは相棒のヤロールと共に、火星のラクダノールにいた。ふたりともどん底の状態で、どんな仕事でも引き受ける腹づもり。
 そんな彼らに持ち込まれたのは、木星の月のひとつにいるという、美しい声で歌う魔女を捕らえてくる仕事。女奴隷として高値で取引しようと言うのだ。ふたりは金のため、現地へと向かうが……。

「失われた楽園」
 ノースウェスト・スミスとヤロールは、ニューヨークにいた。ヤロールはセレス族のひとりを見つけ、スミスに、かれらにまつわる奇妙なはなしを聞かせる。セレス族はひとつの〈秘密〉を持っており、種族の生命を賭けて守りとおしているのだという。
 セレス族の男はふたりの目の前で荷物を奪われ、ヤロールが奪還に力を貸すことになった。ヤロールは引き替えに、セレス族の〈秘密〉を明かすように要求するが……。

 基本的に、無宿者だというのは背景設定として触れられるのみ。スミスは、あらゆる言葉で装飾された美女たちと出会い、神秘的で幻想的な体験をします。語られるのはスミスの受難ですが、あくまで主役は現象そのもの。
 立て続けに読むと食傷気味になってしまうので、ひとつひとつ、時間をかけて読んでました。


 
 
 
 
2013年04月27日
ジョン・スコルジー(内田昌之/訳)
『アンドロイドの夢の羊』ハヤカワ文庫SF1875

 人類は宇宙に進出し、大銀河連邦に加盟するに至った。大銀河連邦はさまざまな種族によって構成されており、地球の地位はお世辞にも高いとはいえない。
 太陽系のお隣に位置するのはニドゥ族だった。このニドゥ族、匂いで意志疎通する、少々厄介な交渉相手。軍事力が地球より勝っていることもあり、圧力をかけられることが多かった。
 結果として、地球では反ニドゥの勢力が台頭し、厄介な事態を招いてしまう。
 貿易交渉の席上、ニドゥの貿易代表者を殺してしまったのだ。ただちに国際問題へと発展するが、全面戦争となれば、地球側に勝ち目はない。そんなとき、ニドゥ側がある提案を出してきた。
 近々ニドゥでは、新しい指導者の即位式が行われる。実は、即位式では同盟国である地球のシンボルとなるものが使われることが決まっており、もはや変更は不可能。それがなくては正式に即位したと承認されない。
 地球のシンボルとは、羊。それも、〈アンドロイドの夢〉と名付けられた特別な品種の羊だった。ニドゥ側が管理している群が全滅してしまっため、密かに、今回の貿易交渉で確保する腹づもりでいたのだ。
 ニドゥが要求する〈アンドロイドの夢〉の居場所は分からない。
 調査を担当することとなったのは、国務省の職員ハリー・クリーク。DNAを手がかりとして調べあげていくが、居所が知れるたび、何者かに先回りされて羊が殺されてしまう。
 ハリーが最後にたどり着いたのは、ペットショップ〈ロビンズ・ペット〉のオーナー、ロビン・ベイカーだった。ロビンは未改造専門のため、〈アンドロイドの夢〉などという品種は聞いたこともないと言うが……。

 一応の主役はハリー・クリーク。ただし、お目見えするのは第三章から。意味ありげに登場するのは、まるで秘密結社な〈進化した羊の教会〉。
 クリークと対立勢力との羊をめぐる競争が縦軸なら、〈進化した羊の教会〉の存在は横軸。単なる羊つながりではなく、物語全体にしっかり絡みついてきます。
 タイトルの元ネタは、フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』から。雰囲気はユーモア系なのでディックとはまるで違いますが、ディックを彷彿とさせる設定がないわけではありません。

 重いことでも軽く書いていて、簡単に読み飛ばせるかと思いきや人間関係は複雑。バランスが、少々うまくなかったように思います。


 
 
 
 

2013年04月28日
マイクル・クライトン(清水俊二/訳)
『緊急の場合は』ハヤカワ文庫NV

 ジョン・ベリーはボストンの病理医。
 友人の産科医アート・リーは妊娠中絶手術を行っており、ジョンも隠蔽工作に加担している。中絶は違法行為なのだが、アートは、やむにやまれぬ事情のある女性たちの手助けをしたい一心なのだ。
 そんなある日、アートが殺人容疑で逮捕されてしまった。
 亡くなったのは、カレン・ランドール。
 カレンの家系は、多くの医師を輩出している名門の家柄。父のJ・D・ランドールは心臓外科医で、街の有力者だ。
 カレンは午前四時、ランドール夫人によって救急病棟に運び込まれた。出血がひどく、すでに瀕死の状態。どうやら中絶手術を受けたことが原因となったらしい。
 アートに容疑がかかったのは、ランドール夫人の証言によるものだった。確かにアートは、カレンから中絶手術を頼まれていた。ただ、すでに妊娠4ヶ月だったため、診察をすることもなく即座に断ったという。
 ジョンは、アートの無実を信じ、情報収集を始めるが……。

 真相究明を願うジョンに立ちはだかる壁は、とにかく事件を速やかに解決したい警察と、家の恥を公にしたくないJ・D・ランドール。アートが裁判にかけられることになれば、ジョンもただでは済みません。
 本作は、クライトンが医学生だったころに、ジェフリイ・ハドスン名義で書いた作品。リアルだというので、発表当時、話題になったそうです。専門用語に付された脚注が多くて、門外漢には少々読みにくくなってます。


