世の中には、猫が書いた本があります。
正確には、猫が書いたという建前で書かれた本です。
これまでにも何冊か、猫が書いた本と出会いました。2020年には「合言葉は【猫】」として、猫関連の本のリストを作成したりもしてます。猫が書いたものも人間が書いたものも取り混ぜて。
このたび読んだコラールシュの『ネコのつけた日記』も、猫のシュヌルが書いた、という前提の児童書でした。
ヨセフ・コラールシュ
『ネコのつけた日記』
これは、ネコのシュヌルが緑の野原で生まれて、挫折と放浪の果てに、愛する家族と幸せに暮らすまでの波乱の半生を、ありのままにつづったネコ的私小説。
(引用「BOOK」データベースより)
この紹介文を読んだとき、野良猫の半生記を想像してました。けなげに力強く、生きようともがいているんだろうな、と。
違います。
シュヌルは人と暮らしてます。
自分の思いどおりにいかなくて挫折したり、家出してフラフラとそこらへんを放浪したりはします。なので、まったくの嘘とまではいえません。
人の保護下にあるので、波乱の半生とはちょっとイメージが違いますけど。
コラールシュの本について確認していたら、ポール・ギャリコの名前が目に飛び込んできました。ギャリコは猫好きで有名ですから。
ギャリコは、成功した猫がこれから成功しようという猫のために書いた指南書『猫語の教科書』(書的独話「猫語の教科書」)を書いてます。それは読んでましたが、それとは別に猫が書いた本が出版されていたことには、まったく気がついてませんでした。なんでも姉妹編だとか。
それが『猫語のノート』です。
ポール・ギャリコ
『猫語の教科書』
ある編集者のもとへ届けられた不思議な原稿を解読することができた著者は驚いた。それはなんと猫による猫のための「快適な生活を確保するために人間をどうしつけるか」というマニュアルだった。
(引用「MARC」データベースより)
交通事故で母を亡くし、生後6週間にして広い世の中に放りだされる。1週間ほどの野外生活を経て、人間の家の乗っ取りを決意。いかにして居心地のいい家に入りこむか、飼い主を思いのままにしつけるか、その豊かな経験を生かして本書を執筆。四匹の子猫たちを理想的な家庭へと巣立たせた後は、いっそう快適な生活を送り続けている。
(出版社より)
ポール・ギャリコ
『猫語のノート』
猫たちがいつも思っていること。あの名作『猫語の教科書』に姉妹篇があった! 今度は、猫たちの本音の言葉集。「人間たちよ、お聞きなさい。まさか、猫語がわからないの?」
(引用「BOOK」データベースより)
『猫語のノート』は、猫視点の詩と、ギャリコの猫にまつわるエッセイ「高貴な猫と、高貴とは言えない人間について」を収録したもの。
写真家でフォトエッセイも出版している西川治氏の猫写真がふんだんに添えられてます。その猫たちが、猫の詩とちゃんとリンクしてるんです。
ギャリコは1976年に亡くなってます。2013年に出版された本書が、作家と写真家が相談しながら創られることはありえません。ギャリコの文章が先にあって、後から、内容に合致する写真を当てたんでしょうね。
それにしたって、そのぴったり具合が絶妙でした。
ギャリコの「チョウチョ、だいすき」と、蝶にちょっかいを出してる子猫の写真を見開きにするなど。
惜しむらくはモノクロであること。脳内で色を補完しながら読んでました。
猫の書いた本、知らないだけでまだまだたくさんありそう。出会える日が楽しみです。