荘厳で美しく、神であり悪魔でもある。
この言葉は、ダグラス・ナイルズ『ドラゴンの教科書』から。
さまざまなドラゴン物語を一堂に集めたのがウリ文句で、北欧神話の恐ろしい大蛇、東アジアの思慮深い竜まで目白押し。
あちらこちらのドラゴンを幅広く……つまり、深さはないです。いわば、ハードカバーにしたムック本。入門にいいかもしれませんね。
荘厳で美しく、神であり悪魔でもある。その起源から世界各地に残る神話や伝承をイラストとともにわかりやすく紹介。さらにトールキンなどのファンタジー世界や現代の映像・ゲームにいたるまで網羅した必携版!
(「BOOK」データベースより)
ドラゴンというのはファンタジーでは欠かせない要素のようで、多少なりともファンタジーを読んでいると、ちょいちょいと出くわします。作家によって、いろんなドラゴンがいますね。陽気なのや、知的なのや、意地悪なドラゴンも。
『ドラゴンの教科書』に目を通したこの機会に、ピックアップしてみました。
簡単にコメントつけましたが、少々頼りない記憶によるものです。読み返して確認はしてません。
参考までに、読了年を付記してあります。何度か読んでいるものとシリーズものの場合は最後に読んだものを。昔に読んだものほど憶えていない確立が高いです。
あしからず。
▼恐竜
▼海竜
▼飛竜(もしくは騎竜)
▼竜が主人公
▼退治の対象
▼滅びつつある竜
▼ただそこにいる
▼いたっけ?
凡例
『 』長編
「 」短編(収録本併記)
《 》シリーズ名(※)
※冊数の少ないものなどは、リンクがないことがあります。その場合は、シリーズに属する本を併記しました。また、シリーズへのリンクがある場合は、各巻タイトルを基本的に省略しました。
■■■恐竜■■■ ▲目次にもどる▲
『恐竜レッドの生き方』ロバート・T・バッカー
最後に読んだのは2009年。
白亜紀のラプトルレッドのメスを主人公にした、研究発表小説。氏の学説は、当時は(も?)本流ではなかったはず。
『時が新しかったころ』ロバート・F・ヤング
読了2014年。
白亜紀後期にタイムトラベルして調査しているうちに事件に巻きこまれる話。
短編「時が新しかったころ」(収録『時の娘』読了2010年)だったものを長編にした作品。
「恐竜狩り」L・スプレイグ・ディ・キャンプ
(収録『時を生きる種族』)
読了2015年。
タイムトラベル(中生代後期)での恐竜狩りを扱った作品。
『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー
最後に読んだのは2013年。
恐竜の研究をしている古生物学者が中生代にタイムトラベルする話。恐竜の絶滅した理由を知りたかったのに別のことを知っちゃった……というSF。
《恐竜惑星》アン・マキャフリイ
『惑星アイリータ調査隊』『アイリータの生存者』
読了2004年。
未知の惑星に降り立った調査隊が、不自然な事態にでくわす話……だったと思う。(地球の)恐竜が繁殖してたんだったか。
「馨しき保養地」ジャック・ヴァンス
(収録『宇宙探偵マグナス・リドルフ』)
読了2020年。
怪物がウヨウヨしている惑星で保養地を建設する話。怪物の中に恐竜のようなものがいた……ような気がする。違うかも。
《キンタグリオ》ロバート・J・ソウヤー
最後に読んだのは2011年。
キンタグリオは、恐竜のような姿をした異星人。翻訳されているのは『占星師アフサンの遠見鏡』のみ。
宮廷占星師の見習いになったアフサンが、世界の本当の姿は平面ではなく球形なんじゃないかと気がつく話。
『竜を駆る種族』ジャック・ヴァンス
読了2005年。
かつての侵略者である爬虫類型異星人を品種改良して竜として使役している世界が舞台。ふたたび異星人が攻めてくるんだったか、きたんだったか。
本作を元ネタにしたのが、ジョージ・R・R・マーティン「魔獣売ります」(収録『タフの方舟・2 天の果実』読了2005年)魔獣が竜だったかどうかは定かでない。
■■■海竜■■■ ▲目次にもどる▲
『チェンジリング・シー』パトリシア・A・マキリップ
読了2011年。
