2023年01月02日
フランク・シェッツィング
(北川和代/訳)
『深海のYrr(イール)』全3巻/ハヤカワ文庫NV
1月
ペルーの漁師、ホアン・ナルシソ・ウカニャンが行方不明になった。葦舟に乗って、仲間たちと離れたところで悲運に見舞われたのだ。そのときは、世界が関心を寄せることはなかった。
3月
海洋生物学者のシグル・ヨハンソンは、ティナ・ルンから2匹のゴカイを渡された。どういう種か調べて欲しい、と。ゴカイが見つかったのは、水深700メートルの海底。ノルウェーの大陸棚が深海に落ちこむあたりだ。
ルンはスタットオイル社で、石油資源開発推進プロジェクトの副責任者をしている。海洋プラットフォームを建設するにあたり、どのような環境に、どのような魚が生息するのか調査しなければならないのだ。
多毛類にはさまざまな色や形のものがある。ルンの持ちこんだゴカイは、非常に際立った顎と歯を備えていた。バクテリアを食べて生きているゴカイには不必要なものだ。
ヨハンソンはルンに頼み、現地に赴く。大発生したゴカイが、メタンハイドレートを掘っている姿を見つけるが……。
一方、カナダのバンクーバー島。
レオン・アナワクは、先駆的な実験が評価されているクジラの研究者。例年コククジラやザトウクジラは、2月に入るとバハ・カリフォルニアの暖かい湾やハワイを離れ、夏の餌場となる北極圏へ向けて移動を始める。太平洋を出発してベーリング海を経由し、チュコト海までの距離は16,000キロメートル。
今年は、3月初めにロサンジェルスあたりで目撃されて以降、だれもクジラを見ていない。やきもきするアナワクの前にクジラが現れたときには、4月になっていた。こんなにも長期間どこにいたのか、アナワクには不思議でならない。
そんなころアナワクは船会社から相談を受ける。船がクジラに襲われたというのだ。
6万トンの貨物船バリア・クイーン号が、バンクーバー沖でコントロール不能に陥った。救難信号を出し、タグボートがやってきたところでクジラが現れた。
クジラは、タグボートからロープを渡す作業を妨害し、タグボートを転覆させようとした。幸い成功しなかったが、不可解な操船不能といい、偶然とは思えない。
クジラは、ホエールウォッチングのツアーも襲った。多数の死傷者がでるが、事件はここだけに留まらない。世界中で海難事故が勃発し、小型船で海に出ることができなくなってしまうが……。
海洋もの。
ヨハンソンとアナワクを中心にした群像劇。どちらかといえば、主人公はアナワク。カナダ人ですが先住民でもあり、葛藤を抱えてます。
ひとつひとつのエピソードがとにかく丁寧でした。冒頭のウカニャンもそれなりに尺を使ってますが、ふつうの長編だったらサラッと流したんじゃないかと思います。じっくり読めました。
NVレーベルから出てますけど、雰囲気的にはSF。SFとして出すと先入観がついてしまうから、あえてNVにしたのかもしれません。
ちなみに、作者はドイツの人。アメリカ軍人なども登場しますが、ドイツ人はアメリカ人をこういう目で見ているのか、という面白さもありました。ドイツの行動に言及する場面も、作者がドイツ人だと思うと意味深。
ネタばれになってしまうかもしれませんが、ひとつだけ。原書は2004年の発表(翻訳2008年)で、世界的に知られていないという前提で、津波の場面があります。
2023年01月06日
ラドヤード・キップリング(山田 蘭/訳)
『ジャングル・ブック』角川文庫
インドのジャングルとその周辺を舞台にした短編集。インド近辺ではないものもあり。
もっとも有名なのは、少年モーグリが登場する物語。7編のうち最初の3編です。続編と併せてモーグリもののみを集めた再構成版『ジャングル・ブック』もあります。
今回、モーグリものにはそれぞれ別題を併記してありますが、再構成版『ジャングル・ブック』の翻訳者がつけたものです。
「モーグリの兄弟たち」
別題「モーグリのきょうだいたち」
シオニーの丘で、オオカミの夫婦が子育てをしていた。
ジャッカルの〈残飯あさりのタバキ〉によると、虎のシア・カーンがこちらにきているという。シア・カーンの本来の縄張りは、ワインガンガ川のあたり。勝手なふるまいに、父さんオオカミは怒り心頭だ。
夫婦はシア・カーンのわめき声を耳にする。どうやら人間をねらって失敗したらしい。そのとき、人間の子どもが現れた。
はじめて見る人間の子どもに、母さんオオカミは興味津々。かわいくて仕方ない。夫婦は追いかけてきたシア・カーンを撃退すると、子どもをカエルのモーグリと名付け、育てることにした。
モーグリは、茶色の熊のバルーと黒ヒョウのハギーラのおかげで、オオカミの群れにも受け入れられる。ジャングルで成長していくが……。
