ようやくと言っていいのか、今さらながらと言うべきか、ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』読みました。
ガブリエル・ガルシア=マルケス
『百年の孤独』
蜃気楼の村マコンド。その草創、隆盛、衰退、ついには廃墟と化すまでのめくるめく百年を通じて、村の開拓者一族ブエンディア家の、一人からまた一人へと受け継がれる運命にあった底なしの孤独は、絶望と野望、苦悶と悦楽、現実と幻想、死と生、すなわち人間であることの葛藤をことごとく呑み尽しながら…。20世紀が生んだ、物語の豊潤な奇蹟。
(「BOOK」データベースより)
ノーベル文学賞受賞作家の代表作。
なにもないところにマコンドという村が作られ、子どもたちが生まれ、成長し、村も発展していきます。外国資本がはいることで村は栄え、やがて終焉を迎えます。
こうした村の移り変わりを背景に、開拓者一族のブエンディア家も代替わりしていきます。内乱に与する大佐だったり、嫉妬深い娘だったり、女王となるべく育てられてきた嫁だったり、さまざまな個性が物語を彩ります。
なんとなく重厚な物語をイメージしてましたが、予想に反して軽快な読み心地でした。とはいえ、一文が長いので、翻訳ものを読み慣れていない人は重たく感じるのかもしれません。
どこだったかで聞きかじりましたが、
『百年の孤独』と『薔薇の名前』が文庫化されるのは、世界が滅ぶとき
なんだそうです。
確かに『薔薇の名前』の難解さは、文庫のような重量がない小さめの本では雰囲気が合わない気はします。一方の『百年の孤独』は、奥深くはあっても表面上は軽快なので、むしろ文庫で気軽に読みたい気がします。
そもそもラテンアメリカ文学は、なかなか文庫化されないとか。たとえ、ノーベル文学賞作家の本であっても。
保存場所を考えると、文庫化してもらわないと置くところに困るのですが。
ウンベルト・エーコ
『薔薇の名前』
迷宮構造をもつ文書館を備えた、中世北イタリアの僧院で「ヨハネの黙示録」に従った連続殺人事件が。バスカヴィルのウィリアム修道士が事件の陰には一冊の書物の存在があることを探り出したが…。精緻な推理小説の中に碩学エーコがしかけた知のたくらみ。
(「BOOK」データベースより)
それはさておき、『百年の孤独』を読んでいる最中に、イアン・マクドナルド『火星夜想曲』を思いだしました。
イアン・マクドナルド
『火星夜想曲』
時間の中を自由に渡る緑の人を捜して、もう幾日もアリマンタンド博士は火星の砂漠を旅していた。風に船をさらわれ、移動の手段を失った博士は、小さなオアシスに留まることになる。やがてそこに徐々に人々が住み着き、「荒涼街道」と呼ばれる町に育ち、さまざまな驚異や奇跡を経て、ふたたび忽然と砂に還る…その半世紀にわたる物語を詩的な筆致で綴りあげ、『火星年代記』の感動を甦らせる、叙情と哀愁にみちた話題作。
(「BOOK」データベースより)
上記の内容紹介文でも書かれてますが『火星夜想曲』の宣伝文句として、よく『火星年代記』が引き合いに出されます。同じ火星が舞台だからでしょうか。
風力船でひとり砂漠に入ったアリマンタンド博士は、オアシスで休憩したときに、風力船を失ってしまいます。やむなくその場に留まり、時間を旅する研究をつづけます。
アリマンタンド博士のもとには、さまざまな人が集うようになり、小さな集落は発展し、やがて終焉を迎えます。
50年に渡る群像劇です。
『火星年代記』へのオマージュっぽい箇所はあります。それはそれでおもしろいのですが、行き着くところはまるで違います。似たような雰囲気を期待して読むと、拍子抜けするかもしれません。
レイ・ブラッドベリ
『火星年代記』
火星への最初の探検隊は一人も帰還しなかった。火星人が探検隊を、彼らなりのやりかたでもてなしたからだ。つづく二度の探検隊も同じ運命をたどる。それでも人類は怒涛のように火星へと押し寄せた。やがて火星には地球人の町がつぎつぎに建設され、いっぽう火星人は…幻想の魔術師が、火星を舞台にオムニバス短篇で抒情豊かに謳いあげたSF史上に燦然と輝く永遠の記念碑。
(「BOOK」データベースより)
それに引き替え『百年の孤独』は、展開がすごく似ています。町が大きく発展する契機だとか、事件だとか。パクりという意味ではないですよ。
念のため『火星夜想曲』の解説をパラパラとめくってみたら、ちゃんと書いてありました。
中でも影響が顕著なのは、ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』だろう、と。
『火星夜想曲』が発表された当時は、SF版『百年の孤独』だと称讃した書評がたくさんあったそうです。はじめて読んだとき(2001年)、解説にも目を通したと思いますが、その一文は心に引っかかりませんでした。
後悔しきりです。
きちんと解説を読んで、そこまで言うなら『百年の孤独』も手にとってみようと思っていれば、20年も早く出会えていたのに。今ごろ、ウキウキで再々読くらいしていたでしょうに。
今回の反省は、解説はよく読むべし。
肝に銘じます。