漁師だった父を海で亡くした孤独な少女が海竜と出会う話。その海竜の正体が実は……という展開だったはず。
《魔法師グリーシャの騎士団》リー・バーデュゴ
読了2021年。
海竜の登場は、三部作のうち第二部『魔獣の召喚者』のみ。
魔法師の力を増幅させる、海竜ルセイユの〈海竜の鱗〉を求める話。
『海竜めざめる』ジョン・ウィンダム
読了2019年。
深海に潜む宇宙からの異星生物を海竜と呼んでいたような……。
■■■飛竜(もしくは騎竜)■■■ ▲目次にもどる▲
『宝石の筏で妖精国を旅した少女』キャサリン・M・ヴァレンテ
読了2016年。
少女が、妖精国で大冒険する話。道連れとなるのが飛竜(ワイバーン)。ただ、ひとっ飛びするような安楽さはなかったような……。
《パーンの竜騎士》アン・マキャフリイ
最後に読んだのは2016年。
竜と竜騎士たちが、厄災から人々を守ろうとするけれど安穏な時代が続いていたため四苦八苦する話。シリーズ13巻で、竜が火蜥蜴から遺伝子改良して誕生したとか、厄災を根絶しようと格闘したり、いろいろある。
《テメレア戦記》ナオミ・ノヴィク
最後に読んだのは2021年。
この世に竜がいたとしたら、という歴史改変もの。19世紀初頭(ナポレオンの時代)が舞台。主人公はイギリス人。
《ドラゴンライダー》クリストファー・パオリーニ
『エラゴン』『エルデスト』
読了2010年。
少年がドラゴンの卵を見つけたことから大冒険する話。圧政を布く帝国と抵抗する人たちで、ドロドロ気味だったか。挫折したけど四部作のはず。
■■■竜が主人公■■■ ▲目次にもどる▲
『竜の騎士』コルネーリア・フンケ
読了2010年。
年若い銀の竜が、伝説と化している〈空の果て〉を求めて探索する話。
『アゴールニンズ』ジョー・ウォルトン
改題『ドラゴンがいっぱい!』
読了2011年。
他界したよきドラゴン、アゴールニン啖爵の財産をめぐって裁判沙汰になる騒動記。擬人化されているものの、関係者は全員ドラゴン。
『恐竜レッドの生き方』ロバート・T・バッカー
「▲恐竜」で既出。
《キンタグリオ》ロバート・J・ソウヤー
「▲恐竜」で既出。
■■■退治の対象■■■ ▲目次にもどる▲
『ホビット』J・R・R・トールキン
ホビット族の若者が、魔法使いとドワーフたちに連れられてドラゴン退治に行って帰ってくる話。
有名な《指輪物語》の前日談。
『忘れられた巨人』カズオ・イシグロ
読了2020年。
アーサー王が亡くなった後のブリテン島で、老人が竜退治にかかわっていく話。
《リンの谷のローワン》エミリー・ロッダ
最後に読んだのは2017年。
初巻の『ローワンと魔法の地図』が、村の水源を守るため、村人たちが竜の住んでいるという山にでかける話。ローワンは怖がりな少年。
『竜の年』ヨアンナ・ルドニャンスカ
読了2022年。
竜が出現して人が行方不明になる事件が発生するなか、魔女の血を引く少女が、竜は父が変身した姿だと気がつき助けようとする話。舞台はおそらく、共産党政権時代のポーランド。
「ホアズブレスの龍追い人」パトリシア・A・マキリップ
収録『ホアズブレスの龍追い人』
読了2018年。
島の冬が長いのは眠れる龍が冷気をもたらしているせいだとして、龍追い人になった島の出身者が、龍を退治しようとする話。
「ドラゴンの仲間」パトリシア・A・マキリップ
収録『ホアズブレスの龍追い人』
読了2018年。
血に飢えたドラゴンのいる山に、囚われた人を助けに行く女騎士たちの小話。退治できたかどうかは憶えていない。
「兎にされた姫君」デイヴィッド・ドレイク
収録『勇者にふられた姫君』
読了2016年。
異世界に転移したフリーライターが、魔法使いと勘違いされる話。竜を退治するためのアイデアを出す。
《混戦次元》キース・ローマー
『多元宇宙の王子』『混戦次元大騒動』
読了2010年。
アメリカ人の青年が、異次元宇宙に出現して右往左往する話。竜退治をするのは、初巻でのひとつのエピソード。
《ウィザード・ナイト》ジーン・ウルフ
読了2020年。
アメリカ人の少年が、異世界で身体だけが大人になって騎士を目指す冒険譚。過程でドラゴン退治があったような、なかったような……。