「カー、狩りをする」
別題「カーの狩りの歌」
人間の子モーグリは、オオカミに育てられている。教師となってジャングルのことを教えてくれているのは、茶色の熊のバルーだ。生きるのに必要なことを学んでいくモーグリだったが、バンダー・ログのことは知らない。
バンダー・ログは、猿の一族。バルーによると、数ばかり多く、性悪で、不潔で、恥知らずで、頭にあるのはほかの種族の目を惹くことだけ。ジャングルに暮らすものは誰も、バンダー・ログのことは口にしないし考えもしない。
そんなバンダー・ログに、モーグリがさらわれてしまった。
バルーはモーグリを助けるため、黒ヒョウのバギーラと共にニシキヘビのカーに助力を頼むが……。
「虎よ、虎よ!」
別題「「トラだ! トラだ!」」
オオカミに育てられたモーグリだったが、宿敵である虎のシア・カーンの策略で、群れから追放されてしまった。モーグリは仕方なくジャングルをあとにする。
モーグリは、ジャングルのことならよく知っていた。ヘビの言葉や鳥の言葉もできる。だが、人間の言葉は話せない。
モーグリが、通りかかった男に身ぶり手振りで腹が減っていることを伝えようとすると、男は僧侶を呼んだ。僧侶は、モーグリの腕や脚の傷跡から、オオカミに育てられ、ジャングルから逃げ出してきたのだと断言する。
モーグリを受け入れたのは、メスアだった。メスアの子ナトゥーは、虎にさらわれている。モーグリがナトゥーにそっくりだというのだ。
モーグリは人間のことを学ぶが、うまくなじめない。そのうえ、シア・カーンはまだモーグリを狙っている。モーグリは、シア・カーンと対決することを決意するが……。
「白いオットセイ」
夏の何ヶ月間か、ベーリング海に浮かぶセント・ポール島のノヴァストシュナにオットセイたちがやってくる。子育てするため、灰色の冷たい海からこの島へ、何十万頭ものオットセイが上がってくる。
コティックも、ノヴァストシュナで生まれた。10月の末に島を後にして翌年戻ってくるのは、ほかの若者たちと一緒。ただ、コティックだけが真っ白だった。
1歳になったコティックは、初めて人間を見た。人間たちの目的は、オットセイの皮だ。四歳仔の群れを追いたてて、頭をこん棒で殴って殺しては、片っ端から皮をはいでいく。
その光景に、コティックは震え上がった。人間たちはノヴァストシュナで、30年くらいは同じことをしているという。コティックは、人間がやってこない島を見つけようと奮闘するが……。
「リッキ・ティッキ・タヴィ」
リッキ・ティッキ・タヴィはマングース。
ある夏の日、大水が出て、巣穴から流されてしまった。気がつけば、どこかの庭の小道のど真ん中。全身ひどく泥まみれのまま、焼けつく日差しに照らされていた。
リッキ・ティッキは英国人一家に引き取られ、セゴウリー宿営地にあるバンガローに住むことになった。
早速、庭を見回ったリッキ・ティッキは、大きな黒いコブラに出くわす。それまでリッキ・ティッキは、生きたコブラを見たことがなかった。ただ、ヘビと戦ってその肉を食べることこそが、一人前のマングースの生涯の仕事なのだと、ちゃんとわかっていた。
リッキ・ティッキは、ヘビの一家と対決するが……。
「象使いトゥーマイ」
その象は、カーラ・ナグと呼ばれていた。
人間につかまったときには、もう20歳になっていた。その場に居合わせたのが、〈象使いのトゥーマイ〉。それから47年間にわたって、インド政府のために働いてきた。
カーラ・ナグがエチオピアに渡って臼砲を曳いたときには〈象使いのトゥーマイ〉の子〈黒トゥーマイ〉に連れられていた。いまの使い手は、その息子の〈大トゥーマイ〉。
四代目となる〈小トゥーマイ〉は、今年10歳になる。
〈小トゥーマイ〉は、カーラ・ナグのかたわらで生まれた。カーラ・ナグからおそれられていると自負している。なにしろ、歩けるようになるが早いか、カーラ・ナグを水飲み場に連れていく役目を引き受けてきたのだから。
〈小トゥーマイ〉にとって世界でいちばん偉いのは、ペーターセンの旦那だ。旦那はインド政府のために、象の捕獲を一手に引き受けている。ある日、ペーターセンの旦那の目にとまった〈小トゥーマイ〉は、象のダンスを見たら一人前だと言われるが……。
「女王陛下の旗の下に」
ラーワルピンティーと呼ばれる野営地には、3万人もの兵士が集められていた。それから、三千頭のラクダ、象、馬、去勢牛、ラバまでも。そこでインド総督の視察を受けているのだ。
野営地は大混乱。
そこそこ動物の言葉がわかる〈わたし〉は、動物たちのやりとりに耳を澄ますが……。
1956年。
