書的独話

 
2021年のひとりごと
01月01日 展望、2021年
01月16日 筋書きだけのドラマ
01月22日 モモと時間の国
02月28日 2020年、ベスト
03月01日 合言葉は【古代】
03月18日 英国辞書史の裏
05月15日 〈時間超越者〉
05月26日 言文一致体と夏目漱石
06月20日 合言葉は【火星】
06月23日 ようやく、2000
06月30日 中間報告、2021年
07月11日 理想のベートーヴェン
07月28日 簿記は世界を変えるのか
08月31日 本の持つ力
09月21日 アメリカの警察
11月23日 ある奴隷の一生
12月13日 バッタ博士の3年間
12月31日 総括、2021年
 

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2021年01月16日
筋書きだけのドラマ
 

 ときどき、古くからある名の知れた本を読みます。
 読んだような気もするけれど覚えていないとか、読んでいるはずだけど思い出せないとか、読んだかどうかすら分からなくなっている物語たち。
 さまざまですが、共通しているのは

 ほぼ記憶にない

 ということです。記憶になければ読んだとは言えません。
 そんな中に、いろんなところで引用されている、ウィリアム・シェイクスピアがいます。
 売上げ世界一の戯曲家らしいですね、シェイクスピアは。残念ながら戯曲を読む機会は少なく、航本日誌で記録が残っているのは4冊のみ。

 2005年の『夏の夜の夢・あらし
 月夜の森で繰り広げられる妖精と恋人たちの物語「夏の夜の夢」と、孤島に流され魔術を身につけたミラノ大公が復讐をもくろむ「あらし(テンペスト)」の合本。

 2017年の『ヴェニスの商人
 友人のために、シャイロックから借金したヴェニスの商人アントーニオー。担保として、自身の胸の肉1ポンドを差し出す約束をする。商船が戻れば返済できるはずだった。ところが船は嵐に沈み、財産のすべてを失ってしまう。
 シャイロックから1ポンドの肉を求められるが……。

 2017年の『リア王
 退位を決めたリア王は、3人の娘たちに問うた。誰がもっとも父を愛しているのか。長女と次女は言葉巧みに父王を喜ばせる。ところが末娘コーディリアは、実直な言葉を口にした。
 娘たちの本心を見抜けなかったリア王は、上の2人の娘に領土や財産すべてを分け与え、コーディリアを勘当するが……。

 2019年の『マクベス
 ダンカン王に仕えているグラーミスの領主マクベスは、荒野で3人の魔女と遭遇した。魔女たちはマクベスのことを、グラーミスの領主、コーダーの領主、やがては王になる者、と呼ぶ。
 いぶかしく思っているところに、知らせがもたらされた。王がマクベスに、コーダーを与えるという。マクベスは、やがては王になるという予言にとりつかれてしまうが……。

 これからも少しずつ読んでいくつもりでいたのですが、そんなときに、出会ってしまいました。

河合祥一郎
『あらすじで読むシェイクスピア全作品』祥伝社新書

 シェイクスピア作品のあらすじを中心にした新書です。全戯曲40作と詩篇についての解説、登場人物相関図や名台詞の説明まであります。
 手っ取り早くていいじゃないですか。

 なんて考えてたら

 序章のまえの「はじめに」書いてありました。
 本書は「入門書というより、すでにシェイクスピア作品を読んだ(はずの)人の覚書」ですよ、と。

 すみません。

 シェイクスピア独特の弱強五歩格、二行連句、二行連句が繰り返された英雄詩体、等々。
 解説を興味深く読みました。それらを日本語に直すのにどういう注意が払われるか。どう読めば、元のリズムを感じられるのか。
 肝心のあらすじは、簡略化されてしまうと面白みが感じられず。とにかく頭に入ってこない。筋書きだけでは、どこがおもしろいのか分からないような物語も。

 筋書きだけでもおもしろいのは、すでに読んでいる物語。記憶をたぐり寄せながら、人間ドラマを再現していく感覚でした。
 すでに読んでいる人向けとは、そういうことか、と。
 やっぱりちゃんと読まなきゃだめですね。

 ただ、記憶にある分、名台詞はそれだけじゃないと思うな、などと失礼なことを考えてしまうのですが。


 

 
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