『図書室のドラゴン』マイクル・カンデル
読了2001年。
異世界に転相した少年が、魔法の図書室で本の中に入ってあれこれする話。あれこれの中に、ドラゴン退治の騎士になるエピソードがあったような……。
■■■滅びつつある竜■■■ ▲目次にもどる▲
『最後の竜殺し』ジャスパー・フォード
読了2022年。
この世に魔法があったら、という歴史改変もの。最後の一頭となっていた竜が死ぬ予知がなされて大騒動になる話。
《ドラゴンキーパー》キャロル・ウィルキンソン
『最後の宮廷龍』『紫の幼龍』『月下の翡翠龍』
最後に読んだのは2017年。
黄陵宮で飼われている最後の一頭となった龍をあわれに思った奴隷少女が、一緒に逃避行する話。
《竜のグリオール》 ルーシャス・シェパード
『竜のグリオールに絵を描いた男』『タボリンの鱗』
最後に読んだのは2020年。
強大で巨大な竜のグリオールが、死にながらも暗い霊気を出し続けている、というのが基本設定の物語集。
完全に殺すために毒絵の具で身体に絵を描く話や、まだ生きていたころの話、霊気が人を殺したか裁判になる話なと、いろいろある。
『竜に選ばれし者イオン』アリソ・グッドマン
『竜に愛されし少女イオナ』アリソン・グッドマン
二部作、読了2020年。
帝国を守護するのが、衰退しつつある波動の竜たち。竜の力をふるう鏡の竜眼卿となった少女が権力闘争に巻きこまれる話。なお、イオンとイオナは同一人物。
『ドラゴンと愚者』パトリシア・ブリッグズ
読了2010年。
魔法とドラゴンに守られていた国が落ちぶれて、故郷を救うために、城主の跡取りが冒険する話。ドラゴンの骨がでてくるのは確か。生きていたかどうかは記憶にない。
■■■ただそこにいる■■■ ▲目次にもどる▲
《魔法の国ザンス》ピアズ・アンソニイ
最後に読んだのは2022年。
初巻の『カメレオンの呪文』で、主人公がドラゴンに食べられそうになる。その他の巻については記憶がない。
『妖精国の騎士』中山星香
読了2013年。
漫画。故国を滅ぼされた王女が、妖精王に保護されて魔法を学ぶ過程で火竜(サラマンダー)に知識を求める。
『妖女サイベルの呼び声』パトリシア・A・マキリップ
読了2011年。
魔術師の息子が蒐集した、伝説にのみ名をとどめる不思議なけものたちのなかに、緑の翼を持った竜がいた。その息子の娘がサイベル。物語には絡んでこなかったような……。
『ダークホルムの闇の君』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
最後に読んだのは2021年。
この世界からの巡礼観光会に疲弊する魔法世界が舞台。観光客に見せるため、竜たちも悪役を演技してる。
『魔術探偵スラクサス』マーティン・スコット
読了2005年。
魔法都市で探偵をしている中年男が事件に巻きこまれる話。導入部で、ドラゴンを眠らせる呪文がでてくる。肝心のドラゴンについては記憶にない。
■■■いたっけ?■■■ ▲目次にもどる▲
《ランドオーヴァー》テリー・ブルックス
読了2012年。
人生に疲れたシカゴの弁護士が、クリスマス・カタログで魔法の王国を買う話。買ったはいいものの、国は荒れ放題、国庫は空っぽ、人心は離散し、守護者もいない、という絶望的な状況。
ドラゴンがいたような気がする……。いなかったかも。
『ドラゴンの塔』ナオミ・ノヴィク
読了2017年。
〈ドラゴン〉と呼ばれる領主に召し上げられた娘が、魔術の手ほどきを受け大冒険する話。あだ名になるくらいなのでドラゴンがいる世界なのは間違いないものの、物語にドラゴンがいたかどうかは、憶えていない。
《龍のすむ家》クリス・ダレーシー
『龍のすむ家』『氷の伝説』
最後に読んだのは2012年。
置物の龍がたくさんあるので、龍のすむ家。置物以上の存在だったかは憶えていない。初巻と二作目でまったくテイストが違うことだけ憶えている。
『黒龍とお茶を』R・A・マカヴォイ
読了2020年。
問題に巻き込まれているという娘を助けようとサン・フランスシコにやってきた母親が、昔はドラゴンだったという男性と意気投合する話。ドラゴンの置物はでてくる。ドラゴンそのものは……。