イリーナ・ドロツドヴァの両親が移民としてアメリカに渡ろうとしたのは、大勢のロシア人が祖国を離れた2度目の波の最期だった。父は蒸気船に乗りこもうとするところで拘束されてしまい、それっきり。イリーナを身ごもっていた母は、縫製のすぐれた腕前を頼りに生計をたてた。
イリーナは大学まで行ったが、就職できたのは引退同然の弁護士のための電話番。女にとって学歴はなんの役にも立たない。それも解雇されてしまい、CIAのタイピストに応募した。
イリーナが安らげるのは、ひとりきりでいるとき。生まれてからずっと、自分はよそ者だと感じていた。とにかく目立たないように生きてきた。
イリーナの速記の腕前はそこそこだったが、目立たなさが採用につながった。同僚にも秘密のまま、退勤後に運び屋としての訓練を受けはじめる。
そのころCIAでは、言論による戦争を推し進めようとしていた。ソ連で出版禁止になっている小説を国民の手に渡すことで、政府の言論統制や検閲を気づかせようというのだ。政治体制への批判の芽を植えつけ、ソ連国民みずからが起爆するように。
CIAにとって、本は武器だった。
その武器として選ばれたのが、『ドクトル・ジバゴ』だった。
ボリス・レオニドヴィッチ・パステルナークは、生存するもっとも有名なロシアの詩人。悲恋についての壮大な物語として『ドクトル・ジバゴ』を書いたが、十月革命批判と、いわゆる破壊活動的な内容のために、共産圏において禁書となっていた。
イリーナは〈ドクトル・ジバゴ作戦〉に抜擢されるが……。
一方、ソ連国内では、ボリスの愛人オリガ・フセーヴォロドウナ・イヴァンスカヤが、窮地に陥っていた。
秘密警察に拘束されたオリガは、ボリスが執筆中の『ドクトル・ジバゴ』について執拗に尋問される。反体制の本なのではないか、と。オリガはなにも認めなかった。
裁判にかけられたオリガは、有罪宣告されてしまう。知人が、秘密警察の用意した証言に同意したのだ。反ソ会話や、国外逃亡する計画や、反ソ連的ラジオを聴いていたという証言に。
オリガは、モスクワから500キロ離れたポチマにある矯正収容所で5年間の懲役を言い渡されるが……。
米ソ冷戦下のスパイもの。
時系列的には、オリガの拘束が先。その時点では『ドクトル・ジバゴ』は執筆中で、朗読会などで話していたので噂はあった、という状態です。
CIAの〈ドクトル・ジバゴ作戦〉は史実で、かなり読み込んで執筆した雰囲気がありました。
ほぼ一人称、ときどき三人称で書かれてます。イリーナの同僚タイピストたちをまとめて「わたしたち」の視点としたり、イリーナとオリガ以外の章もあります。
東側で生きる人の苦境はもちろん、西側にも、女性の尊厳とかLGBTQとか、いろいろあります。ありますけど、西側の人には、イリーナが別人になりきることに高揚感を抱いていたりと、どこかゲームのような感覚が見え隠れしてます。
CIAは、〈ドクトル・ジバゴ作戦〉がボリスにどういう影響を与えるのか、推測はしていても自分たちの都合を最優先にしてます。そのため、西側の困難と東側の過酷さが釣り合っていない、中途半端な印象が残ってしまいました。
なお、『ドクトル・ジバゴ』を読んでなくても理解はできます。ネタバレがあるのと、作者が意識して書いているようなので、先に読んだほうがいいとは思いますが。
《リンカーン・ライム》シリーズ、第12作
ニューヨーク市警重大犯罪捜査課刑事のアメリア・サックスは、未詳40号を追っていた。2週間前に起きた撲殺事件の容疑者だ。
被害者は、マンハッタン在住の29歳。終夜営業のクラブ〈40ディグリーズ・ノース〉に向かっていたところ、無人の建設現場で撲殺され、金品を奪われた。
その容疑者に似た男を見たという。知らせを受けたサックスは、本部に応援を要請して現場に急行した。
未詳40号は、5階建てのショッピングセンターにいる。2階のスターバックスに入った。応援が到着し、サックスはその場で容疑者確保を決める。
そのとき、切り裂くような悲鳴が響いた。
エスカレーター終点の乗降板が開いている。その下にある機械を収めた穴に、誰かが落ちたらしい。非常停止ボタンが押されてエスカレーターは止まったものの、モーターは動き続けている。
モーターの歯車に、中年男性が腹部を巻きこまれていた。 服はすでに真っ赤。言葉にならない叫びが続いている。
かけつけたサックスは穴に入り、男性を励ます。モーターを止める方法は見つからない。被害者グレッグ・フロマーは、家族への最期の言葉を残した。
未詳40号は姿を消した。
フロマー家を訪問したサックスは、遺族が経済的に困窮していることを知る。グレッグは保険に入っておらず、金銭的な援助のできる親族はいない。そこで、弁護士を紹介した。
