月に10冊は読みましょう、とはじめた2019年。
とりあえず目標達成。タイトル数でも100をカウントすることができました。できましたけど、読むタイミングが合ってなかった本が少なくなく、悪いことをしてしまいました。
そんな中でも、おもしろい本は確かにあります。
それでは、2019年に読んだベスト本をご紹介します。
なお、毎年、ベスト本の中でもとりわけお気に入りの一冊を最初にもってきているのですが、今回は読んだ順番です。
ニール・ゲイマン
『墓場の少年 ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活』
ある夜、一家が殺され、よちよち歩きの赤ん坊だけが生き残った。犯人の目的はその子だったが、たまたま墓地に迷いこんでいて難を逃れたのだ。赤ん坊はノーボディと名づけられ、墓地の幽霊たちと、特別住民権をもつサイラスによって育てられる。
ノーボディは墓場で成長していくが……。
映画化されたおかげで、文庫版が出ました。とはいえ、読んだのは単行本版ですが。
宣伝文句だったか、どなたかの書評だったか、本書を、キプリングの《ジャングルブック》になぞられている表現を見かけました。
そういえば、ジャングルブックを読んだことがないような?
忘れているだけかもしれませんが、この機会にと、新訳版を手に取りました。ラドヤード・キプリング『ジャングル・ブック』。
いい物語には、関連した他の本を読ませる伝播性がありますね。
エレン・クレイジス
『その魔球に、まだ名はない』
ケイティ・ゴードンは野球が大好き。実力もある。でも、女の子というだけで、リトルリーグに入ることができなかった。なぜなら、野球は最初からずっと男子専用のスポーツだから! 納得できないケイティは、リトルリーグがまちがっていることを証明するため、いたかもしれない女子野球選手について調べはじめるが……。
児童書です。
時代は、1950年代後半。ケイティは女の子ということで差別され憤りますが、そういうケイティ自身、別の差別をしていることもあります。
児童書ゆえの都合のよさもあるのですが、いろいろと考えさせられました。女子の野球選手のことはもちろん、さまざまなタイプの差別について知ることができます。子どもはもちろん、大人にも読んでほしい一冊。
実は、傑作だとは思っていたのですが「気になる本」のリストにはずっと入れてませんでした。というのも、どうもタイトルが居心地悪くって。語呂がよくないといいますか。
もうちょっとどうにかできなかったのか、それだけが残念。
イアン・マクドナルド
『旋舞の千年都市』
イスタンブールはアジアとヨーロッパが同居する町。月曜日の朝、ネジュデットが乗るトラムで自爆テロが発生した。犯人以外、誰も死ななかった不可思議なテロだった。ネジュデットは、その日以来、ジンを見るようになるが……。
読んでいる最中は圧倒されていて、すごい、などと考えていなかったのですが、しばらくたって振り返ってみると、すごい物語だったな、と。
自爆テロに巻きこまれるネジュデット、ネジュデットを見張っていたジャン、ジャンを孫のようにかわいがっているゲオルギオス、ゲオルギオスの住まいの下の階で画廊を営むアイシェ、アイシェの配偶者のアドナンと、アイシェが入手した半分のコーランを探しているレイラ。
群像劇ゆえに細切れではあるのですが、みんな生きてました。後からじわじわきます。
クレア・ノース
『ホープは突然現れる』
ホープ・アーデンは、人に記憶されない特異体質を持つ。誰にも頼ることができず、泥棒になるしか道はなかった。自信を持って生きてきたが、クリサリス・ダイヤモンドを狙ったために状況が一変。ホープは、世界的大企業〈プロメテウス社〉に狙われる身となってしまうが……。
主人公ホープの一人称。このホープの語りが独特。すぐに忘れられてしまう特殊体質ゆえか、アッサリしている一方、しつこくもある。
一人称ものは、語り手を受け入れられるかどうかがすべて。けっきょく犯罪者なので、おもしろくても合わない人もいるんでしょうね。自分は合う人でよかった〜。
ジェニファー・イーガン
『マンハッタン・ビーチ』
アナは幼いころ父エディに、マンハッチン・ビーチにある屋敷に連れていかれた。その3年後、父が失踪してしまう。そして5年がたち、アナは、友だちに誘われて行ったナイトクラブでデクスター・スタイルズと会う。アナは、彼がマンハッチン・ビーチの屋敷の主だと思いだすが……。
ジェニファー・イーガンは、ピュリッツァー賞作家だそうです。かなり実験的な作品を書く人だそうで。本書もいろんな要素がつまってました。
説明しづらい物語、最高ですね。読み手を選ぶとは思いますが。
では最後に、ベストに入れるかどうか迷った挙げ句に外してしまった物語を。名作だと思うのですが、いかんせん短編集という仕掛けが性に合わない。
連作短編集なので、物語の間の書かれていないことを読める才能があればよかったのですが……。
キース・ロバーツ
『パヴァーヌ』
イギリスのエリザベス1世が暗殺され、ヨーロッパは戦う教会の支配下にはいった。僧会と貴族が君臨する社会構造は盤石。教会はさまざまなものを禁止し、異端として制限していく。20世紀も半ばになると、至る所で不平のつぶやきが聞かれ、それが次第に高まっていくが……。