ミシェル・ペイヴァー《クロニクル 千古の闇》の舞台は、6000年前のヨーロッパ北西部。独特な世界観が特徴でした。
読んでいてふと思いついたのが、
古代世界が舞台の物語を他にも知っているぞ
というわけで【古代】をキーワードにして、物語を集めてみました。簡単な紹介とコメントもつけてあります。
紹介文は読了時に書いたものか、データベースのものをお借りしました。コメントは記憶をかき集めて書きました。本を手に取って内容を確認したりはしてません。
もしかすると、トンチンカンなことを書いているかも?
ひとつの目安として、読んだ年を併記しました。
なお【古代】の定義ですが、勝手に、紀元前1000年くらいまで、としました。
感覚としては、奈良時代あたりまでは【古代】かな、と思います。ところが日本に合わせると、ちょっと困ったことになるのです。
正直に書くと、テーマの【古代】が途中から【中国】になってしまうのです。そんなわけで、紀元前1000年にしました。
アーリア人がガンジス川流域に移動したころ。
中国の3番目の王朝、周が成立したころ。
統一イスラエル王国でダヴィデ王が即位したころ。
日本では縄文時代から弥生時代に変わるころ。
それから、SFの名作を入れるかどうか迷ったのですが、ネタバレになるのでやめました。
また、『古事記物語』(鈴木三重吉)と『小説「聖書」旧約篇』(ウォルター・ワンゲリン)は省きました。
並びは、舞台となった時代が古い順です。
読書の参考になればうれしいです。
クリス・ネヴィル
『槍作りのラン』
2005年の読了本。
舞台は、原始時代。火と石器を使いはじめていたころなので、おそらく前期旧石器時代(260万年〜30万年前)のはず。
SFレーベルから出てますが、SFという雰囲気はなく、宗教が生まれる瞬間が書かれていた……ように思います。
人類が火と石器を使い始めていたころ。本来は狩人となるべきランは、賢者として、また槍作りとして例外的な地位を獲得していた。ところが、部族にはもうひとり、狩りをしない男がいた。なんの役にも立たないフォルウを、部族の男たちは始末することに決めるが……。
水樹和佳子
『イティハーサ』
最後に読んだのは2011年。全7巻。
舞台は一万年以上前の古代日本。
はじめにおわした〈目に見えぬ神々〉に代わって〈目に見える神々〉が現れ、世界は不穏な時代へと突入していきます。
漫画ですが、言葉の美しさがとても心地いいです。言葉だけでなく、絵もとても丁寧で美しいのですが、独特すぎて受けつけない、という人もいるそうで残念に思います。
ほぼラストの、書かれなかった「4文字の言葉」の持つ重さときたら、感嘆しきりです。
鷹野は"目に見えぬ神々"への信仰を抱く部族の出身。部族は"目に見える神々"の一人、威神・鬼幽によって滅ぼされてしまった。鷹野は、難を逃れた仲間と共に威神を倒すべく旅立つ。民の危機に手を差し伸べず"目に見えぬ神々"はいずこに消えてしまったのか? そして"目に見える神々"はいかにして誕生したのか?
ミシェル・ペイヴァー
《クロニクル 千古の闇》
2021年に全六巻を一気読み。
『オオカミ族の少年』『生霊わたり』『魂食らい』『追放されしもの』『復讐の誓い』『決戦のとき』
舞台は、6000年前のヨーロッパ北西部。
身体に刺青を入れ、自然を信仰し、氏族と掟とに生きている人びとが活躍します。当時の感覚で書かれており、安易に現代の名称を使ったりはしてません。
主人公のトラクは、12歳で孤児となります。そこから〈魂食らい〉と呼ばれる魔導師たちとの死闘が繰り広げられます。
物語の終わるころには、トラクは15歳。たった3年間の出来事だったとは!