担当弁護士は、エスカレーターのメーカーに損害賠償請求をするつもりだ。狙いは、和解。遺族には裁判をしている時間的余裕がない。
サックスは、リンカーン・ライムにも協力をとりつける。不法死亡訴訟では、物的証拠が論争の的になりがちなのだ。
ライムは、鑑識について高度な専門知識を有する犯罪学者。事故により、四肢麻痺という障害を抱えている。ライムはこれまで、科学捜査の専門家としてニューヨーク市警に協力していた。現在は、刑事司法大学の教職に就いている。
実のところサックスは、ライムの心がわりに心穏やかではない。捜査にライムがいないことにいらだちを憶えている。ショッピングセンターで見失ってしまった未詳40号につながる遺留物を発見するが……。
一方、ヴァーノン・グリフィスは、エスカレーターの事故でサックスの存在を知った。サックスが刑事だと気がつき、自分が監視されていたことを知るが……。
犯罪小説。
今作は、いつになく重かったです。犯人の、そもそもの動機が。
ディーヴァーにはどんでん返しのイメージがあり、今作も期待を裏切りません。それだけでなく、数々の言動があれこれ繋がっていて、うなりまくり。
シリーズ主人公はライムですけれど、今作はサックスの比重が高め。スポットだと思いますが、ライムが〈現場鑑識基礎〉講座で教えているジュリエット・アーチャーが新登場します。
アーチャーは、三十代半ばの臨床疫学者。頸椎にからみつくような腫瘍ができていて、四肢麻痺患者により適した仕事に転職しようとしているところ。鑑識は勉強中でも、これまでの経験と実績がある分、発言は軽くないです。
いつもの顔ぶれですけれど、アーチャーがいることで新味もありました。
2023年01月16日
アンドルス・キヴィラフク(関口涼子/訳)
『蛇の言葉を話した男』河出書房新社
レーメットは、蛇の言葉を話す最後の人間だった。森には、もう誰もいない。
レーメットが生まれたのは、森ではなくて村だった。父が、森の暮らしに耐えられなかったのだ。時代に合った暮らしを望み、異国の人間のようになりたがっていた。
一方、母は、村での暮らしが合わなかった。パンは好きになれず、畑仕事にも興味が持てない。退屈した母は、森を散歩していてクマと出会った。
よくある話だ。クマは、大きくて優しくて内気で毛深く、生まれついての女好き。母とクマはこっそりと交際を続けた。
ふたりの関係は、父がクマにひと噛みで頭を引きちぎられたことで終わった。父のベッドにいるところを見つかったクマが、動揺してしまったのだ。そのとき、母がクマに対して抱いていた感情は消え失せた。
それから母は森に戻った。父がいなくなった以上、村にいる理由はない。レーメットは1歳だった。
レーメットが蛇の言葉を学びだしたのは、6歳のとき。伯父である、蛇の言葉を完璧に話せる最後の人が教えてくれた。
蛇の言葉を話すには、特別な訓練が欠かせない。唇の筋肉を鍛えて蛇のそれと同じくらい敏捷で器用にする必要がある。なにしろ人間の耳には聞き分けられるかどうかという繊細な音の違いが、それぞれ全く異なる意味を持つのだから。
蛇の言葉ができれば、あらゆる生き物に話しかけられる。それでも、習得の難しさから人々は離れていった。母も、一番単純でよく使われる単語をいくつか知っている程度だ。
ある日レーメットは、ハリネズミに襲われていた子供の蛇を助けた。ハリネズミはあらゆる動物の中で最も愚かで、蛇の言葉を理解できない。そこで、茂みへと蹴り上げてやった。
蛇の名はインツ。
インツの命の恩人となったレーメットは、地下の大きな洞穴に案内され、歓待される。インツの父は蛇の王。レーメットはインツの友だちとなり、蛇から直接蛇の言葉を学んだ。
成長したレーメットには、村への憬れはない。だが、村に移住する人は後を絶たず、その都度、森は衰退していく。
賢人ウルガスは、精霊の世界に救いを求めていた。レーメットが思うに、ウルガスは古代の森の風習を曲解している。ウルガスは蛇の言葉も話せないのだ。
レーメットは、ウルガスと衝突してしまうが……。
エストニアのベストセラー。
フランス語に翻訳されて世界的にも有名になり、邦訳もフランス語からの重訳です。
エストニアは北欧の国で、かつてソビエト連邦を構成してました。ただ、本作に登場する異国の人たちはドイツ語話者です。
当初、母リンダの浮気相手がクマ、というのは比喩かと思ってました。本当にクマでした。猿人がいたり、ノミを育てて大きくしたり、荒唐無稽なことがまじめに語られます。
なお、レーメットには5歳上の姉がいます。
女性ひとりで子供ふたりを養う……と考えただけで大変そうですが、そんな雰囲気はないです。蛇の言葉で命じるだけで、動物たちが殺されにやってくるんです。そんなにすごい威力があるのに廃れてしまうとは、よっぽど訓練が大変なんでしょうね。
