哲学系SF。
あらゆるものに螺旋を見る螺旋蒐集家の「わたし」と、修羅の中にいる詩人の「わたくし」は、それぞれが螺旋にひきこまれ、一つの「私」となった。
記憶をなくした私は、気がつけばスメールという世界にいた。そこは、海の彼方に水平線がなく、天空に地平線があるところ。私はアシュヴィンと名づけられ、海岸沿いの、山のふもとに暮らす一家の娘、シェラと結婚する。シェラの父アルハマードは、海からくる来魚を憎み、アシュヴィンを憎んでいた。
やがてアシュヴィンは、シェラと共にスメールのいただきを目指すことになる。
アルハマードの憎しみの元は? アシュヴィンこと私は何者なのか? いただきにはいったいなにがあるのか?
大作。
おもしろいんですけどね、ラスト近くにでてくるシリアスな「問い」があまりに古典的すぎて、重要なのは答えとはいえ、少々ずっこけました。
小作品集。
童話。
叙情的。
一つ一つ、丹念に読みたい一冊です。名作。
歴史ミステリィ。
関ヶ原の合戦から2年。大藤嘉衛門は、役人に常陸の山里・小生瀬まで案内をさせられる。人影一つない村では、強烈な血臭がただよっていた。やがて、聖なる場所「サンリン」から、獣に喰い荒らされた遺体が無数に見つかった。その数、300あまり。村の人口に等しい。
10月10日、村にいったいなにが起こったのか?
とにかく力作。
権力に呑みこまれていった民のやるせなさが、ふつふつと……。
モダン・ホラー。
警官のハリーとコニーは、ひとりの狂乱者を射殺した。男は、ハンバーガー・ショップで銃を乱射し、さらなる凶行に及ぶおそれがあったのだ。
現場から、疲労困憊して署に戻ろうとするハリーの目の前に、一人の浮浪者があらわれる。静寂の中、異様な男は言った。「おまえは十六時間後には死ぬんだ」……。それを幻覚だと思おうとするハリーの前に、浮浪者はたびたび現れる。そしてついに、ハリーは帰宅後、男に襲われた。
また、同じころ、元広告代理店勤務の男・サミー、そして、ぽんこつ車で暮らすホームレスの母子・ジャネットとダニーが恐ろしい怪物に死の宣告を受けていた。
無気味な怪物の正体は?
朝から翌朝までの短い時間を、ぎゅっと詰めこんで展開する快作。特に、犬好きにはたまらない。
基本的にモダン・ホラーなのですが、謎とき(なぜハリーが狙われるのか?)にうなりました。
オールタイムベストSF。
テレポーテーションの普及によって大きく変貌した世界が舞台。
ありきたりの三等機関士だったガリヴァー・フォイルは、事故で、宇宙船ノーマット号と共に孤独な漂流をしていた。それもそろそろ六ヶ月になろうかというとき、ヴォーガ号が現れる。しかし、いったんは併走したヴォーガ号がフォイルを救助することはなかった。
復讐を誓ったフォイルは、執念で漂流状態から脱出をはかる。
フォイルの復讐は完結するのか?
ヴォーガ号は、なぜフォイルを見捨てたのか?
名作。
フォイルの憤りがすぐそこに。
1956年の作だけあって、古さは否めませんが、おすすめ。
SFミステリ。
『鋼鉄都市』と『はだかの太陽』の続編。
宇宙国家連合の指導者格である惑星・オーロラで、ヒューマンフォーム・ロボットの破壊事件が発生した。ただ一人の容疑者は、そのロボットを産み出したファストルフ博士。親地球派の博士の失脚は、地球の宇宙進出を阻止しようとする過激派の台頭を意味する。
惑星オーロラに招かれた刑事ベイリは、地球と異なる文化にとまどいつつも、捜査を開始した。
あいかわらず強引なベイリが読めます。
ハードSF。
映画「2001年宇宙の旅」の続編。
木星付近で漂流するディスカバリー号を回収するため、宇宙船レオーノフ号は地球を旅たった。10年前に起こったディスカバリー号の事故で、宇宙飛行士4人が死亡、1人が失踪しているのだ。真相は究明されるのか?
小説版『2001年宇宙の旅』の続編かと思っていたら、映画版の方の続編でした。
おもしろいと言えばおもしろいけど、謎がすべて解けるわけでもなく、物足りなさが……。
小野不由美の代表作である《十二国記》シリーズ七作目。短編集。
きちんとした短編になっているものもあれば、単なる裏話もあり。
本編を読んでいないとおはなしにならない一冊。
ハードSF。
500年後にやってくる彗星が地球に衝突することが確定的な世界が舞台。
ハイテク企業アワワールド社は、空間の壁、時間の壁をもろともしない新技術・ワームカムを完成させた。どこでも覗き見ることができるワームカムは、瞬く間に全世界にひろがっていく。
凡作。
あのクラークと、けっこう好きなバクスターの組み合わせ……ということで、期待しすぎてしまいました。
宇宙SF。
3千人の科学者を乗せた宇宙船ビーグル号は、科学調査船。文明の形跡が残る惑星に着陸し、猫のような生物と遭遇する。しかし、それはただの猫ではなかった。
情報総合学ただ一人の部員グローヴナーを中心に、探検隊の内部抗争と、未知の生物たちとの出会いをつづった古典。
グローヴナー自身はもう成熟しているので、もっぱら地位の向上が焦点の成長物語。
いわゆる「敵」の視点も取り入れた快作なのですが、4つの短編をつなぎあわせたものなので、構成がちょっとへん。でも、おもしろい。