ジョン・クロウリー
『ナイチンゲールは夜に歌う』
あらゆるものを創り出したデイム・カインド(母なる自然)は、二本足で立つ、誰も見たことのない生物を思いついた。こうして、女の子と、男の子が誕生した。ふたりは名前をつけることを思いつき、デイム・カインドは大満足するが……。/他、3篇収録
浅倉久志の翻訳した作品は数限りなく、ふと見回せば、たくさんの訳文を読んでいました。(参照:航本日誌に載っている、浅倉久志訳の翻訳SFリスト)
中でも思い出深いのは、この本。
イアン・M・バンクス
『ゲーム・プレイヤー』
グルゲーは、銀河連邦〈カルチャー〉で、ゲームの達人として名を馳せていた。しかし、このところはゲームへの情熱を失いつつあり、憂鬱な日々。そんなグルゲーに、アザド帝国への遠征の話が舞い込む。帝国では、国名にもなっているゲーム《アザド》が盛んで、皇帝すら《アザド》で決めるという。グルゲーは《アザド》に参加することを決意するが……。
実はこの本、なんの予備知識もないときに書店で見つけました。松本零士の表紙絵が目立っていたのです。とはいえ、出版元は早川や東京創元ではなく、角川。主人公の名前(グルゲー)は好きになれないし、正直、購入をためらいました。
そんなときに「浅倉久志/訳」に気がついたのです。もちろん、買いました。翻訳家の名前で本を買ったのは、このときが始めてではないかと思います。
そして、もうひとつ。
カート・ヴォネガット・ジュニア
『タイタンの妖女』
大富豪のコンスタントは、全能者ラムファードに未来を予言され、運命に歯向かった。そのために無一文となってしまう。火星軍将校として火星へ渡ったものの、記憶を失い、地球に攻め込むことになってしまうが……。
表紙タイトルが手書きな本って、どうも苦手。(参照:書的独話2004年11月11日「『タイタンの妖女』と手書きタイトル そして『分解された男』」)それで長いこと読まずじまいだったのですが、ついに読んだのは、浅倉久志の名前に負けたからでした。
読んで良かった……。
そういえば、はじめて読んだハードSFも、浅倉久志訳でした。当時は、浅倉久志だと気がつかなかったのですが……。
ポール・アンダースン
『タウ・ゼロ』
32光年彼方のおとめ座ベータ星を目指して旅立った〈レオノーラ・クリスティーネ〉号だったが、減速システムに損傷を負ってしまった。修理するためには、バサード・エンジンをとめなくてはならないのだが……。
太陽のもとで歌うのをやめたナイチンゲール。でも、夜には美しい歌声を聴かせてくれます。
名作をたくさん訳した浅倉久志は、今ごろどこで歌っているのでしょうね?