物語は、冒頭の「誰もいない」に向けて展開していきます。どうして、どうやって誰もいない状態になるのか。
笑えることがたくさんあって、それでも哀しくて、やるせない気持ちにさせられました。
2023年01月21日
クリス・ハドフィールド(中原尚哉/訳)
『アポロ18号の殺人』上下巻
ハヤカワ文庫SF2375〜2376
1973年。
アメリカは、アポロ18号を計画していた。これまでとは違って国防総省が費用を負担し、完全軍事目的となる。正クルーも予備クルーも、全員が軍のテストパイロットだ。
NASAが担当するのは、訓練や飛行管制、帰還まで。経営はヒューストンの飛行運用部門と空軍が担う。今回は、NSA(国家安全保障局)やホワイトハウスも関わってくる。
アメリカに対立するソ連は、宇宙ステーションを打ち上げるという。アルマースという、軍事偵察専用の設計であるらしい。4月上旬の打ち上げになると推測されていた。
大統領と親しいCIA長官は、懸念を深めている。ソ連に宇宙から覗かれては、機密を守りにくい。対処するため、4月中旬に打ち上げられるアポロ18号に、新たなミッションが追加された。
アポロ18号は月へ直行せず、地球軌道にとどまってアルマースとランデブーする。そのころはまだ、ソ連のクルーは搭乗前のはずだ。軌道上で観察し、可能なら機能停止に追いこむのだ。
アポロを搭載したサターンV(ファイブ)ロケットは、通常なら、ケープカナベラルからまっすぐ東へ打ち上げられる。地球の自転を充分に利用するためだ。アルマースの軌道に合わせるには、東海岸にそって北東に打ち上げなければならない。
アポロ18号は重く、すでに能力ぎりぎりだった。新たなミッションのために、さまざまなものが削られてしまう。
そのうえ国防総省は、ソ連が月で発見したものを知りたがっている。ソ連は、晴れの海の端ルモニエ・クレーターに月探査車を着陸させている。そこでなにかを発見したらしいのだ。
軍人であるクルーたちは、政治に翻弄されるのも慣れている。言われた通りに任務を果たそうとするが……。
一方、モスクワのルビャンスカではKGB(国家保安委員会)のヴィタリー・カルーギンが、うれしい知らせを受け取っていた。アポロ18号のクルーのなかに、10年以上前に仕込んだ駒がいたのだ。
初期の宇宙飛行士のなかには、すでに将軍になった者もいる。アポロ18号だけでなく、将来のアメリカ宇宙開発の現場にもたずさわることになるはずだ。
早速、利用しようと手配するが……。
アポロ18号計画がある架空の歴史を背景にしたスリラー。現実には、1972年12月のアポロ17号が最後です。
著者は、3度の宇宙飛行経験のある本物の宇宙飛行士。そのため、クルーの体験するさまざまなことが、すごくリアルに響いてきます。メカニカル的なことがきっちり書かれていて、SFを読んだ気になります。
その一方、スリラーはといえば……どうなんでしょうね。死人がでることは確かですけれど。犯人の見当は容易です。米ソ対立の行方もスリラーといえるのかもしれません。
両取りしようとして、焦点がばらけてしまったような印象が残りました。
なお、主人公は、カジミエラス(カズ)・ゼメキス。
偵察宇宙ステーションの搭乗候者でもあるテストパイロットだったのですが、任務中の事故で負傷し、その道は閉ざされてしまいます。アポロ18号には、クルーと軍の連絡将校として関わります。
さすがにアポロ18号の月での任務には立ち会えないので、途中から存在感がなくなります。
2023年01月26日
スティーヴン・ミルハウザー
(岸本佐和子/訳)
『エドウィン・マルハウス』福武書店
ウォルター・ローガン・ホワイトがジェフリー・カートライトと出会ったのは、小学校6年生のときだった。引っ越したこともあり、ジェフリーのことはたいして記憶に残っていない。憶えているのは、成績が良く、真面目で目立たず、眼鏡をかけて教室の一番前に座っていたことくらい。
それから10年。
ウォルターは古本屋で一冊の本を見つけた。題は『エドウィン・マルハウス −あるアメリカ作家の生と死(1943−1954)』。ジェフリーが書いた伝記だった。
東西の伝記史上に残る一大傑作にウォルターは驚く。それも、クラスメイトとして過ごしていたころに書き綴っていたのだ。
エドウィンは、傑作小説『まんが』を遺して11歳で亡くなった。『まんが』は不運なことに埋もれているが、エドウィンは、伝記の輝かしいページの中で翳ることなくきらめき続ける。
ジェフリーの行方は知れない。
1954年8月1日午前1時06分、エドウィン・エイブラハム・マルハウスは死んだ。生まれたのは、1943年8月1日午前1時06分。