トラクは父とふたりきりで森で暮らすオオカミ族の少年。ある日、悪霊を宿した大クマに襲われ、父が亡くなってしまった。
トラクは父の遺言に従い〈天地万物の精霊〉が宿る山を目指して旅立つ。途中、オオカミのウルフが仲間となり、ワタリガラス族のレンと出会った。トラクは、影をくだくと予言された〈聞く耳〉だと聞かされるが……。
(初巻『オオカミ族の少年』より)
高野史緒
『ラー』
2019年の読了本。
舞台は古代エジプト。エジプト第4王朝クフ王の時代。紀元前2560年あたり。(下記紹介文では、紀元前2624年になってます。物語執筆当時より研究が進んで、年代がズレたのでしょう。おそらく)
主人公は現代人。ピラミッドの建設現場を見たい!とタイムトラベルしたのに予期せぬものを見てしまって、あああああ。その予期せぬものがなんだったか、もう思い出せません。対立組織の抗争に巻き込まれていたような……。
ピラミッドの謎に魅せられ、その生涯を"タイムマシン"の開発に費やした現代人ジェディは、紀元前2624年への時間跳躍に成功する。だが、クフ王の治世下にあるエジプトで彼が目にしたのは、建造途上にあるはずのピラミッドが発掘されている現場だった。なぜかジェディを崇拝する監督官のメトフェルもまた、その秘密については固く口を閉ざす。ピラミッドとは何か? その目的とは? ―帰還期限が迫るなか煩悶するジェディは、ついにクフ王その人への謁見の機会を得るが…古代エジプト哲学とSF的奇想を融合させた、『アイオーン』の著者による新境地。
(「BOOK」データベースより)
クリスチャン・ジャック
《自由の王妃アアヘテプ物語》
2017年に、全3巻を一気読み。
『闇の帝国』『二つの王冠』『燃えあがる剣』
舞台は、エジプト第17王朝。紀元前1690年。ちなみに、次の第18王朝から新王国時代です。
エジプトはヒクソスに侵略され、ファラオも亡くなっています。アアヘテプは王妃テティシェリの娘として登場し、エジプトを解放するために立ち上がります。
すごく勧善懲悪で、主人公側がヨイショされすぎだったような? 下記紹介文で言及されているセケンは、アアヘテプの夫。このミイラの状態は覆せないので、悲劇も起こります。
今日まで保存され、カイロ博物館に展示されている第十七王朝のファラオ、セケン=エン=ラーのミイラ。鼻は無残にも砕かれ、後頭部が大きく陥没したそのミイラは、壮絶な死を今に伝えている。いったい、ファラオに何が起こったのか―。物語の魔術師、ラムセス・シリーズのクリスチャン・ジャックが時空を超え、紀元前一六九〇年、ヒクソスの騎馬軍隊によって支配されたエジプトを舞台に最後に残された自由の地、テーベを守るために立ちあがった十八歳の王女、アアヘテプの活躍を生き生きと描き出す。ファン待望の最新作。
(「BOOK」データベースより)
宮城谷昌光
『天空の舟 小説・伊尹伝』
2011年の読了本。
古代中国の「夏」が舞台。紀元前1600年頃。
司馬遷の『史記』に記されている最初の王朝が「夏」で、伊尹は、その次の王朝「商」の宰相となった人物です。
そもそも「夏」も「商」も、つい最近まで伝説扱いだったはず。資料を集めるにしても、一次資料はほとんどなかったのではないかと思います。『史記』ですら紀元前91年の成立なんですから。
かなり創作が入っていると思いますが、そこは許容しないといけませんね。
商の湯王を輔け、夏王朝から商王朝への革命を成功にみちびいた稀代の名宰相伊尹の生涯と、古代中国の歴史の流れを生き生きと描いた長篇小説。桑の木のおかげで水死をまぬがれた〈奇蹟の孤児〉伊尹は、有□氏の料理人となり、不思議な能力を発揮、夏王桀の挙兵で危殆に瀕した有□氏を救うため乾坤一擲の奇策を講じる。新田次郎文学賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
