ときどき、古くからある名の知れた本を読みます。
読んだような気もするけれど覚えていないとか、読んでいるはずだけど思い出せないとか、読んだかどうかすら分からなくなっている物語たち。
さまざまですが、共通しているのは
ほぼ記憶にない
ということです。記憶になければ読んだとは言えません。
そんな中に、いろんなところで引用されている、ウィリアム・シェイクスピアがいます。
売上げ世界一の戯曲家らしいですね、シェイクスピアは。残念ながら戯曲を読む機会は少なく、航本日誌で記録が残っているのは4冊のみ。
2005年の『夏の夜の夢・あらし』
月夜の森で繰り広げられる妖精と恋人たちの物語「夏の夜の夢」と、孤島に流され魔術を身につけたミラノ大公が復讐をもくろむ「あらし(テンペスト)」の合本。
2017年の『ヴェニスの商人』
友人のために、シャイロックから借金したヴェニスの商人アントーニオー。担保として、自身の胸の肉1ポンドを差し出す約束をする。商船が戻れば返済できるはずだった。ところが船は嵐に沈み、財産のすべてを失ってしまう。
シャイロックから1ポンドの肉を求められるが……。
2017年の『リア王』
退位を決めたリア王は、3人の娘たちに問うた。誰がもっとも父を愛しているのか。長女と次女は言葉巧みに父王を喜ばせる。ところが末娘コーディリアは、実直な言葉を口にした。
娘たちの本心を見抜けなかったリア王は、上の2人の娘に領土や財産すべてを分け与え、コーディリアを勘当するが……。
2019年の『マクベス』
ダンカン王に仕えているグラーミスの領主マクベスは、荒野で3人の魔女と遭遇した。魔女たちはマクベスのことを、グラーミスの領主、コーダーの領主、やがては王になる者、と呼ぶ。
いぶかしく思っているところに、知らせがもたらされた。王がマクベスに、コーダーを与えるという。マクベスは、やがては王になるという予言にとりつかれてしまうが……。
これからも少しずつ読んでいくつもりでいたのですが、そんなときに、出会ってしまいました。
河合祥一郎
『あらすじで読むシェイクスピア全作品』祥伝社新書
シェイクスピア作品のあらすじを中心にした新書です。全戯曲40作と詩篇についての解説、登場人物相関図や名台詞の説明まであります。
手っ取り早くていいじゃないですか。
なんて考えてたら
序章のまえの「はじめに」書いてありました。
本書は「入門書というより、すでにシェイクスピア作品を読んだ(はずの)人の覚書」ですよ、と。
すみません。
シェイクスピア独特の弱強五歩格、二行連句、二行連句が繰り返された英雄詩体、等々。
解説を興味深く読みました。それらを日本語に直すのにどういう注意が払われるか。どう読めば、元のリズムを感じられるのか。
肝心のあらすじは、簡略化されてしまうと面白みが感じられず。とにかく頭に入ってこない。筋書きだけでは、どこがおもしろいのか分からないような物語も。
筋書きだけでもおもしろいのは、すでに読んでいる物語。記憶をたぐり寄せながら、人間ドラマを再現していく感覚でした。
すでに読んでいる人向けとは、そういうことか、と。
やっぱりちゃんと読まなきゃだめですね。
ただ、記憶にある分、名台詞はそれだけじゃないと思うな、などと失礼なことを考えてしまうのですが。