住まいは、コネチカット州にある、のどかな郊外の町ニューフィールド。ジェフリーは、マルハウス家の隣に住んでいた。
1943年8月9日。
その日は、よく晴れた夏の日だった。ジェフリーは乳母車に乗せられて、母に連れられマルハウス家に行った。このときジェフリーは、生後6ヶ月と3日。
初めて会ったときから、ふたりは離れがたい存在になっていった。
ジェフリーが思うに、伝記の目的は、ひとりの人間の内なるシナリオを読むことにある。人生の表面だけをなぞることではない。
赤ん坊のころのエドウィンは、音と戯れることにのみ満足していた。音と意味を結びつけることはしない。ジェフリーには、エドウィンが音声の領域における大胆な試みをしていることが分かっている。だが、マルハウス夫人は、沈黙は音への愛着の裏返しであることを理解できなかった。
ジェフリーは2才の頃から毎晩、マルハウス家に遊びにいった。ジェフリーの母は育児から解放されるし、マルハウス夫人は、ジェフリーが一緒にいればエドウィンも言葉をしゃべるようになるのではないかと期待していた。
ジェフリーは、エドウィンのごく近いところで観察しつづけるが……。
伝記フィクション。
架空の夭折作家についての伝記を隣家の少年が書いたという設定です。
冒頭の、ウォルターによる復刻版によせた文章も、創作。
「ふう! 伝記作家って、悪魔だな」E.M.(談)
という抜きだしが入り、ジェフリーによる前書きがあり、いよいよ伝記が始まります。内容は、幼年期(0〜5才)、壮年期(6〜8才)、晩年期(9〜11才)に分けられてます。
エドウィンのことが赤裸々に綴られていきます。エドウィンは、天才作家というより、そこらにいてもおかしくない子供。読んでいくと、ジェフリーの非凡さに気づかされます。
エドウィンは本当に天才だったのか。
エドウィンという人間を、ジェフリーというフィルターを通して見ることになるので、ジェフリーにとって都合の悪いことは書いてません。その前提だと、この出来事の真相はこうだったんじゃないか、とかいろいろ考えてしまいます。
まさに、伝記作家って……。
2023年02月01日
ウィルキー・コリンズ(中島賢二/訳)
『白衣の女』全三巻/岩波文庫
1849年、夏の終わり。
ウォルター・ハートライトは、28歳の絵画教師。人伝に、好条件の仕事の話が舞い込む。
カンバランドにあるリマリッジ館のフレデリック・フェアリー氏が、若い婦人ふたりに水彩画の指導と、手隙時間で絵画コレクションの修復と表装をしてほしいという。
出発前夜。
ウォルターはひとり、ヒースの原野の中の曲がりくねった道を辿っていた。親しい人への挨拶をすませ、ロンドンに戻るところだ。四つの街道が交わるところをすぎ、突然、背後から肩に手をかけられた。
女だった。上から下まで真っ白な服を着ている。白衣の女は、ロンドンへの道を尋ねた。
驚いたウォルターが目の当たりにしているのは、ひとりぼっちの侘しげな女が途方に暮れている姿だ。ウォルターは思いやりと好奇心から、女の力になることを約束する。
ウォルターが明日にはカンバランドに行ってしまうことを伝えると、白衣の女はカンバランドを懐かしんだ。ハンプシャー出身だが、カンバランドの学校に通っていた時期があった。女にとって、リマリッジ館の亡くなったフェアリー夫人は大恩人だという。
ロンドンにつき、ウォルターは馬車に乗る女を見送った。
リマリッジ館でのウォルターの教え子は、マリアン・ハルカムとローラ・フェアリーのふたり。現当主のフェアリー氏は兄からリマリッジ館を受けついだが、独身で子供もおらず、ローラが相続人となっている。マリアンはローラの異父姉だ。
病弱なフェアリー氏は部屋から一歩も出ず、面会すらも容易でない。ウォルターが最初に会ったのは、マリアンだった。マリアンと打ち解けたウォルターは、白衣の女の話をする。
興味を抱いたマリアンがフェアリー夫人の手紙を調べると、謎の女はアン・キャセリックだと分かった。当時のアンは気むずかしく、ちょっとのことで応えてしまうような子供で、嘆かわしい健康状態にあった。そして、ローラと似ていたという。
ウォルターは、もうひとりの生徒ローラに、次第に心を寄せるようになる。隠しとおすつもりでいたが、ローラに気がつかれ、マリアンにも伝わってしまった。
実は、ローラには亡き父が決めた婚約者がいる。ハンプシャーのパーシヴァル・グライド卿だ。ウォルターとマリアンは話し合い、フェアリー氏に不審がられないように立ち去ることを決める。
そんなとき、ローラに匿名の手紙が届いた。グライド卿を告発する内容だった。手紙を見せてもらったウォルターは、アン・キャセリックを連想する。