□は、草冠に「辛」
O・R・メリング
『歌う石』
2021年、再読しました。
古代アイルランドが舞台。推定、紀元前1500年ごろ。アイルランドの古写本《侵略の書》がベースとなっていて、それが紀元前1500年ごろとされているため。
神話に片脚つっこんでます。
主人公のケイは現地人ではないため、滅びゆくトゥアハ・デ・ダナーン族のことを客観的な視点で見ています。行動を共にするアエーンは内側から見ているので、その対比が印象的でした。
みなしごのケイは〈歌う石〉によって、紀元前のイニスフェイル(古代アイルランド)へと導かれた。当地で、記憶をなくした少女アエーンと出会い、共に、滅びつつあるトゥアハ・デ・ダナーン族を救うため、4つの宝を求めて旅立つが……。
クリスチャン・ジャック
『太陽の王ラムセス』
2013年の読了本。全五巻。
舞台は、エジプト第19王朝。紀元前1300年ごろ。
ラムセス2世の物語です。ラムセス2世は、紀元前1314年〜1224年ごろ、あるいは紀元前1302年〜1212年ごろの人物、とされてます。
ファラオの座をめぐっての兄弟間のあれこれ。ヒッタイト帝国との戦争とか和平とか。妻たちとのいろいろ。さらに建築物は数知れず。
旧訳聖書に登場するモーセが生まれたのがラムセス2世の治世だったらしいです。が、本書にあったかは忘却。
ちなみに、映画「ハムナプトラ」で殺されてしまうファラオは、ラムセス2世の父親です。
紀元前1300年頃、新王朝時代。エジプトの王、ファラオ、セティ一世の次男として、生をうけたラムセス二世は、父親に導かれ、険しく、危険に満ちたファラオへの道を歩み始める…。情熱的で熱血漢に成長した、ラムセスに対し、狡猾で計算高い長兄のシェナル。ファラオの座を巡って、血で血を洗う骨肉の争いが始まった。愛と友情、謀略と裏切り、入り乱れる欲望と欲望。14歳のラムセスに過酷な運命が襲いかかる…。古代エジプトの大地を縦横無尽に駆け巡る、壮大な歴史ロマン。
(「BOOK」データベースより)
宮城谷昌光
『王家の風日』
2012年の読了本。
舞台は、古代中国の2番目の王朝「商」の末期。紀元前1100年くらいでしょうか。
商の受王の叔父にあたる箕子が中心人物となった群像劇。後に周の文王となる昌や、太公望と呼ばれることになる羌望も登場します。
神々が治める時代(商)から、人が治める時代(周)への移り変わり、という感じでした。確か。
六百年に及ぶ栄華を誇る古代中国商(殷)王朝の宰相箕子は、新興国周の勢力に押されて危殆に瀕した王朝を救うため死力を尽す。希代の名政治家箕子の思想を縦糸に、殷の紂王、周の文王、妲己、太公望など史上名高い暴君、名君、妖婦、名臣の実像を横糸にして、古代中国王朝の興亡を鮮かに甦らせた長篇歴史ロマン。
(「BOOK」データベースより)
宮城谷昌光
『太公望』
2001年の読了本。
古代中国の商(殷)周革命を舞台にした歴史小説。紀元前1060年〜1046年。
ひとつ前の『王家の風日』と、少しかぶってます。
なお、
太公望の物語は『封神演義』もあります。明代に成立した伝奇もので、紀元前1000年ごろの雰囲気を伝えているかは微妙なので、今回ははずしました。
羌という遊牧の民の幼い集団が殺戮をのがれて生きのびた。年かさの少年は炎の中で、父と一族の復讐をちかう。商王を殺す―。それはこの時代、だれひとり思念にさえうかばぬ企てであった。少年の名は「望」、のちに商王朝を廃滅にみちびいた男である。中国古代にあって不滅の光芒をはなつこの人物を描きだす歴史叙事詩の傑作。
(上巻「BOOK」データベースより)