2020年も月に10冊は読む、と目標をたてました。おかげさまで、タイトル数でも100を達成。2年目ともなると、うまくペース配分できるようになってきたかな、と。
それでは、2020年に読んだベスト本をご紹介します。
フランシス・ハーディング
『カッコーの歌』
トリスは11歳。兄のセバスチャンが戦争で亡くなってから、両親にとってのいい子でいようと努力してきた。妹のペンはそんなトリスのことが大嫌い。憎んでさえいる。
ある日トリスは、グリマーに落ちてしまった。びしょ濡れになって帰ってきて、それ以来、ふつうでなくなってしまう。記憶はあいまい。食欲は異常。
そんな中、トリスはペンの不可解な行動に気がつくが……。
英国幻想文学大賞受賞作。
区分けとしては児童書。
セバスチャンが亡くなったのが、第一次世界大戦。もう近代に入っていますが、蒸気やらゼンマイ仕掛けやらが似合いそうな、そういう雰囲気でした。
とにかく謎がたくさん。
そもそも主人公のトリスが、自分で自分の正体が分からない。両親はなにかを隠しているし、妹のペンはコソコソなにかやってます。
机の引き出しに届くジョナサンからの手紙も謎だし、ジョナサンの婚約者ヴァイオレットが冬をまとっているのも不思議。
それらがすべて、きれいに解決するんです。
やはり物語は解決しなければ。
マイク・レズニック
『暗殺者の惑星』
ジェリコは暗殺者。共和国から、コンラッド・ブランド殺害を依頼された。共和国は、ブランドのいる植民惑星〈ヴァルプルギス〉を封鎖したが、送りこんだ工作員は、ことごとく失敗している。
ヴァルプルギスは、魔女集団や悪魔崇拝集団たちの星だった。悪を信奉し、俗権政府はあるものの、実質的には神権政治が行われている。侵入したジェリコは、現地人になりすまそうとするが……。
SF。
古いです。40年近く前の物語。
舞台となる世界は異質ですが、異質でも、運営していくためのルールがきっちりあります。そうでなければ社会は成り立ちません。
ジェリコはルールを探りながら、ブランドを探索します。そのひとつひとつ、手探りしていく過程がおもしろいです。ちょっと通行人を殺して反応を見てみる、という物騒な手段ですが。
マックス・バリー
『機械男』
エンジニアのチャーリー・ニューマンは、事故で右脚を失ってしまう。既存の義足は、満足のいくものではなかった。義肢の目標が生体を模倣することにあることが間違っているのだ。そこでチャーリーは、自足型の脚を造った。
やがてチャーリーは、義足も二脚でひと組だと気がつき、自ら左脚も潰してしまう。その行動に商機を見いだした会社は、チャーリーの研究を促進させるが……。
奇想天外。
ないなら造ればいいじゃん、自分で! というマッド・サイエンティストもの。
チャーリーは社会とズレてますが、所属している会社もズレてます。みんながみんな、ズレている。ズレってなんでしょうね。
チャーリー・ジェーン・アンダーズ
『空のあらゆる鳥を』
魔女のパトリシアは13歳のとき、天才科学少年のロレンスと仲良くなった。ふたりは学校で他の生徒たちとなじめず、同じように疎外されていた。
そのころ暗殺結社のローズは、世界が滅びる未来のビジョンを見ていた。その中心にいるのはパトリシアとロレンス。しかし、掟により未成年を殺すことはできない。そこでローズは学校に潜入し、ふたりの仲を引き裂いた。
そして10年。魔法学校で学んだパトリシアは、パーティでロレンスと再会するが……。
核になるのが、世界の滅亡。そこにいたるまでが、長いこと長いこと。というのも、世界の滅亡よりも、パトリシアとロレンスが重要だから。
ふたりの物語ですから、当然ですよね。
最初に呈示される「木は赤いか?」という質問の答え、きちんと(?)あります。幼少期にふたりが関わり去っていったものについても語られます。
最初から最後まで、きちんと繋がっているのが心地いいです。