ウォルターはアンと、フェアリー夫人の墓地で再会するが……。
ミステリ。
1860年の作品。コリンズの名前を不朽のものとした出世作。ミステリの先駆けとなった物語です。
書き繋ぐ形式になってます。一番手が、ウォルター・ハートライト。二番手は、フェアリー家の顧問弁護士ヴィンセント・ギルモア。手記のなかで、ギルモア弁護士が語ってます。
「フェアリー家の物語を、最も真実に近い形で第三者に提示するため、ハートライト氏が採用した方法は、事件の起きた時間的順序に従い、その事件の直接の当事者に事件を語らせることである。」
というわけで本作は、ウォルターが記録に残そうとしたフェアリー家の物語です。
グライド卿が、最初からあやしさ全開。ローラとの結婚が財産目当てであることは、言われなくても分かっちゃう。結婚してすぐにローラを殺してしまうのではないかと危惧していたのですが、もっとずっと複雑でした。(そうです。アンの告発も空しく、ローラはグライド卿と結婚してしまいます)
ウォルターに仕事を紹介したペスカ教授の底抜けの明るさといい、フェアリー氏の病を前面に押し出した態度といい、個性的な面々がそろってます。
200年近く昔の物語が、かえって新鮮でした。
2023年02月11日
ミロラド・パヴィチ(工藤幸雄/訳)
『ハザール事典[女性版]夢の狩人たちの物語』東京創元社
今回 『ハザール事典[男性版]夢の狩人たちの物語』でも、まったく同じことを書いてます。(コピー&ペーストしました)
ハザール族の起源は不明である。遺跡がきわめて乏しく、文書類も発見されていない。627年になってビザンティン皇帝ヘラクレイオスと同盟関係を結び、歴史に登場した。
あるときハザールの君主(カガン)は、夢を見た。その夢をどのように解くか。悩んだカガンは、夢占いに長けた学者3人を各地から呼び集めた。夢解きに成功した者の信ずる宗教に挙国一致して改宗するでろう、との大御心を表明しながら。
こうして、カガンの夏の離宮に3人の知恵者が参上した。ひとりはイスラームの信者、ひとりはユダヤ教徒、残るひとりがキリスト者だった。
〈ハザール論争〉が繰り広げられ、ハザールは改宗した。カガンがいずれの宗教を受け容れたのか、伝えられていない。
ハザールの都イティルは、カスピ海に注ぐヴォルガ河口にあった。ルーシ(キエフ・ロシア)の総攻撃により灰燼に帰したのは、943年。それからまもなく王国そのものも滅亡し、ハザール族は消えた。
1691年。
ヨアネス・ダウプマンヌスが『ハザール事典』を出版した。三部構成で、キリスト教陣営の文献からの引用、イスラームの関係文書による事項、ヘブライ語の手稿と伝承に基づく事項からなる。ハザール問題に関して蒐集された資料が網羅されていた。
また事典は、人物群像の伝記集でもあった。〈ハザール論争〉に加わった人々の生涯、論争を詳述し、または研究した数世紀間にわたる功労者の生涯などが載っていた。
このとき発行されたのは、500部。翌年、教皇庁異端審問所が禁書に指定して焚書の憂き目に遭い、免れたものも散逸して完本は残っていない。
本書は、ダウプマンヌス版『ハザール事典』の再現を狙い、最新資料を加えた再構成改訂版である。
という設定の、辞典風の物語。
巻末には索引までついている凝ったつくりで、内容は〈ハザール論争〉にまつわる用語・人物伝。
赤色の書…キリスト教からの視点
緑色の書…イスラーム教からの視点
黄色の書…ユダヤ教からの視点
という分け方をしてます。それぞれに対応する色のスピンまで用意されてました。(本についてるうすい紐状のひも)
また、付属文書もふたつついてます。
ひとつは、テオクティスト・ニコルスキ神父の告解全文。初版本の編集者で、ある方法によりハザールの関連情報を集め、ダウプマンヌスに『ハザール事典』を印刷してもらいます。
もうひとつは、ムアヴィア・アブゥ・カビル博士殺害事件審理記録の抜粋。殺人事件の容疑者は、ドロタ・シュルツ博士。いずれも、黄色の書に項目がある研究者です。
本書をたとえるならば、順不同で読む連作短編集。読んでいくごとに知識が蓄積していき、ハザールをめぐる世界が立ち上がってきます。
読みどころは、視点の違いからくるズレ。ハザールの王女〈アテー〉や〈カガン〉の項目は、赤・緑・黄それぞれの書にありますが、書かれていることは似てたりまるで違ったり。ハザールの改宗先も、それぞれが自分の陣営になったと述べてます。
なお、ハザールは実在した国です。ややこしいことに、文化だの風習だのは著者の想像です。少々、オカルト気味でした。
さて[女性版][男性版]の違いですが、単行本版で17行です。(文庫版では10行らしいです)