 
 
 
 
2013年04月29日
ロバート・シェクリイ(福島正実/訳)
『不死販売株式会社/フリージャック』
ハヤカワ文庫SF967

 トマス・ブレインは、下級ヨット設計技師。
 休暇を終え、ニューヨークに帰るところだった。時代は1958年。ハイウェイを疾走中、突如としてハンドルの自由を奪われたブレインは、対向車と衝突して死んでしまった。
 次に気がついたとき、ブレインは白い部屋の白いベッドに寝かされていた。時代は2110年。レックス・コーポレーションによって生き返させられたのだ。
 ブレインが生還できたのは、レックス動力システムがあったればこそ。レックス社のマリー・ソーンらプロジェクトの担当者たちは、ブレインを宣伝材料として利用しようとする。
 ところが、計画は土壇場でご破算になってしまった。社長のライリー自らがストップをかけたのだ。ライリーに怒り心頭のソーンは自分のことで頭がいっぱい。ブレインを放り出してしまう。
 なにもすることのないブレインは、ニューヨークの街へと足を踏み入れた。この世界に関する知識も、資金もないままに。ブレインは、人身売買業者に目を付けられ、誘拐されてしまうが……。

 映画「フリージャック」の原作本。
 この未来世界では、古い身体を捨てて、新しい別の人間の身体に心を入れ替える技術が発達しています。それは再生と呼ばれていて、ブレインの生還も、この再生技術に時間旅行技術を組み合わせて実現したもの。そのため、生き返ったとはいえ、身体は別人のもの。そのあたりの葛藤もあります。
 死後の世界も科学的に証明されていますが、どうもSFというよりオカルト寄りでした。


 
 
 
 
2013年04月30日
ルイス・セプルベダ(河野万里子/訳)
『カモメに飛ぶことを教えた猫』白水社

 ゾルバは、ハンブルクに暮らす黒猫。
 ハンブルクの港には世界中の船が出入りし、歴史と伝統ある国際都市を形作っている。そこで暮らす猫たちもまた、自由を愛し、誇り高く、思いやり深く、一致団結していた。
 ゾルバの飼い主は、2ヶ月のバカンスに出かけたばかり。ひとりでのんびりできると思った矢先、事件が起こった。
 バルコニーに、一羽のカモメが舞い降りたのだ。薄汚れたカモメは瀕死の状態。息も絶え絶えに、ゾルバに三つの願いをした。
 最期に卵を産むが、食べないで欲しいこと。
 卵のめんどうを見てもらいたいこと。
 そして、産まれたひなに飛ぶことを教えてやること。
 ゾルバはカモメと約束を交わしたものの、どうすればいいのか分からない。ゾルバが頼ったのは、港の猫仲間たちだった。
 かくして、ゾルバと仲間たちの奮闘が始まるが……。

 寓話。
 カモメに飛ぶことを教えた猫、というより、飛ぶことを教えようとした猫、の方がしっくりくる内容でした。けっきょくのところ、カモメにとって飛ぶことは本能なんだな、と。
 ゾルバの仲間が言うには「港では、一匹の猫の問題は、すべての猫の問題」。ただし、野良猫は除外されているようです。
 野良猫たちは悪者として登場します。そこが腑に落ちないのです。同じ猫なのに……。


 
 
 
 
2013年05月03日
ピアズ・アンソニイ(山田順子/訳)
『魔法の通廊』ハヤカワ文庫FT

 《魔法の国ザンス》シリーズ第四巻。
 ドオアは16歳。魔法使い級の力を持つがゆえに、トレント王の後継者となることが決まっている。
 ある日ドオアは、トレント王から秘密の計画を聞かされた。
 ザンスは、長らく鎖国状態にあった。政策を転換したのは、トレントが即位してから。ザンスを守っていたバリヤーを撤廃し、マンダニアの国々と自由に行き来できるようにしたのだ。
 だが、継続的な交易は果たせずにいる。ザンスとマンダニアは時間の流れが異なり、マンダニアからの接触が容易ではないためだ。ザンスの住民も、ザンスを離れると魔法の力がなくなってしまうため、なかなか出て行くことができない。
 そこでトレント王は、女王アイリスを伴い、マンダニアのある小国を表敬訪問する計画を立てた。
 不在になるのは、一週間。
 国民には、国王夫妻が休暇をとるとだけ知らせた。その間、ドオアが仮の王としてザンスを治めるのだ。これは、ドオアにとってもよい予行演習となる。
 ところがトレント王は、約束の一週間がすぎても戻ってこなかった。ドオアは仲間たちと共に、国王夫妻の行方を求めて旅立つが……。

 今作の中心人物は、ドオアと、トレント王の娘イレーヌ王女。人喰い鬼のメリメリ、ゴーレムのグランディも、ふたりに同行します。一行が向かうのは、ザンス南端のセントールの島。
 セントールたちは存在そのものが魔法的であるため、自身が魔法を使うことを嫌っています。にもかかわらず、彼らの中に魔法使い級の力を持った者がいるらしいのです。お告げでは、その力こそ、トレント王を探す手助けとなるはずなのですが……。

 かなり練ってあるなぁ、とは思うのですが、納得しがたいところが随所にあるんです。それが残念。

 
 

 
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