ミステリを読んでいると、かなりの確立で警察がでてきます。ほとんどのミステリは犯罪小説なんでしょうから、それも当然ですね。
ミステリがアメリカ発なら、登場するのはアメリカの警察です。ときには、複数の警察組織が関わることもあります。そんなとき不可欠情報となってくるのが、アメリカの警察制度です。
アメリカの警察制度は、日本とはまったく違います。
日本でも、警視庁と県警はなんだか違う感じがするとか、本部と所轄は違う雰囲気がするとか、あるかもしれません。でも、それらは名前が違うだけ。
アメリカの警察制度は、日本とはまったく違うんです。
作中できちんと説明されることもあれば、基本なので知ってて当然だから書かない、あるいは、ストーリーには無関係だから省略する、ということもあるでしょう。
アメリカ人にとっては、それが〈普通〉なのですしね。
そんな読書経験をそれなりに経ていると、なんとなく分かった気になってきます。とはいえ、本当に把握できているのか、理解しているのか、確信はありません。
そろそろ、きちんと学んでおくのもいいかもな。
というわけで、読んでみました。
冷泉彰彦
『アメリカの警察』
BLM運動をきっかけに、日本でもアメリカの警察官に対して 疑問の声が高まっています。 本書は、在米作家が日本とはまるで違う常識で動いている アメリカの警察の「生の姿」を徹底的にリポートします。
・連邦の警察と州の警察は何が違うのか?
・アメリカではお金を払えば警察官になれる?
・司法取引とは何か?
・映画によく出てくる「保安官」の役割は?
・警察官は本当に人種差別している? など、多くの日本人が持つ疑問に答える形で アメリカの警察、そしてアメリカ社会の実態を知ることができる一冊です。
(出版社による内容紹介より)
200ページちょっとの薄い新書でした。学ぶとか、これで勉強するとかいうより、再確認する感じでしょうか。
本書の内容は、こちら。
第1章、組織としてのアメリカの警察
第2章、FBI
第3章、FBI以外の連邦警察組織
第4章、銃社会で苦悩する警察
第5章、逮捕と司法取引
第6章、アメリカの警察は人種差別的なのか?
いろんな警察組織があってそれぞれが独立している、という話は第1章。
さまざまなミステリで蓄積してきた知識を、ここで整理できました。アメリカ、すごすぎ。考えていた以上に細分化されてました。
アメリカには3万くらいの警察があると考えられる。
って、想像以上です。支部が3万ではないですよ。まったく別の警察が3万あって、それぞれが別個に、連携したりしながら活動しているって話です。
そして、今回の目的とは外れますが、今回の収穫のひとつが第4章。銃社会の話は、もっとも腑に落ちました。
銃がない地域で生活していると、銃社会って謎です。
内戦が勃発しているわけでも、警察が機能していないわけでもないのに、なぜ一般市民に銃が必要なのか。しかも、たびたび銃による事件が発生していて死者もでています。
なかなか規制されないのが不思議でなりませんでした。
よく耳にするのは、建国以来の伝統という精神に由来すること。それから「全米ライフル協会が……云々」という政治がらみのこと。
だとしても時代は変わっていきます。BLM運動などのように、市民が立ち上がることはないのでしょうか?
本書を読んで、ようやく理解できました。銃保有派の心理状態ってやつを。
保有派にとっても、社会に銃が溢れている状況はよくないものです。ではなぜ規制できないのか。
社会に銃が溢れている以上、銃で襲われる可能性があり、防備のためには自分も銃で武装しないと不安でならない!
あー、なるほど。
不安が根底にあるのですね。誰かを傷つけたいのではなく、悪者を成敗してやるという正義感でもなく。ただただ、持っていないと不安で仕方ない。
攻撃は最大の防御ですか?
不安感を解消するところから始めなきゃならないとは、前途多難と思わざるを得ません。