あちこち少しずつ違うんじゃないかと[女性版][男性版]を見比べながら読んでました。なかなかそれらしい箇所が出てこないと思っていたら、まとまってあるではないですか。
282ページ。[女性版][男性版]共に、シュルツ博士の項目でした。ご親切にも太ゴシック体にして分かりやすくなってます。
[女性版]の該当箇所は、付属文書1に関係してます。
[男性版]の該当箇所は、付属文書2に関係してます。
両方読んでみて思うのは、どちらか片方だけ読めば充分だった、ということです。それも読んでみないと分からないことでしたが。
2023年02月11日
ミロラド・パヴィチ(工藤幸雄/訳)
『ハザール事典[男性版]夢の狩人たちの物語』東京創元社
今回『ハザール事典[女性版]夢の狩人たちの物語』でも、まったく同じことを書いてます。(コピー&ペーストしました)
ハザール族の起源は不明である。遺跡がきわめて乏しく、文書類も発見されていない。627年になってビザンティン皇帝ヘラクレイオスと同盟関係を結び、歴史に登場した。
あるときハザールの君主(カガン)は、夢を見た。その夢をどのように解くか。悩んだカガンは、夢占いに長けた学者3人を各地から呼び集めた。夢解きに成功した者の信ずる宗教に挙国一致して改宗するでろう、との大御心を表明しながら。
こうして、カガンの夏の離宮に3人の知恵者が参上した。ひとりはイスラームの信者、ひとりはユダヤ教徒、残るひとりがキリスト者だった。
〈ハザール論争〉が繰り広げられ、ハザールは改宗した。カガンがいずれの宗教を受け容れたのか、伝えられていない。
ハザールの都イティルは、カスピ海に注ぐヴォルガ河口にあった。ルーシ(キエフ・ロシア)の総攻撃により灰燼に帰したのは、943年。それからまもなく王国そのものも滅亡し、ハザール族は消えた。
1691年。
ヨアネス・ダウプマンヌスが『ハザール事典』を出版した。三部構成で、キリスト教陣営の文献からの引用、イスラームの関係文書による事項、ヘブライ語の手稿と伝承に基づく事項からなる。ハザール問題に関して蒐集された資料が網羅されていた。
また事典は、人物群像の伝記集でもあった。〈ハザール論争〉に加わった人々の生涯、論争を詳述し、または研究した数世紀間にわたる功労者の生涯などが載っていた。
このとき発行されたのは、500部。翌年、教皇庁異端審問所が禁書に指定して焚書の憂き目に遭い、免れたものも散逸して完本は残っていない。
本書は、ダウプマンヌス版『ハザール事典』の再現を狙い、最新資料を加えた再構成改訂版である。
という設定の、辞典風の物語。
巻末には索引までついている凝ったつくりで、内容は〈ハザール論争〉にまつわる用語・人物伝。
赤色の書…キリスト教からの視点
緑色の書…イスラーム教からの視点
黄色の書…ユダヤ教からの視点
という分け方をしてます。それぞれに対応する色のスピンまで用意されてました。(本についてるうすい紐状のひも)
また、付属文書もふたつついてます。
ひとつは、テオクティスト・ニコルスキ神父の告解全文。初版本の編集者で、ある方法によりハザールの関連情報を集め、ダウプマンヌスに『ハザール事典』を印刷してもらいます。
もうひとつは、ムアヴィア・アブゥ・カビル博士殺害事件審理記録の抜粋。殺人事件の容疑者は、ドロタ・シュルツ博士。いずれも、黄色の書に項目がある研究者です。
本書をたとえるならば、順不同で読む連作短編集。読んでいくごとに知識が蓄積していき、ハザールをめぐる世界が立ち上がってきます。
読みどころは、視点の違いからくるズレ。ハザールの王女〈アテー〉や〈カガン〉の項目は、赤・緑・黄それぞれの書にありますが、書かれていることは似てたりまるで違ったり。ハザールの改宗先も、それぞれが自分の陣営になったと述べてます。
なお、ハザールは実在した国です。ややこしいことに、文化だの風習だのは著者の想像です。少々、オカルト気味でした。
さて[女性版][男性版]の違いですが、単行本版で17行です。(文庫版では10行らしいです)
あちこち少しずつ違うんじゃないかと[女性版][男性版]を見比べながら読んでました。なかなかそれらしい箇所が出てこないと思っていたら、まとまってあるではないですか。
282ページ。[女性版][男性版]共に、シュルツ博士の項目でした。ご親切にも太ゴシック体にして分かりやすくなってます。
[女性版]の該当箇所は、付属文書1に関係してます。
[男性版]の該当箇所は、付属文書2に関係してます。
両方読んでみて思うのは、どちらか片方だけ読めば充分だった、ということです。それも読んでみないと分からないことでしたが。