たとえば、アイザック・アシモフ『ミクロの決死圏』
画期的な発明をしたベネシュ博士が、脳に損傷を負ってしまった。博士を確実に助けるためには、体内から手術を行わなくてはならない。ただちに潜水艇が用意され、60分という限られた時間の中、潜水艇に乗り込んだチームはミクロ化され、ベネシュ博士の体内に注入されるが……。
この作品は通常の小説ではなく、映画「ミクロの決死圏」のノベライズもの。かなり昔のこととはいえ映画を観ているので、脳裏に浮かんだ、というより観たときの記憶が甦ったパターン。
あ、あのシーンね。
あれを文章化すると、こうなるわけね。
といった印象。個人的には、おもしろさ半減なパターン。スクリーンを思い出しながら読むのが楽しい、と考える方もいらっしゃるのでしょうけど。
もう一つ。
マイクル・クライトン『アンドロメダ病原体』
人口48人の過疎の村ピードモントで、46人の住民が死亡した。原因と思われるのが、地上に落ちた一つの衛星。ただちに科学者チームが特殊施設に呼び集められ、原因究明に着手するが……。
これも映画(邦題「アンドロメダ・・・」)で鑑賞できますが、ノベライズではなく、原作です。観たことはないのですが、映画になっていることだけは頭に入ってました。そのせいか、冒頭から脳内映画館状態。
無数の死体が横たわる通りをパンするカメラ。
レーダー画面の緑光にてらされた顔を恐怖にひきつらせている隊員二人のカットバック。
静まり返った夜更けの丘で、煌々とした窓を持つ屋敷の遠景。
過酷な労働を続けたために起こったミスを象徴する、ある生物のアップ。
その他、いろいろ。
脳内スクリーンに映されるものって、たとえるならば、トラキチたちが(自分で決めた)阪神タイガースの先発メンバーを居酒屋で披露するような、自分が監督だったら的な趣向下にあるような気がします。ビデオを撮る趣味があるわけでも、映画鑑賞を積極的にしているわけでも、ましてや映画監督を夢見ているわけでもなく……。
ドキュメンタリみたいな『アンドロメダ病原体』は、別の角度からも楽しめる作品でした。こうなったら「アンドロメダ・・・」も観ておくべきかな。
追記。
問題のエッセイ、タイトルは忘れてしまいましたが、作者は中島梓。なにかの印刷物の中で偶然見つけたのですが、ちょうど栗本薫(中島梓)を読んでいた時期で、そのため名前だけは頭に残ってました。