大沢在昌『天使の牙』
刑事・明日香は秘密裏に美女・はつみを迎えに赴いた。はつみは犯罪組織“クライン”のボスの愛人で、警察に保護を求めてきたのだ。しかし、警察内部にもスパイがおり、2人は襲撃に遭ってしまう。明日香で無事だったのは脳だけ。脳死したはつみの肉体に脳を移植することで生き返るが……。
この本はぞくぞくきます。ただ、読み返すたびに「おや?」と思うことが増えてきて……。それで「愛読書」には入れられなかったのですが、記録の残っている1999年の読了本の中では文句なしにベスト1。
そういえば、映画化されましたっけ。なんだかこわくて見られません。
(2000年2月、2003年8月にも記録が残ってます)
小林恭二『日本国の逆襲』
バブルの頃の空気を目一杯吸い込んだ、「日本」が題材のブラック・ユーモア短編集。
初読は1993年。バブルが1990年頃までで、そこから遠ざかれば遠ざかるほど、面白みの質が変わって行きます。1997年に再読したときにはまだバブルの記憶も色濃く残って楽しめました。でも、徐々に空しさが先立ってきて……。
再読なので、ベストに入れるのはためらいがありました。でも入れちゃったけど。
(2000年1月、2004年9月にも記録が残ってます)
ベストに入れるかどうかで悩んだのが、
高村 薫『レディ・ジョーカー』
競馬仲間が集まり、大手ビール会社社長を誘拐した。社長は金もとられず解放される。表向きは……。犯人たちがとった人質は350万キロリットルのビール。社長の誘拐はメッセンジャーとして使う目的にすぎなかったのだ。警察は裏取引を疑うが……。
グリコ・森永事件が題材。ぐいぐい持って行かれる濃厚な作品です。ただし、上巻まで。警察が介入してくる下巻は趣が一変。とまどいながらも惰性で読み切ってしまいました。全体的な印象はいいものの、ベストに入れていいもんかどうか……。
直木賞受賞作『マークスの山』と『照柿』と同じ合田刑事シリーズの一冊。合田刑事大好きな人は下巻からおもしろくなるんでしょうねぇ。