三本脚機械〈トリポッド〉による支配が確立されてからおよそ100年。人類は人口を減らし、科学力も失って、トリポッドに従順な種族となっていた。彼らは、人間の頭に、ワイヤーでできた網〈キャップ〉をかぶせることによって、マインド・コントロールを行っている。キャップをかぶった人は、もはや自由な考えを持つことができない。
そんな社会に抵抗する少数の自由市民たちは、戴帽式をこれから迎える15歳未満の子供たちを集っていた。14歳のウィル・パーカーはウィンチェスターの郊外に住む少年。トリポッドの支配に疑問をいだき、自由市民となるべく旅立つ。
人類は自由を取り戻せるのか?
トリポッドは三本脚だったことからこの名がつきましたが、三本脚の侵略者といえば、H・G・ウエルズ『宇宙戦争』の火星人たちの機械も三本脚でした。
イギリスはウィンチェスターに、ある夜、円筒状の物体が火星からやってきた。野次馬たちが集まるが、火星人は彼らを閃光でもってなぎ倒し、侵略を開始する。人類の抵抗も空しく、軍隊は敗退をくりかえす。
地球は火星人たちのものとなってしまうのか?
《トリポッド》シリーズと『宇宙戦争』の決定的なちがいは、侵略のでだし。はじめトリポッドはあっさりとのけられてしまって、人々はその弱さを笑いものにします。そんな油断もあって、手法を変えたトリポッドたちにマインド・コントロールを許してしまいます。
武力でもって侵略されて悲鳴をあげつつ逃げるのが『宇宙戦争』の世界。(主人公はとじこめられて、やむなく観察に移行しますが)一方、《トリポッド》シリーズでは、ある日突然、隣人がコントロールされてしまって、信仰を強要してくる。第一部『襲来』で描かれるのが、それ。徐々に崩れていく社会と自由市民たちの発祥が描かれます。
第一部から100年ほどたった第二部以降は、地球はトリポッドの天下。キャップで完全にコントロールされた人々は、盲目的にトリポッドを崇拝しています。
さて、第二部以降の主役ウィル少年。この子が少々難のある性格で、カッとなりやすく、お調子者で、見栄っ張り。後先考えず、さまざまな経験を重ねながらも同じ失敗を繰り返す……。ウィルと仲良くなる少年たちはぐんぐん成長していくのに!
人間は、大きく飛躍することができる一方、そうそう変われるもんでもないんだなぁ。もちろん、変わらないかに見えるウィルも、ちょこちょこと成長していたりはするけれど。
人間の変わらなさぶりは、ウィルだけにとどまりません。自由市民たちは力を合わせて戦うけれど、内情は一枚岩ではない。人間ならではのドロドロ劇場には怒りすら覚えます。
ユーモアがあって柔らかい作風で、児童文学だと思って軽く見てました。おそろしいこと、残酷なこと、哀しいこと、平易に書かれてあるだけにストレートにきます。
この深さは、あなどれない……。